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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
7章 知識
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暴食

 どれほどの時間が経ったのだろうか。


 揺れる馬車で待つこと数時間、やっとその動きが止まる。


「着いたか」


 サブノックの後に続いてロギルも馬車の外へと出る。


 するとそこには、高層ビル郡佇む巨大な街があった。


「話を通してくる。ロギル殿は、ここで待たれるといい。人間を見るとからかいたがる方も多いのでな」


「分かった」


「この場で待機していろ」


「了解致しました!!」


 騎士達がサブノックへと動作で返事を返す。それを見るとサブノックは、一人目の前の大きな建物へと入っていった。


「……ここが今の首都か」


「発展しすぎだろ。俺達の故郷と大違いだな」


「欲望を好む悪魔が多いのだ。こうも成ろう」


 交代で馬車周りを警護する騎士達。その中で、先に休憩を取っている騎士達が辺りを見回してそういう。


 その言葉にロギルは、心の中で何度も頷いて賛同した。


 既に日も落ちているのにも関わらず朝のように眩しい明かりの数々。重要な建物の周りであるのにも関わらず響く陽気な声。そして、喧騒。


 この街は、自分達の住む街とは違う高さに位置している。そうロギルは、思った。


 そこから更に待の時間が続く。


 何も出来ぬまま、ただ時間だけが過ぎていく。


 余りの退屈さに馬車周りで軽い運動をしていたロギルのもとに、ようやくサブノックが疲れた顔をして戻ってきた。


 何かを、その脇に抱えて。


「話はついた。行くぞ」


「そちらの方は?」


 ロギルがサブノックの脇に抱えられている何かに視線を向けていう。


 その何かは、もそもそとサブノックの腕から動くとロギルを見つめた。


「何だ、人間じゃないか。久しぶりに見たな」


 それは、赤い目を光らせると人の子供の姿へと変身した。


「そう怖がるなよ。どうだ、この姿なら警戒する気すら起きまい」


「……」


 無言でサブノックにロギルは視線を向ける。するとサブノックは、溜息を吐いて少年の姿をした何かを地面に下ろした。


「この度の件を預かることになるお方だ。我々の上官に当たる」


「初めまして、ロギルと申します」


 サブノックの言葉を聞くとロギルは、礼儀正しく挨拶をした。


「そう硬くならないでくれ。肩書きだけが大層なだけだ。いや、それどころか家柄ぐらいなものだな。僕が誇れるのは。名前も代々受け継ぐ物だしね」


 そう言って少年は、ロギルへと近寄る。


「ベルゼビュートと言う。真名は、名乗らないのが我々の風習でね。家名で許してくれたまえ」


 少年はそう言うとロギルへと腕を差し出した。その腕を、ロギルは躊躇なく握って握手する。


「いいねぇ。度胸はある。しかし、不用意に握手をするのは、あまりいいことではないよ。注意したまえ」


「はい」


 ロギルは、短い返事で返すとベルゼビュートの腕を離した。


「さて、連中が入り込んだのは、封印に関する書物の置かれている保管庫であったね。では、持ち去られているものはあったかな?」


「急にやる気を出されますね。さっきまでめんどくさいとダダをこねていらっしゃったのに」


「……サブノック君。恥ずかしくなるからやめたまえ。よもや久しぶりに人間を見ることになるとは思わなくてね。少し興が乗ったんだよ。それで、手がかりはあるのかね?」


「いえ、連中はしらみつぶしに本を捲りみていたようです。そして、持ち去られたものは有りません」


「まぁ、あの書庫は、破壊されても復元するからね。何を見ていたのかもそれで分かるか。そして持ち去られたものもないとなると、どこを狙うのかも分からない訳だな。これは、お手上げだね」


「いえ、その為にスペシャリストをお呼びしております。ダンタリオン」


「……お初にお目にかかります。ダンタリオンと申します」


 サブノックが名を呼ぶと、ロギルの隣に仮面の魔獣が姿を現した。


「おお、ダンタリオンですと。貴方の家の方には、不思議な方が多い。しかし、貴方はなかなかに普通な方のようだ。よろしくお願いするよ」


「ええ、よろしく願い致します」


 ベルゼビュートがダンタリオンに向けて腕を差し出す。しかしダンタリオンは、その腕を取らず頭を下げた。


「ふむ。君は、慎重派か。いいだろう。では、書庫に向かうとしようか」


 そう言ってサブナックの馬車にベルゼビュートは、乗り込もうとする。


「お待ちください」


 その時、少女のような声がサブナックの後ろからした。


「おお、バアル君ではないか!?君も来るのかね?」


 振り向いてベルゼビュートは、スーツを着込んだ小さな背の人型の魔獣を見つけてそういった。


「ええ。貴方の補佐をするようにと。車を向こうに用意しています。そちらは、騎士の方々が使われる馬車です。貴方が乗っていては、お邪魔になりましょう」


「やれやれ、君は分かっていないな。こういう機会でもなければ彼らと話す機会などあるまい。だから乗るのだよ。もっとも僕の関心は、別にあるのだがね」


 そう言ってベルゼビュートは、ロギルを流し目で見つめる。


「なるほど。分かりました。でしたら、私も同行いたしましょう」


「おいおい、一人娘の君に何かあっては家族が悲しむんじゃないか?君は、車に乗りたまえ」


「我々堕天使に性別などありません。そう言う言い方はやめて頂きたい」


「確かに、そうだね。所でロギル君は、男性と女性。どちらが一緒にいて心がかき乱されるかな?希望があれば合わせてもいいが?」


「どちらでも変わりませんよ」


「何をそんな枯れたようなことを。……なるほどな。君には、確かにどちらでも同じことのようだね。うん、ならばこのままで行こう。では、行こうじゃないか。仕事をしに行こう」


 そう言うとベルゼビュートとバアルは、馬車へと乗り込む。


「気をつけろ。見た目こそ子供だが」


「ええ、分かります。化物だ」


 ロギルは、馬車に乗り込む二人が子供の姿には見えていても、その見た目では隠しきれない圧力を感じていた。


 先程握手を求められた時も、背筋が震えそうになるほどの圧力を掛けられた。


 何気ない顔をしてロギルは、意地で答えたが。


「行くとしよう。苦労をかけることになると思うが」


「ええ」


 ダンタリオンが消えて、ロギルとサブナックが場車に乗り込む。すると馬車が走りだし、ロギル達は、街の図書館へと向かった。


「ふむ。相変わらずここは人が多いな。襲撃されたとは思えない」


「平日でも人気が高い場所ですからね」


 数分で目的地へとロギル達は辿り着く。


 馬車をベルゼビュートとバアルが降りると、その周りを固めるように騎士達は降りて整列した。


「ああ、構わないよ。僕に警護は不要だ。君達は、君達の仕事をしてくれたまえ」


「私にも不要です。お邪魔になりたくはありませんので、お気になさらず」


「……」


 騎士達のリーダーであるはずの者がサブノックに視線を向けた。


「そうしなさい」


「はっ!!」


 サブナックの声を聞くと騎士達は、図書館へと入っていく。


 その後に続いてロギル達も図書館へと入っていった。


「話はつけました。どうぞ」


 騎士達の行動によって速やかにロギル達は、図書館の下層へと降りていく。


 下層へ続く階段には、多くの警備員が待ち受けており、この監視の目を逃れて下層に降りるのは不可能だなとロギルは思った。


「鑑識は、もう帰ったのか?」


「未だ別の部署が対応待をしている状況とのことです」


「そうか。ダンタリオン、頼む」


「ええ」


 ダンタリオンは、無音で出てくると書庫にある本を少し考えた後、一冊手に取って眺めた。


「これじゃない」


 次々と本を手に取り、見ては戻してをダンタリオンは繰り返す。そして、7冊目の本を取った時、ダンタリオンはその本をサブナックへと手渡した。


「それですね。それだけ、他と眺めた形跡が違う。このページです」


「なるほど。助かる」


「どれかね?」


 ベルゼビュートは、サブナックが見せられているページを覗き込む。


 そこには、巨大な怪物の挿絵と共にベヒモスとその名が記されていた。







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