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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
7章 知識
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訪れ

 夏季。


 長期の暑さを過ごし抜き、少し世界が涼しさを取り戻しつつある頃、生徒達にもたらされていた長期の休みもその終わりを迎えようとしていた。


「あ~~~~」


「明日から学校だぞ。唸ってる暇はない」


「何が宿題だこんにゃろう!!!!こっちとら街を守ってんねんぞ!!!!」


「確かに俺達は、この夏季休暇期間休む暇がなかった。今までの業務の事後処理資料の作成。今後の学校としての不測事態に対する対応策の保護者配布資料。それの明確なマニュアル作成と、避難経路の見直し。さらに、学校施設そのものの外敵からの対抗策の検討など。まぁ、正直これは俺達がいる時点で外部に見せるための気休めでしかないが。ともかく、あの時の件でかなりの数の仕事が押し寄せてきた」


「おまけに政府から今後の下水周りの安全策検討とか言って周辺施設に立ち入りをしてのお小言まで貰い始めたもんな。召喚魔法による被害を抑えるために、魔法阻害を行う大容量魔力消費装置の設置を検討されてはいかがですかだって。魔学を教える学校でだぜ。ないわ~~~~」


「あれには、リオーシュも半笑いで返してたな」


「無知なお役所様は、これだから困る」

 

「仕方ないだろ。俺達は、存在しない集まりなんだから」


 そう言ってロギルは、椅子から立ち上がる。それと共にロギルを、隣でうちわで扇いでいたソフィーも一緒に立ち上がった。


「ところでノーマンは、いつまでここにいるんだ?」


「いいだろ。俺が相談室にいてもよ。ここ、風が通って過ごしやすいんだよ」


 そう言ってノーマンは、机に突っ伏したまま動かない。


 多くの精鋭の中からレギオンブレイダーの地位をたった一人得たノーマンであっても、連日続く暑さと事務処理、お役所対応には、そのやる気を大いに削がれていた。


 そもそもノーマンは、事務処理が得意な方ではない。


 アマナ程の苦手意識はないが、それでも資料を作るという行為は、彼の精神に多大なる疲労を徐々にではあるが蓄積させていっていた。


 よって、その疲れを癒すために彼が学校が始まる前に訪れたのが仲間が集う相談室であり、その場で行おうと思うことが心の疲労を回復させるためのただ何もしないことであった。


 その結果が、今のノーマンの姿である。


「俺は、リオーシュに完成した資料を持っていく。二人で留守番を頼むぞ」


「へ~~い」


「お~~う」


 やる気ない返事で答えるアマナとノーマン。


 ロギルとソフィーが相談室を出て校長室へと向かい始めると、その途中でサシャがこちらに向かって歩いてきていた。


「ロギルも資料出来たの?」


「ああ、そっちは問題なしか?」


「うん。今後の避難訓練の実施計画書。OKいただきました~!!」


 そう言ってサシャは、ロギルに自然に抱きつこうとする。


 それを、こちらも自然にソフィーは、割って入って防いだ。


「あんた、やめなさいって。まだ暑いんだからご主人様が困るでしょ。私は、体温調節とか出来るからいいけど~~」


 そう言ってソフィーは、ロギルにその豊満な胸をわざと押し付ける。


「……くっ、私も自分の体を冷やすことができれば」


「いや、生物として人間がそこまでのことを出来るはずないから気にするな」


「そっ、だから貴方は、指をくわえて見てるしか出来ないってわけ」


 更にソフィーは、ロギルへと密着する。


 今は、校舎に生徒は誰もおらず。構内を歩き回っている職員も少ない。


 その為、いつもよりも大胆な行動をソフィーは、行うことが出来ていた。


 だが、一度人目が近づくとそれとなく離れる。


 ソフィーは、気配りの出来る女性であった。


 しかし、サシャの前でだけは別である。


 ソフィーは、サシャの前では、積極的にサシャに見えるようにロギルに接触することにしていた。


 そこには、無言の女性同士の圧力が込められているのだが、ロギルはその圧力を感じ取れていない。


「ソフィー、そろそろ行くぞ。離れてくれ」


「は~~い」


 ロギルが歩きだそうとするので、ソフィーは離れる。


 その瞬間、サシャは一瞬の隙を突いてロギルの手を握った。


「一緒に行こう、ロギル。私、ちょっと校長に質問したいこと出来ちゃった」


「だから、離れなさいって。暑いでしょ」


「手だけだから、そんなことないもん!!」


 口論する二人を、気にせずロギルは歩き出そうとする。


 しかし、その瞬間ロギル達の立っていた廊下の横の地面に、空中から紫の光が降り注いで地面をえぐり、その周囲を焦がしていった。


 その衝撃で、廊下の窓ガラスが次々と割れていく。


「……な、なんだ!?」


 慌てて飛び退いたロギルと、そのロギルに抱きついて居たソフィーとサシャ。


 三人は、廊下の窓から外に飛び出すと、焼け焦げた地面とそこに居る一人の人物に目を向けた。


「……侮ったか」


 その人物は、頭がライオンであり騎士の鎧を着ていた。


「サブノックさんじゃないですか!!」


 ロギルが、そう言ってその人物に駆け寄った。


「ロギル殿か。久しいな。すまないが、契約の繋がりのある君のもとに緊急事態であったゆえ飛ばさせていただいた。すまない。場を乱したようだ」


「いえ。幸いにも休みで生徒もいなかったので。しかし、一体何が?」


「……人間だ。人間の魔術師が、魔界に居る。しかも、こともあろうにその人間達は、眠りについている悪魔。いや、魔獣を目覚めさせようとしているのだ」


 サブノックは、そう言って鎧に空いた穴に手を添える。


 手を離すと、そこには流れ出た血が付着していた。


「我が魔力で出来た鎧にこうも簡単に穴を開けるとは。魔銃と言ったか。恐らく、あれを使う人間は普通ではあるまい。ロギル殿。確か、貴殿の知り合いにも居るのではなかったか。このような銃を使う人間が」


「私のことかしら?」


 声に目を向ける。


 すると、騒ぎを聞きつけて駆けつけたレギオンのメンバーとリオーシュがそこにはいた。


「取り敢えず、その姿は目立つわね。なんとかならない?」


「そうだな。これは失礼」


 リオーシュがそう言うと、サブノックは、老紳士の姿へとその外観を変化させた。


「いいわね。これで少しは、話がしやすい。ロギル先生、貴方の知り合いよね?」


「はい」


「では、校長室にお通しして。話は、そこで聞くわ。私達全員でね。それと、さっきのはもう来ないのかしら?」


「ああ。飛んできた際に、少し連れてきてしまっただけだ。もう穴は塞がった。こっちに飛んでくることはないだろう」


「そう。なら全員で校長室に行きましょう。ガラスの新調と、ここの処理は他の職員に任せるわ」


「すまない。補填はさせていただこう」


「話が分かる方の来客で良かったわ。さて、こちらへどうぞ」


 ロギル達は、全員で校長室へと行くことにした。


「それで、これはいったいどう言う騒ぎの結果なのですか?」


 校長室に全員が入って扉を閉める。


 するとリオーシュは、開口一番にそう言った。


「そうだな、端的に言うと私達の故郷の方で暴れる人間がいてね。それの対処をしていたんだが。危うく死ぬところまで追い込まれてしまって、仕方なくこちらにロギル殿との契約を使って飛んできたというわけだ」


「こちらの被害などは、考えられたのですか?」


「一応、彼の友人から定期的に連絡はもらっていてね。今は、この施設が休みで人が少ないということも聞いていた。それに、私も死を前にして必死だったのだ。それで止む終えず。申し訳ないが」


「いえ、分かりました。ということは、あとはあちらに帰られるだけでこの件は、我々とは無関係になる。ということですね」


 リオーシュがそう言うと、サブノックは首を横に振った。


「敵の人間達は思ったよりもやる。我々の故郷に来たこともそうだが、先程も言った通り、変わった銃を持っていた。君の持っているというそれと同じではないのかね?」


「レギオンガンナーの銃を持っていたと言いたいのですか?」


「その通りだ。それは、魔獣を魔力で再現して打ち出すことの出来る銃だろう。ならば、同じ物のはずだ」


「……残念だけど、間違いないみたいね」


 そう言ってリオーシュは、自身の銃を取り出す。


「それで、何か特徴はあった?銃の色とか」


「銃の色は、黒だったな。君のとは違う。それと、その武器に対処法はあるのか?」


「撃つ前に止めるしかないわね」


「そうか」


 サブノックは、自身の姿をライオンの頭をした姿へと戻した。


「すまない。お邪魔をした。後日、金品を持ってまたこさせていただこう。その時に、迷惑料はお支払いさせて頂く」


「サブノックさん。そっちで、何が起ころうとしているんですか?」


 ロギルの問いかけに、サブノックは少し考えた後、こう答えた。


「今一度、世界が終わりの時を迎えるかも知れない。それも魔界だけの話ではなく。こちらの世界も、巻き込んでな」


「はぁ、何よそれ?」


「魔界も、昔から落ち着いていたわけではない。幾度となく戦争を繰り返し、偶然か、もしくは神が作り上げたものかも分からない者と戦った時もあった。さらに殺すこともできず、封印という手を使ってやっと眠りに付かせたその魔獣は、この現代まで生きながらえている。その封印を、解こうとしている連中が居るのだ」


「あ~~、ちょっと待って。なんか頭痛くなってきたわ」


「知ってか知らずか連中は、またラグナロクを起こそうとしている。この現代でな」


 その言葉を聞いた時ソフィーは、少し体を振るわせながらロギルへと抱きついた。





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