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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
6章 混沌
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 巨大な腕の内側から何かが蠢いて腕を動かしている。


 その何かは、腕の皮膚を纏ったまま腕の形を変形させると、ミミズが何本も繋がったような見たこともない生物へと姿を変えた。


「ああ、寄生生物ってやつですね。知ってます?」


「魚とかによくいるって話は、聞いたわね」


「魔獣に憑かれるって昔よく怪談でありましたよね。思考を魔獣によって誘導されただの、自分の意志と関係ないだの。あれもそういったことを、行うものみたいですね。体内に取り込まれることで相手を操ることが出来ると言ったところでしょうか」


「普通に気持ち悪いんだけど」


 リオーシュが無言で銃を乱射する。


 しかし、ミミズのような生物には、傷一つ与えられない。


「以降、対象をワームと呼称。私達がやることとしては、ここから生きて帰さないこと。分かったわね。皆」


「おう」


「分かりました」


「といってもどうする。普通の魔法は、効きそうにないぞ?」


「……はぁ~~、やれやれ。今日は、もうちょっと頑張りますか」


「お、何かするのか?」


 アマナは、矢を乱射してワームの動きを止めながらそう言う。


 それに対しリオーシュは、無言で懐へ手を入れると、6色の弾丸を取り出した。


「知ってる?個人差はあるけど、ガンナーってこの中で一番破壊力に優れた魔道を扱ってるのよ」


 一発ずつ弾丸を、リオーシュはシリンダーにセットする。


「ソーラー、ストーム、タイダルウェーブ、ライトニングストライク、メテオライト、そしてライフ」


 6色の弾丸を全てセットし終えた後リオーシュは、シリンダーを回す。


 すると、銃のシリンダーからとてつもない魔力の粒子が溢れて周囲に散らばり始めていった。


「何をする気だ?」


 ワームが、無理にリオーシュに近づこうとする。しかし、アマナやロギルの攻撃でワームは近づくことが出来ない。


「この世の自然詰め合わせってところかしら」


 シリンダーの回転が止まる。そして、散らばっていた魔力の粒子が、全て一発の弾丸に吸収されて集約された。


「これが私の今の全力。受けてみる?」


「小賢しい!!見ろ、どんな攻撃を受けても傷すらつかないこの体を!!人の考えた魔法程度では、最早俺に傷をつけることすら不可能だ!!!!」


「あら、そう。なら試しがいがあるわね」


 銃を構える。そして、指先に力を込めてトリガーを引いた。


「オーバーワールド・ドラゴン。喰らい尽くせ」


 その瞬間、七色の光を放つ龍がワームの目の前に現れた。


「えっ?」


 顎を開き口を閉じる。それだけでワームの体は、いとも簡単に食い破られた。


「なっ!?」


 音声を発する暇もない。ドラゴンの腕の力で残った全身を押さえられ、その口に魔力が貯まるのを一瞬のみ感じることができた。


 しかし、その後ワームの全ては、この地上から姿を消した。


 龍の口から放たれた魔力の塊は、ワームを内と外から粉砕していく。


 そして、ワームはこの世から消えた。


「まぁ、振動魔法でかき消せるほど私の魔法はやわじゃなかったってことね」


「……なんですか、あれ?」


「使えるものを全部混ぜたら強くなる。常識でしょ?」


「いや、なんとも軽い発想ですね。それを、実現出来るのがすごいのですが」


 銃をくるっと回してリオーシュは、懐へとしまう。


「撤収!!後は、お片付けと根回しよろしく」


「は、はい」


 少し離れて見ていた職員達がリオーシュの言葉に現場へと駆け寄る。


 彼らは、魔法を使うとえぐれた地面を修復しにかかった。


 この場所は、数時間で大したことなど起こっていなかったかのように変えられる。


 その事実を知るのは、ひと握りのこの国の人間だけだ。


「さて、職場に帰りますか」


 リオーシュが車に乗り込む。それに続いてロギル達も車へと乗り込んだ。


「全員は無理そうだな」


「我々は、歩きですね」


「ゆっくりでいいわよ。揺れの確認のために外に居たことにするから」


「了解」


「分かりました」


 リオーシュは、ノーマンとレドリアを置いて車を走らせる。


「う~ん、ちょっと土かぶってるわね。今度洗車しないと」


「それよりも全員乗れるやつを買ったほうがいいんじゃないか?レドリアは、最低でも運べたほうがいい気がするぞ」


「まだ買ったばっかじゃない。それに、4人乗りしかまだ発売されてないのよ。多人数乗りは、もうちょっと後って聞いたわね。買うとしても、その時よ」


「そうか」


 アマナは、そう言うと窓の外を眺める。外には、先ほどの騒ぎが嘘のように平和な景色が広がっていた。


 その景色をアマナは、ぼーっと眺めて帰り道までの時間を過ごした。


 この景色を皆で守れたことの喜びを感じながら。


「最早、召喚魔法は時代遅れの産物ということか。ここまで簡単に対処されるとは」


 建物の中で男が呟く。


 男は、懐から銃を取り出すとその銃口を撫でた。


「やはり、現代の魔学は脅威だな。最早、笑い話にできる代物でもない。彼の発送が成功すれば面白い物が見られたのだが、あの程度の娘の霊獣で殺される程度では、全身がこちらに来ていたとしても大したことにはならなかっただろう。召喚魔法は、やはりもう使うべきではないのだろうな。不安定過ぎる」


 現代の魔法において、決められた対象を召喚するすべは幾つかあるが、それには対象其の者の手がかりとなりうるものが召喚時に必要となる。


 そして、それ以外の場合は、全くのランダムとなる。


 つまり、どんなものが呼ばれるのか出てくるまで分からないということだ。


 消費した魔力量が多くても必ずしも強いものが呼ばれるわけではない。


 それが召喚魔法であった。


「ならばこれまでの反省を活かせばこそ、こちらから望むものを取りに出向くのが最善、ということなのだろうな」


 男は、銃をしまう。


「少し散歩に行くとするか」


 そう言って男は、その場を去った。


「さて、生徒達はどうなったかしらね」


「誰もいないじゃないか」


 アマナは、学校に着くと辺りを見回す。


「休校にしたんだろ。もしもがあってからじゃやばいからな」


「そっ、こういう時は、休校して即避難ってことになってるのよ。ま、私達は、もうその必要ないけどね」


「おかえりなさい」


 ロギル達が玄関に佇んでいると、サシャがそう言って走ってきた。


「どう、避難は無事に済んだ?」


「ええ。少しパニックが起こりましたが、皆概ね騒がずに速やか避難できました」


「ふむ。今度から、もしもの時の為に仮想訓練でもするべきかしら」


「学校の近所に大型の魔獣が出現しましたって想定ですか?今後は、そうならないようにしたい所ですけどね」


「まぁ、うちの生徒たちが学問を学んで魔学に貢献するようになったら、その内私達の出番も減るでしょう。そうなるように、私達も頑張らないとだけどね」


 リオーシュは、校舎に向かって歩き始める。


「さて、今回の件の休校書類を書くとしますか。ロギル先生は、避難所に行って生徒達の様子をアマナと見てきて。レシア先生は、私と書類仕事ね」


「了解」


「分かったぞ」


「あの、私は?」


「サシャ先生は、引き続き相談室でお留守番。よろしくね」


「私も、ロギルと行きたかったよ……」


「どうせすぐ戻る」


「そうだ。待ってろ!!」


 そう言ってロギルとアマナは、避難場所になっている地域へと移動を始めた。


 その後、ロギルの言った通りすぐにロギル達は生徒達を連れて一旦学校に戻ると、生徒達には改めて下校の指示がなされた。


 これは、魔獣が近場に出現したことによりパニック症状を起こした生徒への配慮の為の下校指示であった。


 街の崩壊手前から被害は抑えられ、生徒達には被害ゼロというこの状況。


 生徒達は、ただ安堵してこの状況を受け入れたが、その裏では、未だ忙しなく働く大人たちの姿があった。


「なんで発見できなかったんだ!!もうちょっといいものを作れよ!!」


「警備員に犠牲者が出てるんだぞ!!その段階になる前に気づけるようにするべきだろ!!」


「分かった!!分かってるって!!一番悔しいのは、俺達なんだぞ!!よし、もう何者も隠れることの出来ない圧倒的なセンサーを作ってやる!!!!」


 事件が解決されただけで終わりではない。日々、この世界は進歩していく。


 魔学は、人類の生活を向上させるためにある。


 その理念を持つ者たちが今日も、次の課題に向けて歩き始めた。


 いつの日か安定した平和を魔学で実現するために。


 しかし、脅威は思わぬ所から訪れる。


 平和をもたらす為に変わろうとする魔学の進歩を、脅威をもたらす者が待ってくれることなど、あるはずがなかった。






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