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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
6章 混沌
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振動

 街の中央。魔術的に考えて最も標的とされやすいこの街の中心部。


 その中央には、ひっそりといつもではありえない数の人々が集まっていた。


 その誰もが、散歩か業務の途中で通り過ぎるだけのような格好で周囲には集まっている。


 しかし、彼らの全ては顔見知りであり、一つの目的のために行動していた。


 それは、この地域に近づいてくる不審人物を誰一人としてこの場に近づかせないことである。


「周囲の反応は、どうだ?」


「問題ありません。振動測定器にも異常なし」


 魔法で作られた振動測定器。それは、地中からの振動を検知するものであり、地下からここへやって来ようとしている者の存在を発見することの出来る装置だ。


 彼らは、その装置を中央にある資材置き場として偽装されている場所。そこに置かれているコンテナの中で操作していた。


 その表面は、木で覆われており木箱に偽装されている。


 そんな中で、彼らは状況が過ぎ去るのをただじっと待っていた。


「そろそろ始まるぞ」


 時計を一人が眺めてそう言う。


 そして、静かな時が流れた。周囲には、見知らぬ顔の人物もおらず万全な状態が保たれていた。


 この状況に何人かのこの場に居合わせた職員は、内心で緊張が解けつつあるのを感じた。


 この状況で、おかしな事など起こりようはずもない。何故ならこの場に存在するのは、レギオンという国の守護者の味方をする者だけであるからだ。


 そんな状況下で何かがこれから始まろうとも、既にレギオンの作戦は動き出しており結果状況が転ぼうともその先に発生しうる自体は彼らのみでも対応できることだろう。


 そう考えると、現場にいた職員たちの気持ちは、少し楽になった。


 しかし。


「……今、なにか聞こえなかったか?」 


「えっ?」


 その瞬間、テーブルに設置された振動測定器に異常が生じた。


「地下に異常な反応を検知!!これは!?」


 土が盛り上がっていく、そして地下から巨大な触手が数本天目掛けて突き上がり、周囲に砂を撒き散らして中央の区画を薙ぎ払い始めた。


「うああああああああ!!!!」


「退避しろ!!退避だ!!」


 この場にいる職員達は、一般の人間とは違って魔法の扱いや、身体的・精神的訓練を積んだ戦いの基本を学んでいる者達である。


 その中には、かつてレギオンを目指し頂上を競い合っている者達もいた。


 故に彼らは、不測の事態にも即座の対応をすることができ被害を抑えることが出来る。


 一定距離まで一気に下がった彼らは、地下より生えてきた巨大な触手へと体を向けると、自身のそれぞれの遠距離攻撃手段を用いて攻撃を始めた。


 しかし、そのどれもが動き回る触手を止めることができず逆にその動きを早くさせる原因にさえなっている気がした。


「まだ残ってるだか?」


 空気が震える。そして、そのような声が聞こえた気がした。 


「邪魔だな」 


 触手が細かく振動を始めた。そして、周囲の物その振動に飲み込まれていく。


「逃げろ!!」


 その声がどこまで響き渡ったのかは、分からない。しかし、自然と職員の誰もが隠れることよりも逃げることを優先していた。


「爆ぜろ」


 瞬間、空気を伝わって衝撃が走る。その衝撃は、周囲にあった物を振動が到達した瞬間に内側から破裂させ、破壊し始めた。


 コンテナの木々、金属製品。それらが、原型を止めず、あるいは形を変えて振動の衝撃を受け入れる。


 その振動が職員達に到達しようとしたその時、緑の光の矢が、その振動目掛けて複数本周囲に降り注いだ。


「振動が、消えた」


 矢の激突した衝撃で音波の波の壁が消える。


 それと同時に、一台の車がこの場に到着した。


「状況を教えて!!」


 銃を構えて撃ちながら、リオーシュは叫ぶ。炎で出来た龍が飛び、地面より生えた触手に食らいついていった。


「突如地下よりの振動を検知!!その後、地下よりあれが現れました!!敵は、振動を操るようです!!」


「分かったわ!!後は、下がって、被害拡大の抑制をお願い!!」


「はい!!」


 職員達は、駆けていく。たった4人の人間を残して。


「おうおう、随分でかい物が生えたな」


「ノーマン、早いな」


「足の速さに自信があるって言ったろ、ロギル先生」


 その4人に一人の人間が合流する。そう言うとノーマンは、地面を蹴って急加速し触手へと斬りかかった。


「迂闊よ、ノーマン」


「近接戦闘がメインだからな。そうもなるだろ」 


 飛び込んだノーマンを、呆れ顔でロギルとリオーシュは眺める。


 ノーマンが飛び込む直前、触手に噛み付こうとしていたリオーシュのフレア・ドラゴンは、何かの壁に阻まれたように触手に近づけず、その体を握りつぶされて消えていた。


 そこに、ノーマンが切り込む。その瞬間、見えない空間にノーマンが魔法で作った太刀を振るうと、何かに弾かれたようにこちらに飛んで戻ってきた。


「おかしな技を使いやがる。空気が震えてるぜ」


「振動を生み出す魔法かしら。初めて見るわね」


「私が援護する。隙が出来たら殴るといい」


 そう言ってアマナは、弓を構えると休むことなく魔法の矢を連射し始めた。


 その矢の尽くが、空中に振動が起きて分解される。その中を、ロギルとノーマンは駆け出した。


「逆サイドからならどうだ!!」


 地面を滑るように走ってノーマンが回り込む。しかし、飛び込もうとした瞬間、目の前の空気が振動したのを悟って刃を振るい後ろに飛び抜いた。


「……」


 ロギルが、ナーガの頭を部分召喚して触手目掛けて振るう。ナーガの牙より毒が飛びちり触手へと迫るが。それも、空中に起きた振動によって地面へと全て落とされた。


「厄介だな」


「空から攻める?」


 その瞬間、ロギルの背中に黒い羽が生えた。ロギルの体は、一瞬にして舞い上がり触手よりも高い高度に到着する。


「ソフィー、行きすぎだ」


「ごめんごめん。まだ力に慣れてなくて」


 空より再度ナーガの頭をロギルは、振るう。しかし、結果は同じであった。見えない壁に阻まれ、神すら殺すと言われる毒は、地面へと落ちる。


「あ~~、厄介ね」


「任せてください」


 リオーシュがめんどくさそうな顔をする中、一人の人物が触手へと突っ込んでいく。


 その人物は、空中に現れた振動の壁を目の前にすると、あろう事か何もせずにその壁へと突っ込んでいった。


「……ふぅ~~~~」


 振動によって彼の体内が破壊されようとする。しかし彼は、それをあろう事か己の肉体を膨張させることでかき消した。


「超えましたよ」


 振動の壁を突き抜け彼は、触手へと到達する。そして、その膨張した筋肉で力任せに触手を殴りつけた。


 殴った瞬間、振動の壁によって触手と拳の間に空間ができて威力が軽減される。しかし、それでも殴られた触手は衝撃を受けて大きく吹き飛ばされた。


「おのれレギオン!!まだ邪魔をするだすか!!!!」


「今、誰か喋った?」


「どっちから聞こえた?」


「あの触手のようですね。わざわざ大気を振動させて発声したようです。意思があるようですね」


 さっきから何もせずに眺めていたレシアは、そう言った。


「分かりました。奴は、あの振動を操る魔法で我々から姿を隠していたということでしょう。魔力検知、振動検知。それらも空気を振動させることで感知を免れた。それしか有りません」


「魔力の検知も抜けられるの?あれで?」


「魔力も物質です。恐らくあの振動に囲まれた状態でいれば自身の持っている魔力を周囲から遮断できるのでしょう。それによって周囲との魔力の感知濃度を誤魔化し、あたかもそこにいないように錯覚させてこの場所に来た。そして、地下に隠れ潜んでいた。そういうことだと思います」


「いや、なんでそんなに魔法使い続けられるのよ。普通じゃないでしょ。地下に空間作るほどの工事をあっさりやれたとしても、その間魔法を使い続けなきゃいけないわけでしょ。その上、中央にはいつも監視の誰かが居る。それに気づかれず突破して工事して短い期間といえど隠れ潜むなんて不可能に近いと思うんだけど?」


「魔力は、魔石があればなんとでも。それと元から地下から来たのでしょうね。振動を振動で相殺して地下を進んでいる誰かがいると思わせないようにしたのでしょう。それしかないですね」


「ああ、そういう。なるほど。下水に何故あんな施設を作ることができたのか。それは、下水の外側から来て、下水に繋げる形で工事をしたからということかしらね?」


「いえ、それにしては、あの下水道の部屋の繋げ方は構造を把握していないと無理だと思うのですが。恐らくやり方は間違っていないかと」


 言いながらレシアは、車からある物を取り出す。


「それ、さっきの魔力を吸うやつじゃない」


「ええ。やはり、この辺はまだ空気中の魔力が薄いですね。すぐに戻るでしょうが、あれが出てきたことで周辺の魔力濃度が下がっているだろうと思っていました」


「それで、どういうこと?」


「この辺りにある魔力全てを私達で使い切ってしまう。そうすれば奴は、振動の壁を張れません。つまり防ぐ手段がなくなります」


「ああ、そう」


 リオーシュは、レシアの言葉に笑みを浮かべる。


「そういうの、嫌いじゃないわ」


 そして、嬉しそうに銃を構えた。






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