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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
6章 混沌
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知恵

 レギオンという組織は、実際には存在していない。国という組織の中では、そう扱われている。


 しかし、レギオンを組織しているのは、間違いなく国の中枢部の意向であり、その活動には非公式でありながら目を向けられている。


 普段はお互いに必要以上の接触をしない関係の両者だが、一つだけ例外事項が定められている。


 それは、街が消滅する可能性、または大幅な壊滅を迎えるかも知れないという状況。その状況下でのみ、お互いに事前に連絡をすることが可能とされている。


 普段は直接国に連絡しなくとも、レギオンを支える構成員達が一部の施設に圧力をかけることも、特殊な装備を作ることも可能である。


 その為、リオーシュも表立った直接的な連絡はしない。しかし、今回は状況が違っていた。


「召喚陣が既に書かれていたとなればねぇ」


 車を走らせながらリオーシュは、一人呟く。


「……しかし、いったいなんで」


 リオーシュは、こめかみを小指で押さえて考えた。


 有り得ない。このような事態がこの街で起きること。それ自体が有り得ない事だとリオーシュは、思っていた。


「発展していない周辺の村でもあるまいし」


 召喚という魔法技術。その恐ろしさは、魔法の発達したこの国の人類史には、色濃くその恐ろしさが書かれ残されている。


 村一つどころか、急速に発展を遂げた隣国が滅んだという事例もある。海沿いの村が、魔獣に乗っ取られ入れ替わられていたという話も残っている。


 その為、魔学の進むこの街で召喚という魔法は、他のどの魔法よりも警戒されており。その魔法が扱われていないか、非公式に監視してまわる別部署が国に設けられているほどだった。


「そんな中で最も警戒がされている下水道に潜って、わざわざ加工して部屋を作り、召喚魔法を発動させる条件を整えたって言うの。有り得ないわね」


 リオーシュは、溜息を吐いた。


「有り得ないことを可能にする。となると、この国の警戒事情にかなり詳しい相手と思うのが自然というものね。一からこの国の警備網を調べ上げてその上でとなると、不可能に近い。何故なら、警備の仕方も、その時間すらも月ごとに二回は、必ず変わるようにされているのだから」


 リオーシュのような、この国の安全を守る者にでもなければ、その知識は知らされもしない。そんな中をかいくぐって、下水に加工を施すのは到底不可能な話であった。


 それが、例え水の中であっても。


「となると、その事実を知っているものが怪しいわね。一番は、下水管理をしている大元の組織の上の連中かしら」


 リオーシュは、目を細める。


「それかもしくは、私達みたいに、この街の事情を知っている者か……」


 リオーシュは、頭の中に考えられるだけの犯人の顔を思い浮かべる。しかし、そのどれもがまだ根拠に足る人物ではないとリオーシュは、考えると頭を振った。


「ここまで大規模なことをしたんだし、いずれしっぽを出すでしょう。目論見を完璧に看破して切り崩して、そしてその顔を拝ませてもらうことにしようかしら」


 車は、学校へと辿り着く。


 未だ休日の学校の校長室へとリオーシュが戻ると、待ちくたびれたかのようにレシアが待っていた。


「解析、終わりましたよ」


 レシアは、自身のかけているメガネを直してそういった。


「で、どんなやつだったの?」


「中にいる魔獣生物。これを、トリガーとして発動するようです。具体的には、魔獣の死ですね」


「殺したら動き出すってこと?」


「その通り。魔獣が死ぬと同時に、魔獣の蓄えていた魔力が空気中に放出されます。それを、魔法陣が吸い取ってドカーン。召喚魔法が発動してしまう仕組み、というわけですね」


「それが五箇所も」


「ちなみに、その場にいる者も巻き込む形になっているようなので、魔獣を討伐するために我々が近距離まで行って魔獣を部屋で殺すのは、お勧めいたしません」


「この魔法を防ぐ手立ては?」


「魔法陣を解体することですが、流石にそれはさせてくれないみたいです。この手のにありがちな強制発動の項目がありますね。陣に傷が付けば直ちに魔獣を魔法で殺す仕組みになっているみたいです」


「……魔法ってなんでこんなに厄介なのかしら」


「便利すぎますからね」


 レシアは、目を閉じて仕方ないという顔をする。


「ですので、一つご提案がございます」


「何か手があるって言うの?」


「ええ、被害を抑えるには、これが一番かと」


 そう言うとレシアは、笑顔で一枚の紙をリオーシュに差し出した。


「……予算申請書。高いわね」


「ええ」


「でも、確かに良さそう」


「はい」


「……許可するわ」


「ありがとうございます!!」


 レシアは、それだけ聞くと笑顔で校長室を出て行った。


「今から作るってことかしら。まぁ、そうでしょうね」


 リオーシュは、受け取った予算申請書を机に投げる。そこには、大量の魔石を購入する為の大きな金額が書かれていた。


「う~~ん、アイテムの開発は楽しいですね」


 その後、一人レシアは、地下にある一室で何かの試作を行っていた。


「レシアさん、お届け物が届いたみたいですよ」


「はいはい、今行きます!!」


 レシアが外に出る。すると、学校の目の前に何十台もの馬車が止められていた。


「どちらに下ろせばいいのでしょうか」


「あ、この入口前に積み上げてください。それでいいです」


「分かりました」


「……お手伝いさんがいりますね」


 レシアは、馬車から何個もの木箱を下ろす配達員達をその場に残し、相談室へと向かった。


「それで、俺が呼ばれたと」


「はい」


 相談室から、ロギルのみがレシアに連れてこられた。


「……力仕事なら、レドリアとかの方が向いてるんじゃ」


「レドリア先生と、ノーマン先生は、今朝からお外回り(水路の監視)ですよ。なのでお願いします。他の職員の方も手伝ってくれるらしいので」


「分かったよ」


 ロギルは、積まれていく箱を職員達と運んでいく。他の職員の三倍の量の箱を一人で運び終えると、ロギルは息を吐いて汗をぬぐった。


「お疲れ様です」


「それで、こんなにいっぱいの魔石をどうするつもりだ?」


 ロギルは、運んできた箱の中に腕を突っ込んで魔石を握り締める。


 そこには、腕の一掴みでは、とてもではないが掴みきれない程の小さな魔石が大量に箱に敷き詰められて入っていた。


「作るんですよ」


「何をだ?」


「パイプです」


「?」


 ロギルは、理解できなかったが楽しそうに作業をし始めるレシアを見て、ロギルはその場を離れることを決めた。


 その後ロギル達は、相談室に戻ってアマナのサポートをしつつ引き続き下水を調べていた。休みを挟みつつの長時間労働をアマナは強いられる。


 しかし、そのおかげで全てに部屋に仕掛けられている魔法陣が同じ物であると断定することが出来た。


「疲れた」


「甘いものを買ってきてある。ご褒美だ。食え」


「わ~~い」


 力なくアマナは、喜びの声を上げる。そして、皿に置かれたクッキーを貪ると、そのまま机に突っ伏して寝た。


「明日までは、ゆっくり寝るといい」


「ちゃんとしたところで寝かせてあげたほうがいいんじゃないかな?」


「それもそうか」


 ロギルは、アマナの体を持ち上げると保健室のベッドまで運んで寝かせる。


「これで少しは体力が回復しやすくなるだろう」


「羨ましい」


 サシャが何か言っていたが、その言葉の意味がロギルには、分からなかった。





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