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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
6章 混沌
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夏期

「……暑い」

「暑いな」


 日差しが照りつける中、麦わら帽子と作業服を着て草をむしるロギルとノーマン。


 今日は、学校は休日の日。


 そんな中ロギル達は、事務員やバイトの方達と伸びに伸びた雑草を抜く仕事に勤しんでいた。


「暑いっす、ロギル先生」

「ノーマン、そのセリフ今日で5度目だぞ」

「だって、暑いんすもん」


 ロギルもノーマンも、暑い日差し降り注ぐ影のない作業場を担当していて汗だくになっていた。


「一旦水分補給をしましょう。あまり無理して体調を崩してはいけない」

「サンセー」


 校舎へと、ロギルとノーマンは歩いていく。


 水場へとたどり着くと、ロギル達と同じく暑さにバテ始めた人達が校舎の影で休んでいた。


「あっ、ロギル先生、お疲れ様です」

「ああ、リータさん、お疲れ様」

「うっす」


 ロギルが備え付けの水道に移動して水を飲もうとするとリータが近づいて来た。


「先生は、今どこを担当されてるんですか?」

「グラウンドだよ。影一つなくてちょっと辛いね」

「今日、快晴ですからね」

「ほんとにね」


 ロギルは、空を見上げる。雲は僅かにあるが、それでも一面青々とした気持ちのいいぐらいの快晴の空だった。


「こんなに熱くちゃ、学校も休みになるわな」

「長期休暇のことですか?」

「ああ」


 ロギル達が赴任して初めての夏期休暇が訪れようとしている。ただ夏期休暇を取るのは、生徒達のみでロギル達には関係のないことだが。


「休みはいいんですけど、課題を出されるのが嫌ですね。バイトもしたいのに」

「こんな暑い中働くのかい?えらいな」

「いえ、色々とお金を貯めておきたいので。ところで、休暇中も相談室は空いてるんですよね?」

「ああ、空いてるよ。殆ど週末以外は空いてるはずだ」

「そうですか。なら、勉強しにいきます。家にいると家族がうるさいので」

「ああ、いいよ。いつでも来なさい」


 ロギルがそう言うと、リータは嬉しそうに微笑んだ。


「ロギル先生は、生徒に好かれてますねぇ」

「そうですかね?」


 ノーマンが、水をがぶ飲みして口元を拭う。それを見て、ロギルも水を飲み始めた。


「私、作業に戻りますね」

「ああ、また」

「はい」


 リータは、校舎側に向かって駆けていく。その後ろ姿を見送ると、ロギルも水をがぶ飲みした。


「さて、続きと行きますか」

「おうよ!!」


 ロギルとノーマンは、水飲み場を離れようとする。しかし、その時。


「ロギル先生、ノーマン先生、校長がお呼びですよ!!」


 声に二人は振り向く。見ると、アマナが手招きしていた。


「草むしりよりもきついことかもしれないな」

「そうですね」


 二人は、呼び出しに応じてアマナについて行った。


 学園・フォーザピオーゼには、地下室が存在する。それは、この学園を隠れ蓑にして存在する組織・レギオンの構成員とその補佐をする人員にしか知られていない。


 その地下の集会施設に、レギオンの六人は集まっていた。全員が作業服を着た状態で。


「お、ここは涼しいじゃん」

「汗が引いていきます」

「もう疲れた。寝ていい」

「我慢しろ」

「それで、どうしたのですかリーダー?」


 つい先ほどまで全員が草むしりや校内の掃除をしていたのだから締まらない格好なのは仕方がない。そして、それはリオーシュも例外ではなかった。


 彼女も、麦わら帽子をかぶった状態で一枚の書類を机に叩きつける。


「最悪な情報が入ったわ」


 溜息を吐いてリオーシュは、顔を上げた。


「やばいのか?」

「おおやばよ」


 りオーシュは、叩きつけた書類を掲げた。


「下水道の監視員が行方不明になったわ」

「下水道」

「監視員」

「そう。この町の地下に作られている下水道施設。その中で、人が行方不明になったのよ!!」


 りオーシュがそう言うが、他の全員はよく分からないという顔をしていた。


「下水道って、監視員がついていたのか?」

「そうよ。街の下にある巨大な迷路だもの。いつ悪用されるか分からないわ。そんなとこに、監視が行かないと思う?」

「地獄のような仕事だな」

「そうね。しかも下水道は、現在も拡張中よ。街全体に魔法を使って地下を安全に掘り進めて建造されている今尚拡大を続ける巨大迷路ってわけ」

「だからって何かあればすぐに分かるだろ。そんな複雑な作りをしているわけでもあるまいし」

「そうね。そのはずよ。でも、そんな中で行方不明者が出た。この意味が分かる?」


 リオーシュは、更に一枚の地図を取り出した。


「この中のどこかに、何かが潜んで悪さしてるってことよ!!」


 それは、街中に張り巡らされた下水道の縮小見取り図。それを見て、アマナは嫌そうな顔をした。


「まさかだけどさぁ~」

「これ以上犠牲者が出ようものなら、この全てを私達が歩いてしらみつぶしに見ていくことになるわよ!!」

「……ですよねぇ~」


 アマナは、見取り図から視線を背けて溜息を吐いた。


「それで、どうするんだ?動くのは確定なんだろ?」


 ロギルがそういうが、リオーシュは首を振る。


「先に兵士に連絡が行って捜索が行われることになったわ。私達の行動は、その後」

「後手に回るってわけだ」

「現場の職員が勝手に行動した結果ね。向こうに先に話が通ってしまったから。そこに私達が割り込んでもいいことないでしょ」

「確かにな」

「しかも」


 リオーシュが書類を手に取って読み上げる。


「捜索期間は、最大で今日から一週間行われるわ。それも、区画ごとに日にちを分けて。その間、外部の出入り口は全て監視されるみたい」

「ご丁寧だな」

「それで見つかればいいけど、もしも見つからなかったら」

「俺達の仕事量が増える、ということか」

「そういうこと。手遅れにならなければいいけどね」


 そう言ってリオーシュは、魔法でいくつかの書類を燃やす。


「まさか指をくわえて見ているわけじゃないだろ」

「ええ、勿論。アマナ、見取り図を渡すから、観察よろしく」

「了解」

「レシア、地上から地下に怪しいところがないか魔力調査お願い」

「了解いたしました」

「その他、上に戻って草むしり。以上!!解散!!」

「草むしりからは、逃げられなかったか」

「早く終わらせよう」

「頑張りましょう」


 集会場から全員が出ていく。そしてアマナとレシア以外は、持ち場に戻った。


「下水道って、どんなとこでしょうね?」

「生活排水が流れるとこだろ。ジメジメしてるんじゃないか?」

「キツそうだね」

「ああ」


 暑い日差しを浴びながらロギルとノーマンは、グラウンドで溜息を吐いた。


 その翌日。相談室で見取り図とにらめっこしているように見えるアマナと、それを見守るロギルの姿があった。


「……異常なし」

「こっちはOKと」


 書き写した見取り図に、バツをロギルは書き込む。


「おかしい。行方不明になった監視員の巡回ルートは、ここだけのはず」

「別の場所に攫われたのかもな」

「それじゃあ、全部見るしかないじゃん!!」

「そうなると思ってたよ。俺は」


 休み返上で下水を能力で見回る立派なアマナの姿が、その日一日中見れたという。


「異常なし」

「オールクリア」


 全ての能力での下水ルート観察が終了し、アマナは机に突っ伏した。


「全部異常なし!!行方不明者なし!!」

「下水道には、既にいないのか、それとも……」

「それとも?」


 ロギルは、見取り図を見つめる。


「まだ見てないところがあるよな」

「……一応聞くけど、どこ?」

「流れてる水の中だよ」


 その言葉にアマナは、机に突っ伏したままでロギル方に顔を向けた。


「休憩してからでいい?」

「ああ、勿論」


 二人は、日付が変わるまで相談室で水の流れを調べた。


「それで」

「アマナが見つけたよ」


 ロギルは、リオーシュに書き加えた見取り図を渡す。


「水の流れの中に、明らかにおかしな通路がある。これが怪しい」

「……人は通れるのよね」

「辛うじてな」

「……はぁ。水中用の装備を準備させるわ。今日は休みなさい」

「分かった」


 ロギルは、そういうと校長室を出ていく。


「水の中に通路って、犯人は魚かなにかかしらね」


 リオーシュは、一人呟く。


 都市に広がる水路の中、その水の中で今、怪しげな影が蠢いていた。







 

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