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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
5章 狂乱
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警戒

 相談に来た生徒にロギルは、学校側で従兄弟のことを調べるし、学校から兵士に身辺パトロールをしてくれるように頼んでみるといった話をした。その話を聞いたあとソーラは、まだ不安が拭えない表情で相談室を後にした。


「あれは、よほどだな。何かが引っかかってるんだろう。ああいう人の感は当たる」

「俺もそう思うな。レドリアには、直接彼を警備してもらったほうがいいかも知れない」

「杞憂だと一番いいんだけどな」

「そうだな」


 そう言いながらアマナは、机に顔を伏せて睡眠に入るための体勢を取る。その肩に、ロギルは手を置いて肩を叩いた。


「何故寝ようとする?」

「書類、頑張ったじゃん。ちょっと休憩」

「……一時間だけな。まだ授業はあるんだから」

「うい」


 相談を聞いているうちに昼休みは終わりを迎えてしまった。午後の始業の鐘が鳴る中、ロギル、サシャは受けた相談に対してどう立ち回るのかの相談を始め、アマナは寝息を立て始めた。


 一時間後、アマナはゆっくりと立ち上がるとロギルに礼を言ってから教室へと移動する。その後、放課後までロギルは、サシャと二人きりで過ごした。


「やっぱり、そんなことが本当にあるのだとしたら、パトロールはすべきだと思うよ。特に生徒たちの多い通学路とか」

「そうだな。職員室の資料から照らし合わせると、やはり寮からの通学生徒が多いここらへんの路地が人数の観点から言うと重要度が高そうだ」

「あと、彼の証言が確かなら街の住居近くに不審者が潜んでいる可能性が高いと思う。彼の家も、街の商業区近くだし」

「他人に成り代わるか……。もしそんなことが出来るとしたら目的はなんだ?何故、そんなことを?」

「彼の話が確かなら、完璧には成れないっぽいよね。でも他人になる理由なんて至極簡単なものだと思うよ」

「……それは、つまり」

「憧れだよ。自分の持ってないものを持っている人を見ると凄いって思うでしょ。それが欲しいんじゃないかな」

「他人に成り代わることでか」

「うん」

「なら、俺達がもっと調べるべき場所っていうのは……」

「富裕層の多い地域ってことになるかな。単純に考えるのなら」


 街の地図に、二人の会話によって赤で塗られる区画が増えていく。その広さに、二人は目を見合わせた。


「やっぱり」

「この広さを学校の先生だけで見張るのは無理があるよね」

「……いや、無理じゃない」

「?」

「お昼寝好きの学生に手を貸してもらうことにしよう」


 そのロギルの言葉に、アマナは教室でくしゃみをした。


「まだ彼の従兄弟で居続けている保証はない。本当にそんな奴がいるのなら、一刻も早くあぶり出す」

「そうだね。捕まえよう。う~~ん、やる気出てきた~~!!!!」

「いや、サシャは留守番だからな?」

「え、私もパトロールするんじゃないの?」

「サシャは、校内を守るために呼ばれたんだ。外仕事は、まだ任されないんじゃないか?」

「そうかな。う~~ん、なんだかしょんぼり」

「まぁ、サシャも気を抜かないようにしていてくれ。俺達も無敵ってわけじゃない」

「そうだよね。人の肉体だもんね」

「ああ」


 例え人を凌駕する魔導を極めた者達でも、殆どの者は肉体的にはただの人である。不意打ちで致命傷でも貰えばどうしようもない。特にサモナーであるロギル達は、そのことをいつでも頭の隅で考えるようにしていた。


「さて、放課後まではまだ時間があるな。既に狙われていたとすれば富裕層の誰かは、既に消えている可能性が高い」

「そこをどうやって探すかだね」

「ああ。次は、そこをどやって調べるか決めよう」

「OK」


 放課後になるまで二人は、地図を前にして今後の方針を話し合い続けた。


「来ましたよ、ロギル先生」

「うっす」


 放課後。授業終了の鐘が鳴るとロギル達は、テーブルに置いていた資料を片付けて先程の相談のことなどなかったかのように書類に向かった。そのすぐ後に、セシルとリータが相談室へとやって来た。


「あれ、今日はソフィーちゃんいないんですか?」

「本当だ。どうかしたんですか、彼女?」

「ああ、ちょっと体調不良でね。今日は、お休みだよ」

「わぁ、大変ですね」

「風邪なんて引きそうになかったのに」

「そういうこともあるよ。あ、セシルちょっと来てくれるかな。手伝って欲しいことがあるんだ」

「あ、はい。お任せ下さい!!」


 そう言って荷物を机に置くとセシルは、ロギルに近づいていく。そしてロギルに近づくと、肩を抱き寄せられて耳元に顔を寄せられた。


「これ、よろしく」

「は、はい!!」


 ロギルとしては、自身の体でセシルを抱き寄せることで渡した紙の詳細をリータに一瞬でも見せないためにした行為だった。しかし、その普段のロギルらしからぬ行為に、セシルは驚いてしまう。だが、ロギルの渡した紙の一枚目。それに目を向けると目の色を変えて紙を受け取った。


「何、それ?」

「校内の清掃活動のお知らせポスターを作るみたい。リータも手伝ってくれる?」

「ああ、いいよ」


 ロギルに渡された紙の二枚目を、セシルはリータに見せる。もう一枚の自分達の通学路が赤く塗られた紙をセシルは、そっと自身のカバンへと文房具を取り出すふりをしていれた。


 地図が赤く塗られている意味をセシルも理解している。それは、警戒を意味する色であった。しかも赤は満遍なく塗られている。塗が深いほど注意しろという意味であった。


「……」


 セシルは、リータに悟られないようにロギルに対して目線を向ける。その無言の視線にロギルは、軽く頷いてみせた。


「……」

「どうしたのセシル?」

「ポスター、どんな感じにしようかなって」

「いつも通りでいいんじゃない?テーマだけ大きく書いてさ」

「うん。そうだね」


 それ以上深くは考えずセシルは、ポスター作りを進めることにした。


「……うん、だいぶ早く出来るようになったね」

「慣れてきたよね」


 放課後のわずかな時間。その時間のみで二人は、立派なお知らせのポスターを完成させた。


「おお、早いな」

「ひゃっ!?」

「!?」


 ロギルは、二人の肩に手を置いてポスターを覗き込む。その行動に、セシルとリータはビクッとした。


「え、ああ、悪い。驚かせたかな?」

「い、いえ、大丈夫です」

「……」

「うん、いい出来だ。ありがとう。セシル、リータさん」

「いえ、とんでもないです」

「……うっす」


 ポスターを持って、ロギルは自身の机へと移動する。その後ろ姿を、リータはジッと見つめていた。


「あのさぁ」

「うん、どうしたのリータ?」

「私、リータさんだったじゃん」

「うん、そうだね」

「セシル、セシルって言われてたじゃん」

「うん」

「何というか、距離があるくない?」

「え?」


 セシルは、リータの言葉に少し考える素振りをした。


「ほら、私って先生の直属の部下ってところあるから」

「……私も、お手伝いしてると思うんだけどなぁ」

「でもほら、先生もちょっと遠慮とか感じちゃってるのかもしれないし」

「遠慮、かぁ」


 セシルの言葉に、リータは席を立ち上がる。そして、ロギルへと歩いて近づいていった。


「……先生」

「うん、どうしたのかなリータさん?」

「私、アルバイトしようと思ってるんですけど」

「うん、いいんじゃないかな?リータさんなら、バイト先もしっかりしたところを選びそうだし」

「それです。しっかりした安全な場所でバイトしたいんですよ」

「うん、そうだね。それがいいと思うよ」

「ですので」


 リータは、机に手をついてロギルの目を真っ直ぐ見つめた。


「ここで雇ってください」

「?」

「ですから、セシルと同じように、ここでバイトさせてください」

「……」


 リータのその言葉にロギルは、目を泳がせて少し考えた。


「確か、清掃のバイトなら空いてたはずだ」

「いえ、ここがいいです。相談室で働かせてください」

「う~~ん、人数がなぁ。既にセシルが居るから仕事は人手が足りてるし」

「いえ、私は、先生の近くでバイトしたいんです。信用できますから!!」

「……」


 リータのその言葉にロギルは、難しい顔をして考え続けた。


「……ちょっと校長に聞いてみるよ」

「お願いします」


 そう言うとリータは、自身が座っていた席へと戻っていく。その姿を、サシャはジッと見つめていた。


「先生!!遅くなりました!!」


 その時、勢いよくドアが開けられる。そこには、パセラが立っていた。


「お、どうしたんだ今日は。いつもより遅かったな」

「ええ、ちょっと友人の課題を手伝っていまして」

「ここですれば良かったんじゃないか?」

「いえ、先生のお手を煩わせる程の物ではありませんでしたので。ええ」

「そうか。まぁ、座りなさい」

「はい!!」


 ご機嫌な表情でパセラは椅子に座る。その間も、サシャはリータをジッと見つめていた。







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