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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
4章 疾走
33/76

速攻

「うおおおおおお!?」


 悪路に入ったことで車体が上下に揺れる。凸凹した道がアマナの体を揺さぶるが、それでもアマナの射撃は手元が狂うことがない。空中で拡散した矢は、ノーマンに当たることなく跳ね回る球体へと向かって直撃する。


「くっそ!!道が悪いな!!速度が出ねぇ!!!!」

「ハハッ!!ここで距離を詰めて終わらせてやる!!!!って、おっと!!」


 速度をさらに上げようと前傾姿勢を取ったノーマンは、何かに躓いたようだ。そのまま前のめりに倒れそうになるが、彼のコートをロギルの部分召喚したソフィーのしっぽが掴む。そしてそのままノーマンの体を持ち上げた。


「大丈夫か?」

「ああ、助かったぜロギル先生。危うく無様を晒すとこだった」

「離すぞ」

「ああ!!」


 再びノーマンは地面に降りると走り出す。そして球体へと近づくと建を振りかぶった。


「ぶった切れろ!!!!」

「チッ!!」


 その時、球体から一本の棒のようなものが突き出てきて球体の体を押した。押された分、球体は前に進んでノーマンの斬撃を回避する。だが突き出てきた棒の部分は、ノーマンの斬撃によって球体との接続部を切られて消滅した。


「逃げるじゃねぇ!!!!」

「クッソ!!もちょっとで!!」

「ノーマン、援護するぞ!!!!」


 アマナの放った矢が、上空から拡散して球体へと降り注ぐ。矢の命中の衝撃によって少しだけ球体の進行速度が落ちた。


「ぐああああああ!!!!クッソ!!!!」

「これで終わりにしてやる!!!!」

「……やるしかねぇか」


 ノーマンが動きの遅くなった球体目掛けて飛んだ。そして剣を振りかぶる。その瞬間、球体から無数の槍のように尖った棒が溢れ出てノーマンへと飛んできた。


「悪あがきか!!」


 その槍を、ノーマンは焦ることなく両手に持った剣で防ぎ、そして切って破壊する。そして前方を走り続けていた球体へと近づくと、その体に剣を振り下ろした。ノーマンの斬撃によって球体は真っ二つに割ける。


「!?」


 だが、ノーマンが道の先を見ると、もう一つの別の球体が未だ転がっているのが見えた。


「分離しやがったのか!?」

「さっきの槍の影に隠れて一本槍が分離して飛んでいっていたんだ!!あっちが本物だぞ!!」

「ちくしょう!!まだ走るのかよ!!!!」


 悪態をつきながらもノーマンは、再び走り出す。ノーマンが走り出すよりも前にロギル達の乗った車はノーマンを追い越して前方の球体の追跡を進めていた。


「……どうする。このままだとさっきの野営地点までもうすぐだ」

「レシアがそこに結界を張ってる。彼女は、いま魔力を温存しているから問題なく結界を張れるでしょう。それで捕縛して破壊。それで終わり」

「それでダメだったら?」

「……また追いかけっこするしかないわね」

「……面倒だな」

「そうね」


 アマナは、ロギルたちが会話している間もずっと矢を放っている。矢が当たった部分は一瞬ではあるがかけるのだが、すぐに修復されてしまう。それを見て、アマナは嫌そうな顔をした。


「あいつ、まだ余裕が有るな」

「というと?」

「あいつは体が魔力で出来てる。だから直ぐに体内の魔力を消費すれば肉体を再生出来るんだ。それが私が今の今まで削りに削っても問題なく出来ている。ノーマンに外皮とはいえ大きく切り削られてもな。とすれば、早く決着をつけるならノーマンに直接本体を刻んでいってもらったほうが早いんだけど」

「ああ、やってやらぁ~~~~!!!!」


 遅れてきていたノーマンが車に追いついた。


「無理だな。さっきみたいに引き離されるのが落ちだ。何かあいつの攻撃を防いだ状態で攻撃するかそれよりも早く攻撃するしかない」

「上等だ!!俺の速さを見せてやるよ!!!!」

「……ロギるん、こいつ私よりも脳みそが筋肉思考すぎる気がするんだが?」

「だが、やれることをやるしかない。取り敢えずノーマン、レシアが対象を捕縛したら一気に距離を詰めて細切れにしろ。それが出来れば追いかけっこも終わりだ」

「おう!!!!」


 道の荒れが落ち着いて安定していく。そして球体がロギル達の休んでいた地点に差し掛かると、レシアが片腕を前に突き出して周囲の魔法陣を起動させた。


「さて、ここから先は通行止めですよ!!」

「何!?」


 球体の周囲に光の帯が出来ていく。その帯は、無数に球体へと降り注いでその体を雁字搦めに縛り上げた。


「今ですよ!!!!」

「ああ!!」


 ノーマンが光の帯へと迫る。そして、球体目掛けて剣を一閃した。

 

「まだまだ!!!!」


 続けてノーマンは球体に二度目の斬撃を放とうとする。だが、ノーマンが真っ二つにした断面部分から赤い球体らしきものが先に飛び出て道の先へと転がり始めた。


「ノーマン!!あの赤いのが奴の核だ!!保有してる魔力量がそっちのほうが多い!!!!」

「何!?」


 赤い球体の周囲に再び鉄色の液体が湧き出て大きな球体を作っていく。そしてまた転がり始めた。


「くっそおおおおお!!!!しつこいんだよ!!!!」

「……要は、あれだけ切ればいいわけだな」

「レシア!!」

「大丈夫です!!まだいくつも道沿いに魔法陣を仕掛けてます!!」

「よし、まだ行けるわよ!!」

「いや、強攻策に出る」

「えっ?」


 ロギルは、そう言うとアマナを助手席に引きずりこんだ。


「おう、ロギるん。いきなりだな」

「車体の上に昇る。レドリア先生、協力してください」

「ええ、いいですよ」


 窓を開けてそこから身を乗り出しロギルとレドリアは、車体の上に昇る。そしてロギルは、ソフィーのしっぽでノーマンを引き寄せると同じく車体の上に乗せた。


「よっと。どうしたんだよロギル先生?」

「敵の保有魔力量は不明。それだけでなく以前俺達は追いかけたままの状態だ。この状態を長引かせて街まで近づいていくのはまずい」

「ですね」

「それで、どうしようって言うんだ?」

「……あいつは俺達が近づけばさっきのように体内から槍を作り出して放ち俺達の進行を阻害してくるだろう。それを、今回は俺が防ぐ」

「はぁ~~、なるほど?」

「その瞬間にノーマン先生にはあいつの核をぶった切ってもらいたい。今度は、赤いというのが分かっている。切れるな、ノーマン?」

「ああ、確認できれば逃しはしねぇ」

「よし、なら行くか」

「……私は、何をすればいいんでしょうか?」


 レドリアのその言葉に、ロギルは溜息をはいた。


「で、マジでこれで行くのかよ?」

「しくじるなよ」

「マジかよ?マジか~~~~」


 ノーマンの体には、蛇のようなしっぽが絡みつき全身を覆っている。そのしっぽは、ロギルの腕先から部分召喚されていた。そしてロギルもまた尻尾を体に巻き付かせている。


「さて、お願いしますレドリア先生」

「ええ、任せてください」


 レドリアがそう言うと、その体が膨張して上半身のみ巨大化する。そしてその巨大になった腕で、レドリアはロギルとノーマンを合わせて掴んだ。


「……ボールになるなんて貴重な体験だな」

「俺は何度か吹っ飛んだことがあるが、今回はそれ以上かもな」

「では、行きますよ」


 レドリアは、二人を持ち上げて振りかぶる。


「……今からなしっていうの無理?」

「黙ってろ。舌を噛むぞ」

「では、頼みましたよ、お二人共」


 そう言うと、レドリアは車体の上で肉体を回転させ始めた。


「う、うぐぐぐぐっ!!!!」

「……」


 回転に合わせてロギルとノーマンの顔が歪んでいく。レドリアは、それに構わず筋力を使って二人にを起点に遠心力を高めていった。


「では、行ってらっしゃい!!!!」


 遠心力が極限まで高まった瞬間、レドリアは二人を振りかぶって前方の球体目掛けて投げつける。二人は、まるで一つの丸太のように前方の球体目掛けて空中を飛んでいった。


「ロギるん、体張るなぁ~~」

「よくやるわね」

「何だあいつら!?正気か!!!?」


 前方の球体からロギルの予想通りに無数の槍が放たれて飛んでくる。だが、ロギルはそれに合わせてナーガの頭を部分召喚すると、その牙を槍に向かって振り下ろしながら叩きつけて溶かしなぎ払った。毒によってさっきまでそこにあったはずの槍が、中程で溶け折れて吹き飛んでいく。その瞬間、ロギルは尻尾を召喚解除してソフィーの尻尾を部分召喚した。


「あとは任せたぞ、ノーマン」


 ソフィーのしっぽでノーマンをロギルは前方へと押し出す。そして、そのタイミングでノーマンは全力で二本の剣を振るった。


「うおりゃああああああああああ!!!!」


 バツの字に振り下ろされた二本の剣が球体を切断する。その瞬間、その割れ目から赤い何かが飛び出るのをノーマンは見逃さなかった。


「……悪いな。これで、終わりだあああああああ!!!!」


 ノーマンの再度振るった剣がその斬撃を飛ばして赤い球体へと迫っていく。そして斬撃が届くと赤い球体は、真っ二つになってその場に転がり落ちた。


「……う、嘘だろ。なんで俺が、こんな連中に」


 赤い玉の残骸が、地面でゆっくりと溶けるように消えていく。そして赤い玉の残骸が消え去ると、そこには無数のナイフが落ちていた。


「……なんだこりゃ?」

「……ただのナイフ、だな」

「なんでこんな物を大事に抱え込んでたのかね?」

「こんな姿になっても、集めたものを捨てられなかったんじゃないか?」

「なるほど。執着か。少しはあったんだな。こいつにも、人間らしいところが」

「……そうだな」


 リオーシュの運転していた車が二人の背後で止まる。二人は、ナイフから目線を外すと後ろを向いて車へと歩いて行った。






 

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