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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
4章 疾走
32/76

追跡

 敵との距離が一瞬で縮まっていく。その間にもアマナは、緑の矢を絶えず射続けているが当たる様子がない。


「ロギるん、足押さえててくれ!!もうちょい乗り出す!!」

「へいへい」


 ロギルがアマナの足を抱え持つと、アマナは少しだけ身を更に窓から乗り出した。


「舐めるなよ、球体!!」


 アマナが弓を力いっぱい引く。そして放った矢は、球体が避けようとした瞬間にその場で拡散し、球体の全体めがけて矢が襲いかかかった。


「どんなもんよ!!」

「一旦戻れ。そろそろぶつかる」

「了解」


 ロギルに足を引かれて滑り込むようにアマナは、車内へと上半身を戻した。


「このままだとぶつかるぞ?」

「キャスター?」

「やってみます」


 並走していたバイクに乗った状態でレシアが魔法を使う。前方の地面に小さな魔法陣が現れるとその全てから風の衝撃波が生まれた。しかし、銀の球体は奇妙な動きをしてこの衝撃を避けていく。


「軟体生物すぎますね。なんですかあの避け方」

「しょうがない。私が何とかする」


 懐から銃を抜いてリオーシュは構える。窓から銃を持った手のみを前方に向けると、その引き金を引いた。


「火の煌めきよ、遥かなる天より来たりて邪悪を滅せよ!!ソーラードラゴン!!」


 リオーシュが前方に放った銃弾が火の魔力を纏って閃光を放ち始める。そして、その閃光の魔力の塊は、リオーシュ達の前で一匹の巨大な龍となった。


「なんだ!?」


 こちらに速度を上げて迫ってきていた銀色の球体がソーラードラゴンを見て叫ぶ。銀の球体は、ソーラードラゴンに掴まれて持ち上げられると、車の後ろに投げ出された。


「あっつい!!あっつい!!!!」


 そう言いながら銀色の球体は、ロギル達のかなり後方に着地する。


「あまり効いてないみたいね。火属性はダメと」

「でも湯気は出てるな。多少は効いてるんじゃないか?」

「でも動きが鈍ってない。効いてない気がする」


 りオーシュが、ハンドルを切って急旋回し車の向きを変える。レシアも強引に車体を傾けてバイクを反転させた。


「こいつら、お前たちもレギオンか!?」

「ほう」

「僕たちがいると知りながらこちらに来ていたとは。これは、益々見逃せなくなりましたね」


 球体の着地点よりさらに先。そこには、後部座席から一瞬の判断で降りていたノーマンと、レドリアが立っていた。


「はっ!!ほざくな!!死ね!!!!」


 球体は、体を再び高速回転させると二人へと迫っていく。立ち尽くす二人のうち、レドリアが前へと進み出た。


「貴方こそ、我々を甘く見すぎなのでは?」


 レドリアが拳を握る。すると、彼の腕の筋肉が常人では有り得ないほど膨張を始めた。


「潰れろ!!!!」

「貴方がね」


 迫り来る巨大な球体めがけてレドリアが拳を放つ。すると、レドリアの拳をくらった球体は、まるで水が波打つかのように全身を振動させると空中へと浮いて僅かに後方に飛ばされた。


「なんだこの打撃は!!本当に人か!!」

「う~ん、打撃技は、通りが良くないようですね」

「水みたいな奴だな。任せろ。俺がやる」


 ノーマンは、腕に剣を出現させて構えた。


「はははっ!!貴様の魔法を相手にしたことがある!!俺には、効かない!!」

「そうかい」


 ノーマンは、その場で地面を蹴ると飛んだ。その瞬間、ノーマンは一瞬で球体の近くへと移動する。


「!?」

「向こうの人は俺より早かったかよ。ええ?」


 球体の中央目掛けてノーマンが剣を一閃する。すると球体は、反応することも出来ないままにその肉体を両断された。一本の真っ直ぐな切断傷が、球体の中央へと残っている。しかし、それはすぐに修復された。


「無駄だ。無駄だ。剣で俺には勝てないんだよ!!」

「ほう。今、僅かにだが手応えはあった。お前の体は、魔力で作られているみたいだな。構造的には水に近いようだが魔力は魔力。俺が切ればその切られた面の魔力は消える。これが効いていないようなふりをしているようだが、さて、いつまでそう言っていられるかな」

「純粋な打撃は効きづらいんですね。僕と相性は悪いみたいです。残念」

「……ムカつく奴らだ」

「だったらどうする?」


 再び剣を構え直したノーマンを確認すらせず、銀色の球体はその体を再び回転させ始めた。


「お前たちの守っているものを引き裂いてやる!!!!」

「これはこれは、最悪のお答えですね」

「うるせぇ~~!!!!」


 回転した球体は、速度を速めてレドリアへと迫る。レドリアは身を縮こまらせて球体が来るのを待った。


「お前だけでも死ねええええええええええ!!!!」

「それは無理でしょうね」


 球体から無数の刺の槍が出てレドリアを踏みつぶそうと迫る。しかし球体が近づいた瞬間、レドリアの肉体が大きく膨張した。


「なっ!?」

「相性は悪いでしょうが、殺されはしないというとこでしょうか?」


 レドリアの肉体が巨大化している。巨大になったレドリアの上半身は、その巨大になった反動でなぎ払った拳で銀色の球体を吹き飛ばすと、空中に球体の肉片を飛散させた。


「ちっ!!!?」


 空中で球体の飛び散った肉体が固まる。そして、レドリアを避けるように彼の背後に移動すると、再度集まって一つの球体となり、そして走り出した。


「おや」

「しぶとさだけは、一人前だな」

「では、お願いします」

「任せろ」


 ノーマンは、地面を蹴って球体を追いかけ始めた。


「はい。お待たせ」

「ありがとうございます」


 リオーシュ達の乗った車がレドリアの前に止まる。車にレドリアが乗り込むと、リオーシュは再度車を発進させた。


「しつこいな!!なんだあの乗り物は!!!!」

「お前みたいな奴を逃がさないための文明の力だ!!」


 走っている球体にノーマンが追いつく。そして、片腕で剣を一閃した。それを、空中に飛んで球体は器用に躱す。


「チッ!!常識はずれな脚力をしやがって!!!!殺す!!」


 回転している球体の真横から刺が伸びてきてノーマンを襲った。しかし、それをノーマンは足を僅かに止めて躱すと伸びてきた部分の中腹付近に剣を入れてぶった切る。すると、切られて切断された部分の液体金属がそのまま空中で溶けて消えた。


「!?」

「お前の魔力操作ごと断ち切らせてもらった。やはり殆どその体は魔力で出来ているみたいだな。諦めろ。地獄に送ってやる」

「俺に肉体を断ち切るなんて、あり得るのか?お前は、本当に人間か?」

「お前は人間の可能性を甘く見てたみたいだな。人間、やる気になればこれぐらい出来るんだよ!!!!」


 走りながらノーマンが剣を振るう。しかし、球体は速度を上げてノーマンを引き離しに掛かった。


「ちっ!!」

「確かにお前は普通ではないようだ。だが、俺についてこれるかな?」

「逃がさねぇぞ!!!!」


 その後方で、リオーシュ達が二人を追いかけていた。


「おい、引き離されてるぞ」

「これでもアクセルベタ踏みなのよ!!あいつら早すぎるんじゃない!!どれだけ速度出てるのよ!!今度改正される道路交通法だと確実に違反になるわね!!」

「でもどうするんだ?私だけ攻撃するか?」

「引き離されていては、我々でも何も出来ませんね」

「あ~~、もう!!こんなことに大切な魔弾を使うなんて!!いい、一気に距離を詰めるわよ!!」


 そう言うとリオーシュは、顔の前に銃を構えた。すると、緑の魔力が銃のシリンダーに集まっていく。そして弾丸を形成し始めた。


「エア!!エア!!エア!!エア!!エア!!エア!!」


 六つの銃弾がシリンダーに収まるとリオーシュは、シリンダーを回す。すると六発の弾丸が回転に合わせて融合し、一発の銃弾となった。


「遥かなる風よ!!大気を揺らし、巨悪を滅せ!!現れろ、ストームドラゴン!!!!」


 車外に向けて窓からリオーシュは銃弾を放つ。すると、銃弾が閃光を放って緑色の巨大な龍へと変身した。


「私はストームドラゴンの制御に集中するから、攻撃をお願い!!」

「了解」

「了解」


 ストームドラゴンが車の後ろに手を添えて押し始める。車はストームドラゴンの速度に合わせて急加速し、前方を走るノーマンと球体に追いつき始めた。


「アマナ!!」

「ロギるん、支えて」

「了解」

「もう外さない」


 再び窓から身を乗り出してアマナは弓を構える。そして矢を射放った。空中で拡散した無数の矢が、前方を走る銀の球体に迫っていく。そして、その体に尽く命中した。


「があああああああ!!!!痛ええええええええええ!!!!俺の最高の肉体がああああああ!!!!」

「いい加減諦めたら、どうだ!!!!」


 ノーマンが剣でなぎ払う。しかし、その斬撃を球体は自分から二つに分かれることで躱した。


「ひっひっ、いい気になっていられるのも今のうちだ!!街につけば、大量の人間がいる」

「だからどうした!!」

「この世で一番魔力を持っているのは魔獣だが、二番目は人間だ。そんな人間を大量に殺せば、俺は莫大な魔力を直接手に入れることが出来る!!!!」

「……人から魔力を吸い上げようっていうのか!?」

「ああ、そうだ!!そうすれば、俺の体は一段階さらに上に上がる!!お前たちは、その時に殺してやるよ!!!!」

「させるわけねぇだろうが!!!!」


 ノーマンが力任せに剣を振るう。だが、その斬撃をあっさりと球体は避けた。


「止めてみろよ、レギオン!!止められるもんならな!!!!」

「止めるに決まってるだろうが!!!!」

「ああ、そうだな」


 ノーマンの後方から黒い何かが伸びてきて銀色の球体に迫っていく。それは、球体の肉体を僅かにだが切り裂いて球体の動きを鈍らせた。


「ふむ。ソフィーのしっぽでは、今回は余り効果は期待できないか」

「待たせたな、ノーマン」

「お待たせいたしました」

「おう!!待ってたぜ!!」


 ストームドラゴンに押されて車とバイクがノーマンの後方に並ぶ。それに合わせてアマナが緑の矢を次々に連射した。


「ちっ!!鬱陶しいな!!」

「ちょっとずつだが確実に効いてるな」

「このまま押していくぞ」

「おう!!」


 ノーマンも足に力を入れて速度をやや上げる。その前方には、整備されていないデコボコとした悪路が迫ってきていた。



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