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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
4章 疾走
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接敵

 一時間後、誰に言われるでもなくロギルは、仮眠から目覚めた。倒木の上で体を起こすとロギルは伸びをする。そして異常がないか辺りを見回した。


 ふと見るとアマナが楽しそうに網の上に置いた金属製のカップを見つめている。どうやら暖かいお茶を飲むつもりらしい。その姿から異常はないのだろうとロギルは考えた。


「で、どんな感じ?」


 ロギルがそう考えたと同時にリオーシュが起き上がって尋ねる。その声にアマナが反応してカップを布で覆って手に取りながら答えた。


「やっぱり今のところ動きはなくなったな。やはり休みが必要らしい。あの人外な姿でも夜通し走るというわけには行かないみたいだ」

「そう聞くとまだちゃんとした生物って感じがするわね。進路は大丈夫?ちゃんとこっちに来てる?」

「ああ、間違いなくこっち側に来てる。途中の細道を北側に行くと別の地域だったんだがな。ついてない」

「まぁ、こっちのほうが大きな街があるから」

「街を目掛けてきてるっていうのか?殺戮をわざわざする為に?」

「それしかないでしょ。まぁ、適当にまっすぐ走ってるって言うのなら別だけど」


 リオーシュは、そう言いながら銃の手入れを始めた。胸元から数発の弾丸を取り出すとリオーシュは、切り株の上に置いた銃の横にそれを置いて銃の分解を始める。弾を横目に銃の部品をリオーシュは清掃しながら魔力で新たに弾丸を作り始めた。切り株の上に光が輝くと一発の新たな弾丸が生まれる。その光景を見ながらロギルは倒木から立ち上がった。


「ノーマン達はどこだ?」

「道の方に出てる。ちょっと見ておきたいんだって」

「俺も行ってくるよ」

「うん。分かった」


 アマナにそれだけ言うとロギルは、道の方へと足を動かす。月明かりを頼りに雑草地帯を進んでいくと踏みならされて草が消えた一本の道へとたどり着いた。


「よう、ロギル先生。こっちは異常なしだぜ」

「お疲れ様です」


 道の上に道を塞ぐように一本の倒木が置かれている。その上にノーマンは、座って道の先を見つめていた。


「どうですか、ここは?」

「ああ、虫がやっぱり多いかな。野生動物は、それ程この辺にはいないみたいだ。きっとあっちの山の中にでもいるんだろうな」

「なるほど。レドリア先生は?」

「ちょっと体を動かしてくるって山の方に行ったよ。狩りでもしてるのかもな」

「食料の現地調達ですか。まぁ、悪いとは言わないですが」

「敵もまだ来ないみたいだしいいんじゃないの?それに、レドリア先生には、レドリア先生の戦うための準備ってもんがあるはずだ。それが事前運動だって言うならさせてあげるべきだと思いますよ」

「そうですね。時間もあるから大丈夫ですか」


 ノーマンは、倒木の上でロギルを見ると倒木に座るよう進める。それを見て、空いているスペースにロギルも腰を下ろした。


「ノーマン先生は、準備運動はされないんですか?」

「あ~~、俺は、いつでも戦えるというか。確かにある程度動いてからの方が動きは良くなるでしょうが、そこまで準備してから挑んでも結果はあまり変わらない気がするんですよね。この体は、多分俺の対応できる範囲のことであればどこまでもついてくるでしょう。そういう実力をつけたはずですから」

「なるほど」

「ロギル先生は、どうですか?」

「俺は、修行していた時は300人を相手にひたすら戦うということをしていました。その大群を真正面から突っ切って一番強いやつを倒す。そう言う訓練をしていたものですから、相手が一人だと思うと落ち着いた気持ちで挑めるので、自身を高ぶらせる必要はないかなと思いますね」

「……それはまた、恐ろしい修行ですね」

「ええ。いつも顔から足先までボロボロになっていました。今となってはいい思い出です」

「いいんですか、それ?」

「ええ、多分この先を考えるとそうなると思います」


 ロギルは、道の先を見つめながらそう答えた。

 

「……この先か。やっぱり穏やかには過ごせないですかね」

「魔法実験で街一つが容易く消える時代です。俺たちには、無理でしょうね」

「ですか」


 ロギルとノーマンが見つめる道の向こう。その先で何かが動いている。目を凝らすと、鹿を担いだレドリアが笑顔でこちらに手を振っていた。


「仕留めたみたいですね」

「いい笑顔ですな」

「……捌いて夜食にでもしますか」

「……なぁ、ロギル先生」

「?」


 倒木から立ち上がるロギルにノーマンは、声をかけて引き止める。


「俺さ、今まで一人で戦うことしかなかったんだ。レドリア先生と共闘も少ししたけど、個人どうしでの戦いしかしてこなかった。だけど、今回はチームだ。上手くやれるかその、心配でさ」

「……」

「いや~~、いい大きさの子が取れましたよ」


 そう言ってレドリアは、ロギルに鹿を渡す。それを、ロギルは無言で受け取って担いだ。


「ノーマン先生」

「ああ」

「ここにいるのは、選ばれた力を持つ者です。そして、貴方もその一人だ。俺達なら相手の動きを見てどう行動したらいいのかなんとなく分かるはずです。それをすればいい。それだけですよ」

「……なるほど。分かりました」

「取り敢えず、血抜きをしましょうか」

「あ、私絞りますよ」

「絞る?」


 その後、鹿を涼しい顔で雑巾のように絞るレドリアを見てロギルとノーマンは、冷ややかな目でレドリアを見つめた。


 鹿の肉を焼いて摘みつつ見張りを交代しながら朝を迎える。朝日が登るとリオーシュがスープを新たに作って全員で朝食を取った。その後、アマナが目で敵の位置を探る。


「……動き始めたな」

「あっちは間に合う?」

「馬で夜通し頑張ったみたいだが無理だな」

「そう。来るってことね」

「残念ながら、確実にな」

「なら、私達も行きましょうか」


 そう言ってリオーシュは、片付けを始める。


「ここで迎え撃つんじゃないのか?」

「ここは罠を張るだけ。迎え撃つのは、もうちょっと先よ」

「接敵は早いほうがいいだろう。あいつがどこまで動けるか分からないからな。先にある程度見れる方がいい」

「ここには、足止め用の魔法をいくつか張ってあります。何があっても最悪一回は、敵の動きを止められるでしょう。そう考えると前に出たほうが今はいいでしょうね」

「レシアの言うとおりね。さて、皆片付けたら出発するわよ」

「了解」

「残った鹿肉は?」

「置いていくわよ。車を重くしたくないもの」

「勿体無い」


 火を消して鍋などを片付けると、六人は乗り物に乗り込んだ。レシアは、乗ってきたバイクに。車には、残りの五人が乗り込んだ。運転席にリオーシュ、後部座席にノーマンとレドリア、そして助手席にアマナとロギルが乗り込んだ。


「……なぜ俺の上にわざわざ座る」

「だって、あっちの乗り物長時間乗るのだるいんだもん」

「確かにあの後ろに跨って座ってるのは辛いかもね」

「すまんロギるん。我慢してくれ」

「まぁ、いいけどな」

「じゃあ、行きましょうか」


 車とバイクのエンジンが鳴り響く。二つの乗り物は、移動速度を合わせて道を進み始めた。


「目標との距離は?」

「まだ十分あるぞ」

「そう。なら境界ギリギリまで行けそうね」

「大丈夫だと思う」


 何事もなく山道を超えて一直線の長い道のある平野に出た。そこの中腹でリオーシュ達は足を止める。


「山小屋があるな」

「そこがここの監視施設。今は人はいないはずよ。撤退命令が出てるから」

「なら好きに暴れられるってわけだ」

「そういうこと」


 しばらく車内でリオーシュ達は過ごす。ずっと上に乗せとくと足がしびれるので、ロギルとアマナはそろって車外に出て道の先を見ていた。


「……来るぞ」

「乗って」


 ロギルとアマナは車に乗り込む。そして窓を開けるとアマナは、身を乗り出した。その瞬間、前方の道から土煙が近づいてきているのが肉眼で確認できる。


「目標補足」

「構え」


 アマナが、弓を出現させて矢をつがえて構える。それと同時にリオーシュとレシアは、エンジンを始動させた。


「3割」


 アマナの矢が、言葉と共に太く大きく変化する。


「さて、始めましょうか。チームでの初めての総力戦ね」

「わくわくするな!!」

「俺はしない」

「俺も」

「私もです」

「みんなノリが悪いな!!」

「まだよ、もう少し引きつけて」


 何かが近づいて来る。それが肉眼で転がる銀色の玉であると確認できた時、リオーシュはアマナを見つめた。


「……一撃で仕留めてもいいわよ」

「了解」


 アマナが弓を大きく引く。そしてその矢を、目の前の球体目掛けて放った。緑色の閃光が空中を走って球体へと飛んでいく。その矢が球体に突き刺さろうとした瞬間、球体が矢の接触しそうな部分だけを溶かして割れた。


「……ちっ、避けやがった」


 すぐさまアマナは、何度も矢をつがえて射出する。だが、そのことごとくを球体は、形状を変化させてよけ続けた。そして、歩みを止めることなくこちらへと近づいて来る。


「まるで液体ね」

「どう対処する?」

「決まってるじゃない」


 リオーシュは、車のアクセルを力いっぱい踏み込んだ。


「力づくでよ」

「……了解」


 車体を揺さぶらせて車とバイクが走り出す。全員が目つきを変えて目の前の銀色の球体を見据えた。



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