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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
4章 疾走
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野宿

 ロギルとリオーシュは、その後学校に帰る途中で出張に備えての食材を買い込んだ。長期の滞在にはならないだろうが、相手が予想通りの動きをするとも限らない。そう考えた二人は、予定の滞在日数よりも少し多めに食材を持っていくことにした。


「さて、帰りましょうか」

「ああ」

「……」


 流石に食材を買っている間は、ソフィーはロギルに抱きつくのをやめていた。しかし、リオーシュと何を買うか相談しているとロギルはソフィーの視線が何故か背中に刺さってきているのを感じた。だがその理由を聞く気にもなれず、ロギル達はそのまま学校へと帰宅した。


「よし」

「準備する?」

「ああ」


 リオーシュと別れて家に戻ったロギルは、早速出張の準備を始める。治療道具、食材、最低限の衣類を選ぶとリュックに詰め込んだ。


「まぁ、これでいいだろ」

「そうだね。無くなったらダンタリオン先生に頼めばいいし」

「そうだな。先生にあまり負担はかけたくないけど」


 準備を終えると二人は、食堂で食事を行って軽く体を動かすと眠りについてその日を終えた。翌朝、ロギルは黒いスーツに身を包んでリュックを背負い、コートを片手に持って相談室へと向かった。


「おっはようううう、ロギル!!!!」

「うん、おはよう」


 ロギルは少し早めに来たつもりであったが、相談室の前には既にサシャがいた。ソフィーも連れて三人で相談室へと入る。急な出張なのでロギルは、朝のうちに相談室ですることの業務説明をもう一度確認のために行うと相談室の鍵をサシャへと渡した。


「なくさないでくれよ」

「勿論!!」


 サシャは、大事そうに鍵に頬ずりすると鍵をカバンにしまう。そしてロギルに向き直った。


「そう言えばロギルって、この学校に住んでるんだよね?」

「ああ、そうだ」

「それってさ、どこに住んでるの?ほら、鍵とか急な都合で取りに行かないといけないとかだと場所知ってたほうがよくない?」

「……それもそうだな」

「いや、教えないほうがいい」


 ソフィーは、ロギルを見つめて真面目な顔でそういった。


「えっと、なんでかなソフィーちゃん?」

「あんた、絶対休みの日に遊びに来たとか言って来る気でしょ!!私には分かる!!」

「……えっと、なんのことかな?そ、そそ、ソンナコトソンナニシナイヨ。月3くらいだよ」

「それってほぼ毎週なんだけど」

「と、友達の家に遊びに行くのなんて普通だよ。普通」

「へ~~、なら酔っ払っちゃって帰れないから泊めてとか言い出さないってことね」

「……で、でも私もロギルと飲み明かしとかしてみたいしなぁ~。修行してた時の話とか聞きたいし

「ご主人様、こいつはご主人様を食べる気です。言わないほうがいいですよ」

「ちょっと、なんでそうなるの!!なんで!!」


 顔を赤くしてサシャは、ソフィーに反論する。その顔に説得力という言葉はなかった。


「……だが同じ仕事をしているんだ。教えておいたほうが都合がいいのも事実だな。鍵は、学校に預けてどっちかが休んでも取れるようにすればいいが、それ以外の緊急時がないとも言えないからな」

「この前みたいに?」

「ああ」


 ロギルは、街全体が眠りに包まれていた時のことを思い出していた。


「この子だけ大丈夫で、ご主人様が起きれないってことはないと思いますけど?」

「サシャが早めに異変に気づく場合だってある。その時、俺の居場所くらいは分かったほうがいいだろう。リオーシュの居場所も休みの日となると分からないからな」

「リーダーの居場所が秘密って組織として面倒なだけだと思うけど、ここではそうじゃないとダメってことなのよね」

「ああ。リオーシュは、俺達の中で唯一上との接触をしている。その事実はあってはならないし、リオーシュの口から漏れてもいけない。だからリオーシュは居場所を喋らない。自身の部屋や自分が狙われる危険を考えてな」

「ならしょうがないか」


 ロギルは、サシャに自身の住んでいる場所の説明をする。その説明を聞くとサシャは、嬉しそうに了解しました。と言った。


「あ~~あ、教えちゃった」

「そんなに嫌だったのか?」

「私達の愛の巣なのに」

「愛の巣なんてものじゃないだろ」

「ぶ~~」


 ロギルの言葉にソフィーは、不満顔で答えた。その後、相談室の仕事を片付けながら11時までロギル達は相談室で過ごした。その後、早めに昼食を食べるためにソフィーとロギルは、サシャと別れて食堂へと向かう。食事を終えて一旦相談室へと帰ると二人は12時近くまで相談室で過ごし、近くになると荷物を持って校長室へと移動した。


「お、ロギル先生来ましたか」

「どうも」

「ノーマン先生、レドリア先生。お待たせしましたか?」

「いや、俺達も今来たとこですよ」

「ええ」


 ロギルと同じように校長室の前には黒いスーツとコートを着たノーマンとレドリアが居た。二人はそれぞれリュックを持っている。二人の荷物を眺めるとソフィーは、何も言わずにロギルの中へとその姿を戻した。


「今の子、ロギル先生の?」

「ええ、仲間です」

「へぇ~~、うちの生徒かと思いましたよ」

「ああいった聖獣もいらっしゃるのですね」

「ええ、まぁ」


 ソフィーは聖獣では無いが、ロギルは説明するのも面倒だったので適当にそのまま会話を流した。その瞬間、校長室のドアが内側から開かれる。


「さて」


 黒いスーツと黒いコート。そして大きめのバッグを持ったリオーシュが校長室から出てきた。そしてそのタイミングでお昼を告げるチャイムが校内に鳴り響く。


「行きましょうか」

「……ああ」

「おう」

「はい」


 四人は、リオーシュの車が止めてある車庫へと向かう。そして車に荷物を詰め込んで乗り込むと、目的地へ向けて出発した。


「ちょっと長いドライブになりそうね」


 リオーシュの言葉通り、車であっても目的地までの距離は長く、ノーマンは体力を温存するためにすぐに寝てしまった。レドリアは、ノーマンの隣で静かに本を読んでいる。ロギルは、助手席で一応周囲の警戒をしていた。


「そろそろ街の外ね」


 リオーシュは、都市を覆う壁の門に近づくとこちらに駆け寄ってきた兵士に通行証を見せる。すると、道が開けられて車が通れるスペースが作られた。兵士に再度挨拶するとリオーシュは、車を動かして都市の外へと走らせる。その光景を、都市に入ろうとしていた人達が物珍しげに見ていた。


「やっぱり車が珍しいんだな」

「そうね。まだあんまり走ってないから。でも最近は増えてきたみたいよ。車の保有者」

「そうなのか?」

「ええ。既に100台は売れてるんですって。時期に車が街中を走ってるのが当たり前になるでしょうね」

「もうこんなのが100台も走ってるのか?はぁ~~、すごいな」

「でも便利でしょ。実際」

「違いない」


 雑談をしながら車は、人が通るために辛うじて整備された道を進んでいく。車体を揺らしながら進むこと三時間後、黒いコートを着た二人の人物が四人を出迎えた。


「待ってたぞ、ロギるん」

「おう、状況はどうだ?」

「結構なペースで相手はこちらに来ている。でも休む必要があるみたいでここに来るのは明日の朝になりそうだな」

「じゃあ今夜は、ここで野宿か」

「うむ。既に火はつけてある。さぁさぁ、こちらに」

「おう」


 アマナに案内されてロギルは火の近くに行くと、そこに置かれていた木の倒木に座った。そしてその隣にアマナが素早く座る。


「ところでロギル先生」

「なんだ?」

「お腹空かない?」

「……」


 ロギルは、カバンから塩を振った豚肉を取り出すとその一部を近くにあった枝を削って作った串に刺して焚き火の近くに置いた。


「お~~」

「少し待てよ。生焼けは体に悪い」

「分かってるって!!流石ロギル先生、太っ腹!!」


 アマナは、目を輝かせて豚串が焼けるのをジッと見つめて待ち始めた。


「それよりも早く焼く方法があるわよ」


 そう言って近づいてきたリオーシュは、焚き火の上に足のついた金属製の網をセットする。


「これでこの網の上でお肉と野菜が焼けるってわけ」

「お~~、凄いな!!」

「さらにこの網の上にお鍋をドーン!!」


 網の上に鍋を乗せたリオーシュは、その中に魔法で水を作って注ぎ込み野菜と肉をぶち込んでいく。そして持ってきていた塩や香辛料を加えて味を調え始めた。


「お~~、すっげえええ~~!!!!」

「野外でもいい物食べたいじゃない。だから、こうやって準備して来たってわけ」

「私達なんか、昨日は味気ない肉と生野菜とパンだけだぞ。なのにスープが飲めるなんて最高じゃん!!」

「でしょ。持ってきて良かったわ」

「ほら、肉焼けたぞ」


 網の上で焼いた豚串をロギルは、アマナへと渡す。それを受け取るとアマナは嬉しそうにかぶりついた。


「うみゃあああい!!!!」

「……よっぽど腹が空いてたのか?」

「本来は偵察だけの気持ちで来ましたので、アマナちゃんは余り食料を持ってこなかったみたいなんです」

「隣のレギオンどもめ、ちゃんと仕留めろよな。私の期待を裏切られた。もむもむ」

「俺達も人間だ。そんな時もある」

「ふあ~~~っ。よく寝た。俺も飯作らせてくれ」

「私も、良ければパンを焼かせていただけますか?」

「ええ、網の端を使って。今夜は交代で見張りながら夜を明かすわ。組み分けは、キャスターとアーチャー、バーサーカーとブレイダー、そして私とサモナーね。最初はキャスターとアーチャーに担当してもらうから二人は早めに食事をして休憩をとること。いいわね」

「了解」

「分かりました」


 リオーシュの作ったスープを皆で飲みながら早めの食事を終える。そして日が落ちてくると、辺り一面は動物の声のみが聞こえる薄暗い世界へと変わっていった。


「よし。見張り頑張るぞ!!」

「起きたか」

「うん!!」


 食事を終えると倒木の上で寝ていたアマナが目を覚ました。そして遠くを見つめる。


「未だこちらとは距離がある。やっぱり明日の朝になりそうだな」

「この一帯には、結界を張ってあるのよね?」

「ええ。一応足止め用のトラップもいくつか設置しておきました」

「準備は良さそうね。あとは待つだけか。じゃあ二人は見張りをお願い。一時間交代ね。ロギル、私達は今のうちに休むわよ」

「ああ」


 リオーシュの言葉を聞くとロギルは倒木の上で横になる。そして火の暖かさを感じながら目を閉じた。




 

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