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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
4章 疾走
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他所の軍団

 途中で待っていたソフィーとセシルと合流してロギルとサシャは、そのまま校長室へと向かった。


「なんでこんなにくっついてくるんだ?」

「なんでって、アピールだよ。アピール」

「アピール?」

「私が、誰を好きなのかってことのね」

「……恥ずかしいから、職場では控えて欲しいんだが」

「う~~ん、考慮はしてみようかな」

「考慮じゃなくて控えてもらえる。ロギル先生が困ってるから」

「ソフィーちゃんには、関係ないじゃん」

「あるわよ。私のロギル先生なんだから」


 ロギルの腕を掴んでいるサシャの腕の間にソフィーは割って入っていく。そしてあいたロギルの腕にソフィーは抱きついた。


「もう、じゃあ私は反対側に抱きつく」

「セシル、阻止して」

「ええっ!?」


 いきなりそう言われて驚いている間に、サシャはロギルの反対側の腕に抱きついた。


「……恥ずかしいって言ったよな」

「ロギル先生がはっきりと拒絶しないのがいけないんでしょ」

「ロギルは優しいからね」

「……はぁ」


 ため息を吐くと重い足取りでロギルは足を進めていき校長室の前へとたどり着いた。ドアの前で扉を叩いてノックする。


「うん?入っていいわよ」


 中からリオーシュの声が聞こえると、扉を開けて四人は中へと入っていった。


「失礼します」

「うん。ノーマン先生は、呼んでくれた?」

「ええ、言われた通りに」

「そう、助かったわ。今日別の先生がお休みでノーマン先生だけで全クラスの体育をやってたからなかなか話しかけづらくてね」

「アーマン先生は、お休みだったんですか?」

「ええ。なんでもご家族の一人がこの間の事件以降、半引きこもり状態になってしまったみたいで、その様子見に行くんですって」

「それは、大変ですね」

「今回の事件とご実家が別方向の地域で良かったわ。さて、時間的にはそろそろのはずだけど」


 そう言ってリオーシュは、部屋にある時計を眺める。すると、ロギル達の目の前に緑色の炎が出現した。


「あ~~、テステス。聞こえてるかな、ロギるん?」

「アマナか。聞こえてるぞ」


 緑色の炎からは、アマナの声が聞こえてきた。


「うむ。現在私とレシア先生は、遠出して境界の近くにいる。まぁ、あれがこっちに来た時の保険という奴だ。そうそうこっちにはこないと思うがな」

「何故そう言える?」

「あっちにも腕の立つ人達がいるからだぞ」

「……」

「それでアマナ。あなたの目には、何が写ってる?」

「う~~ん、鉄の塊だな。なんかトゲトゲしたやつ。それが道を猛スピードで転がりながら進んでるみたいだぞ」

「鉄の」

「塊?」

「率直に言って。それは人間なの?」

「……いや、およそ今のところは人には見えないな」

「魔獣、ということか」


 アマナの言葉にロギルは、腕を組んでその特徴を持つ魔獣に心当たりがないか考え始めた。

 

「だけどその進路の先には、いるんだなこれが」

「居るのか」

「誰がいるの?」

「誰かは分かんないけど、道の真ん中に一人おじいちゃんが座ってる。多分、只者じゃないぞ。お、そろそろぶつかるな」


 その男は、山と山の間に設けられた道の上にあぐらを組んで座っていた。周囲にはこの道以外に均された道はなく、大量の木々と石が進む者の行く手を阻む自然の防壁になっていた。故に、何かが真っ直ぐにこちらに向かってくるとすれば、ここを通らざるおえない。それが分かっているから男はそこで待っていた。


「……来たか」


 男の耳に聞きなれない音が聞こえ始める。その音に目を開けると、遠くから土を巻き上げて何かが接近してきているのが見えた。男は、それを見るとゆっくりと立ち上がる。


「すまん、追いつけそうもない」


 男の目の前にオレンジ色をした炎が現れた。その炎から男性の声が聞こえる。


「時間は稼いでおく。早く来いよ」


 男がそう言うと炎は消えた。


「さて」


 男性は、自然体で近づいてくる何かを待っている。そして程なくして男性の目の前高速で転がる何かが姿を現した。


「ああ?退けよ、ジジイ!!!!」


 その転がってくるなにかからそのような声が聞こえる。だが男性は、それに構うことなく腰を落として構えると、迫る鉄塊目掛けて何かを振り抜いた。


 ギィィンっと、金属がぶつかり合うような音がする。男性の腕にはいつの間にか剣が握られており、その剣に上に弾かれて鉄塊は空中へと浮いた。


「ほお?」

「硬いじゃないか。なかなかな」


 空中に浮いた鉄塊に向かって男性は向き直る。そして、構え直すとその場で腕を振るった。


「ふん!?」

「おっ?」


 一瞬のうちに放たれた斬撃が空中に浮いていた鉄塊を滅多打ちにする。何度かの横薙ぎの斬撃を左右からくらった鉄塊は空中でバウンドし、最後に空中へと飛んだ男性の切り下ろしを受けて地面へとめり込んだ。


「……へぇ、やるじゃないか爺さん。もしかして、あんたレギオンか?」

「爺さんではない。俺はまだ50だ。そして、レギオンを知っているお前を殺さなくてはならない」


 地面にめり込んだ鉄塊が開いて立ち上がる。少し離れた地点に着地した男性がその顔を見ると、全身の皮膚が鉄とかしたような人間がそこには立っていた。


「問おう。お前は、人間なのか?」

「おいおい、この面が人間に見えるのか?とっくにやめたよ。そんな面白みのない生物は」

「元人間か」

「ああ、活かしてるだろ。全身凶器の鋼鉄ボディ~。あ~~、最高だぜ!!」

「……男性8名、女性4名。そして子供2名。貴様が殺したな?」

「あ~~、そんなに少なかったかな?でも、快適に走れてたしそんなもんなんだろうな」

「後悔すらないか」

「それはそうだろ。こんな鉄の塊が後ろから来てるんだぜ。避けるのが筋ってもんだ。避けない奴が悪い」

「お前は、故意に殺しに行かなかったとでも言うつもりか?」

「何言ってるんだ?目に付いたんだからこの体の威力を確かめるために試し切りするのは当たり前だろ?俺が行くところに丁度あいつらがいたんだ。それがいけないよな。俺の前に居たんだから」

「……分かった。お前はもう、人ではない」

「理解するのが遅くないか?年じゃないの、爺さん」

「どうでもいい。お前は、俺が殺すからだ」


 男性が地面を蹴って一歩前に踏み出す。それだけで少し空いていた距離は一瞬のうちに縮まり、男性の振りかぶった剣が鉄の男へと近づいていた。


「へっ」


 男性の剣が鉄の男の顔の皮膚を切る。しかし、刃が擦れるような音はしたが鉄の男の顔には、傷一つついていなかった。


「俺を切るか。いいねぇ、楽しいよ」


 鉄の男の全身が波打って刃が浮きあがる。その刃の一つ一つが男性の剣を受け止めて斬撃によるダメージを防いでいた。


「……」

「いいねぇ。やっぱりこうじゃないといけない。人間の身では到底起こせぬ芸当だ。ああ、やっぱりあれを使った判断は間違っていなかった。人間は、最早時代国れの生物なんだろうな」

「何を言っている?」

「人の脆さを噛み締めてるんだよ。ほら、あんたは俺と違ってこんなことは出来やしない」

「だからなんだと言うんだ?」

「人間は俺の下にいるんだよ。分かるか、この意味が?」

「その程度の力で人間を超えた気になっているのなら」

「うん?」

「お前のほうが浅はかだ」


 男性の剣が煌く。そして男性がその剣を投げると、その剣に接触した鉄の男に大きな電気が流れた。


「うおおおおお!?」

「人間には、無数の力がある。それをお前は知らなかったのか?」

「いや、知ってたさ。でもこの程度だろ?」


 小刻みに震えていた鉄の男の体が止まる。どうやらあまりダメージは与えられていないようだ。


「……仕方ない」

「どうするって言うんだ?」

「力押しになるが。切るしかないだろうな」

「おいおい、俺の体を見ろよ。切れないって分からないのか?」


 再度腰を落として男性が構える。そして躊躇いなく剣を振り抜くと、鉄の男の顔周りの刃が切り裂かれて地面に落ちた。


「切れないとでも?」

「面白いじゃん」


 鉄の男が両手を剣に変えて男性へと近づいていく。男性も足を止めて敵が近づいてくるのを待った。そして、お互いが間合いに到達した瞬間、二人は足を止めてその場で斬り合い始めた。


「ヒャッハアアアアアアアアアア!!!!」

「っ!!」


 男性は一本の剣を、鉄の男は体から無数の剣を作り出して男性に切りかかていく。しかし、男性はその刃の尽くを自身の剣で切り落として捌いていった。


「おもしれぇ!!!!おもしれぇよ!!!!」

「……」


 切り合って一分が経過しようとしているが二人の動きは止まることがない。男性の方が押しているようにも見えるが、一本の剣で無数の剣を捌き続けるのは無理があり、とてもではないが長時間相手にしていることはできない。男性は隙を見せまいと今は呼吸する隙すら抑えている。無呼吸状態に近い状態で男性は剣を振るい続けていて、内心では苦しい状態に追い込まれつつあった。


「どうしたどうしたどうした!!!!」


 鉄の男の剣捌きは、雑ながら致命傷を打たせまいと男性の剣をうまく攻撃で潰していた。この男には、自分の剣の動きが見えている。そう考えた男性は、迂闊な大ぶりも放つことが出きず攻めあぐねていた。


「俺から逃げなかったのは褒めてやる。だがな、お前は、ここで死ぬんだよ!!俺に切り裂かれて!!!!」


 男性の足が一歩後ずさる。それを見ると鉄の男の攻撃が早さを増した。男性の体勢が徐々に崩れ始める。しかし、その中で男性は笑っていた。


「……何がおかしい?」

「聞こえないのか、お前の耳には?」

「あん?」


 男性の背後。そこからなにかの音が聞こえる。それは馬が近づいてくる音であった。


「そのまま押さえてろ!!」


 馬の乗っていた男性が銃を抜いて撃ち放った。その弾丸は、鉄の男の頬をえぐって貫通する。


「ちっ!!!!」


 鉄の男は飛び退く。だがすぐさま飛び退いた位置に弾丸の雨が飛んできた。


「おいおい、割り込みは卑怯だろ」

「悪いが、これがうちのやり方だ」

「糞が。相手にしてられるか!!」


 体中に生えた刃を鉄の男は振るって投げ飛ばしてくる。その攻撃を受けて男性たちが怯んでいる瞬間に、鉄の男は体を丸めて転がり始めた。


「逃げるつもりか!?」

「当たり前だろ。俺はまだまだ殺したりないんだ。こんなところで終われるかよ!!」


 速さを上げて鉄の男は逃げていく。それを二人の男性は追っていったが、その距離は追えども開くばかりであった。


「……逃げに徹してきたな」

「で、どうなりそうだ?」

「今までのペースならもう一回は捕まえられるんじゃないか?」

「そうじゃなかったら?」

「こっちに着くな」

「……どうする?」

「逃げ腰の化物か。そうね、面倒だし全員で行きましょうか」


 そう言ってリオーシュは、席を立った。



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