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ラグナレク・レギオンズ  作者: 北都 流
2章 欲望
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2ヶ月の経過

「あの、私も助手ですし同行するんでしょうか?」

「セシルちゃんは、今回はお留守番ね。交換留学生の追加は、元から考えてなかったし。名目としては、我が校の導入したお悩み相談室。その効果を、そちらの学校でも試してみませんかって感じだからロギル先生に行ってもらうの。この表の名目が尽きると本当に全力で捜査することになるかもね」

「女学園まるごと更地にするのか?」

「その必要もあれば」

「……人が消え続けるよりはよしか」

「そうね。大したことがないなら良いんだけど、概ね人が消えるような事件は顛末がろくなことにならない気がするのよね。この前もそうでしょ。誰かがろくでもないことをし始めてる予兆」

「あり得るな」

「ま、取り敢えず一週間後にまた連絡するからそれまでは通常業務でお願いするわ」

「分かった」


 ロギルの返事を聞くとリオーシュは、椅子から立ち上がる。


「さて、帰りましょうか」

「はい。お疲れさまです」

「お疲れ様」

「気をつけてねセシルちゃん」

「はい」


 四人揃って校長室を出ていく。校門へと早足で向かうセシルを見送ってロギル、ソフィーとリオーシュは、学食へと移動し始めた。


「う~ん、お腹減った」

「校長が威厳のない発言していいの?」

「あらソフィー、校長だってお腹が空くの。当たり前じゃない」

「威厳を保とうとはしないわけね」

「だいたい校長って年齢じゃ無いのよ私。仕事はこなせるけど、この重圧にはまだ慣れなさそうね」

「……校長もストレス解消が必要か?」

「ふふっ、大丈夫。私、撃ちっぱなし出来るから。だいたいのことはあれでスッキリ」

「なら良いか」


 レギオンの拠点施設には、地下に訓練場が設けられている。そこでレギオンのメンバーや、下部組織の人員は日々の訓練を積んでいた。


「う~~ん、今日は野菜多めの気分」

「私は、お肉!!」

「俺もそうするか」


 食堂で晩御飯を食べ、訓練場で軽く運動をし明日に備える。ロギル達の日常は、この二ヶ月で一定のサイクルに固定されつつあった。


「……ふむ」


 リオーシュと別れてロギルは、自室の隠し通路から集会場に降りて地下の訓練施設へと移動する。そこでするのは、主に筋力トレーニングであった。決して召喚に属する魔法は使わない。レギオンの魔法は、重要機密でもある。何度も見られたからと言って真似できるものではないがロギルは、人目に魔法を晒すのを必要である場合のみ避けるようにしていた。


「よし」


 腕立てやスクワットなどの動きを終えるとロギルは、地下にある訓練場の外周をランニングする。それを、普通の人であるのならばかなりのハイペースかつ長時間毎日行っていた。だがその程度では、ロギルの呼吸は乱れない。


「いや~~、ロギル先生もやるね」

「多くの職員が息切れする中、涼しい顔で走り続けている。流石です」

「……確か、体育と文学の」

「そう、体育のノーマン・ステイラス」

「文学のレドリア・テークルスです。ご一緒しても?」

「ええ、良いですよ」


 2人の男性がロギルの走りに合わせてついてくる。その動きには、ブレがなくロギルとともに走っていても無理をしているようには感じない。


「やっぱり人と一緒に走ると違うなぁ」

「そうですね。いつもなら軽くで済ませてしまうのですが張り合いが出ます」

「……お二人共、学園の仕事には慣れましたか?」

「ええ、やっとというべきでしょうか。始めの頃は、勝手が分からなくて同僚と生徒に無理をさせたかもしれません」

「私も文学のことを考えると少し喋りすぎてしまって。今は、時間内に授業過程の範囲を進めることを念頭に置いて進めています」

「俺は、まだ慣れませんね」


 そうロギルは言うと走るスピードを上げた。しかし、2人は涼しい顔でついてくる。


「足が温まってきましたね。ロギル先生は、もうすでに多くの実績を残されているじゃないですか。凄いと思いますよ」

「ええ、私も噂を聞きました」

「なんでも話下手な生徒のコミュニケーション能力向上を手助けされたとか」

「ええ、そうですね。二週間程かかりましたが、彼にも友達が出来たようです。ほんと良かったですよ」

「私達では、生徒にそこまでのアドバイスをしてあげられませんからね。ロギル先生のお仕事のおかげで特定のクラスの雰囲気が良くなったように感じます」

「そう、それですよ!!いやぁ~~、本当に助かります。俺達も仕事がしやすくなりますし」

「お役にたててるなら良かったですよ」


 話しながらも3人はスピードを上げていく。その姿を、一般職員が呆れた顔で見ていた。


「……なんだあいつら」

「なんであの速度で話す余裕がある」


 その後も雑談しながら3人は、速度を上げながら走り続けた。


「……ふぅ。そろそろ私は上がりますよ」

「お、お疲れさまです。俺は、もうちょっと走っていきますよ。もっと速度上げて走りたいので」

「俺も上がろうかな。明日もあるし」

「ロギル先生もお疲れさまです」

「お疲れさまです、ノーマン先生、レドリア先生」

「レドで結構ですよロギル先生。では、二人共お疲れさまです」

「あ、お二人に最後にお聞きしたいんですが」

「えっ?」

「なんでしょうか?」

「この前の件。事後調査を担当されたのは、お二人でしたよね。どうでしたか?」


 ロギルは、2人の顔を見つめる。すると二人共笑みを浮かべた。


「残されたものから連中の会っていた施設らしきところを見つけたんですが」

「もぬけの殻でした」

「少しは、良い運動ができるかと思ったんですがね。期待はずれでしたよ」


 ロギル達が解決した生徒行方不明事件。その事後調査を引き継いだレギオンのメンバーは、ブレイダーとバーサーカーであった。


「これからもよろしくおねがいしますよ、ロギル先生」

「お互い苦労することもあるかと思いますが」

「ええ、よろしくお願いします」


 2人と握手してロギルは部屋に帰る。シャワーを浴びると身体の疲労に身を委ねてロギルは、ソフィーと共に寝た。


朝、何事もなければ目が覚める。目が覚めてすぐにロギルがすることは、顔を水で洗うことだ。その後、身体を動かして異常がないかの確認と疲労度を把握する。それが終わると着替えてソフィーを起こし食堂に向かうことにしていた。


「う~~ん、毎朝運動するのよく飽きないね」

「これをすると一日の身体の保ちが違う。やらない理由がない」

「運動をしてるのにやる気がでるの?」

「ああ。過度な運動は、眠気や疲労につながるが。俺が朝やってる程度ならむしろ身体が日中動かしやすくなって丁度いい。よく寝ているから眠気も来ない」

「ふ~ん、不思議」

「相談室で筋トレをするわけにもいかないからな。朝が一番都合がいいんだ」

「だから朝もガッツリ食べるんだね。私は、軽くでいいんだけど」

「俺の都合だ。気にするな」


 二人で食事を終えると仕事場に移動する。ロギルは、今までに受けた相談とその解決までの内容を細かく資料に記載してまとめ始めた。ソフィーは、手を光らせて本を出現させるとそれを読み始めた。その本は、人の言語で書かれていなかった。


「ロギル先生、いらっしゃいますか?」


 その声と同時にドアがノックされる。ドアが開くと、そこには濃い金髪の男が立っていた。ノーマン・ステイラス。体育の授業の担当教師であり、レギオンのメンバー。そのノーマンがわざわざやって来たことでロギルは少し身構える。


「……どうしました、ノーマン先生?」

「いや、その、申し訳ないんですが」


 ノーマンは、頭を掻きながらそう言う。そして目の前で手を合わせると頭を下げた。


「すいません、授業準備手伝ってもらえないですか!!」

「……良いですよ」


 ソフィーを留守番に残しロギルは、ノーマンと校庭に向かった。


「これを彼処に設置してですね」

「随分と大掛かりな準備ですね」

「ただ走るだけじゃつまらないところがありますからね。障害物を置いて色々な動きをさせたほうが身体のためにもなるし楽しいでしょ」

「そうですか」


 障害物のレイアウトをノーマンとロギルは相談しながら置いていく。その途中で一限目の授業が終わった。


「ロギル先生!!何やってらっしゃるんですか!!」

「おっ、ロビ君。ちょっとノーマン先生の手伝いでね」

「僕も手伝いますよ!!」

「いや、君は次の授業があるだろ」

「平気です!!ちょっとだけですけど手伝えます!!」

「ははっ、このハードル並べをお願いしていいかな?」

「はい、任せてください!!」

「……」


 そう言うと一人の男子生徒は、ロギルの作業を引き継いでハードルを並べ始めた。


「あれが俯きがちだったロビ君とは、本当に2週間前と変わりましたね」

「ええ、そうですね。それも彼に変わりたいという意思があったからです。それ無しでは、ここまでにはなれなかったでしょう」

「どうやったんです?」

「自信をつけるには、成功体験を増やすのが良いんです。あと筋肉を付けてもらって体力を上げたですかね」

「ああ、筋肉をつけるのは良いですね。走りすぎてハイになると口数も増える」

「人の殻を破るには、いい方法ですよ。疲れすぎて走る気力すらない場合以外はね」

「それと食欲ですな」

「ああ、それも大事ですね。疲れ過ぎて食べれないと疲れが溜まるだけですからね」

「彼は、うまくいったんですね」

「ええ」

「あっ、先生次の授業に行きます!!続き、頑張ってください!!」

「ああ、ありがとう!!」


 ロギルは、走って去るロビに手を振った。ロビもロギルに手を振り返すと振り返らずに走っていった。


「……これが青春ってやつなんですかね?」

「さぁ?俺には、なかった時期の言葉のように思います」

「あれ、ロギル先生ってオモテになるんでしょ?彼女くらいおられるんじゃ?」

「えっ、そうなんですか?」

「……え~~」


 ノーマンは、ロギルを信じられない者を見る目で見ていた。


「一部のクラスでは、話題ですよ。ロギル先生が良いって」

「良いとは?」

「生徒のちょっとしたことにも親密に答えてくれるし、頼りになるって言われてましたよ。一部生徒の態度も軟化して頂いたようで皆授業を受けやすくなったとか」

「まぁ、仕事ですからね」

「つまりそれだけ人気があるんですよ、先生は」

「と言われましても、モテてるのかと言うとそうでもない気が」

「そうなんですか?」


 ノーマンは意外そうに言う。


「ええ。先日も4人の生徒に勝手な物言いをして俺の考えを押し付けてしまいましたし。以前助けた生徒なんですが、時折キツイ目で睨まれることがあるほどでして」

「はぁ~~、大変なんですね」

(あの時の子確実に落ちてるし、キツイ目つきの子ってリータでしょ。完全にあれ、好意の目だと思うなぁ)


 だがロギルは、視線を合わせようとすると目を逸らされるので睨まれているのだと勘違いしていた。


「さて、あとはこの平均台を置いて終わりにしますかね」

「では運びましょうか」

「あ、一人でいけますよ」

「いや、一般人が一人で運べないでしょ」

「ああ、そんなもんですか」


 二人は、そう言いながら力を合わせて運ぶ。軽い。一人で運んだほうが楽。二人は、内心でそう思っていた。


「ふぅ、ありがとうございます。ロギル先生に手伝っていただけると助かりますよ。またお願いしてもいいですか?」

「ええ、でも少ししたら出張でいなくなるかもしれません。その時は、無理ですよ」

「えっ?」

「……なにか問題でも?」

「いや、それ期間を張り出して事前に生徒達にお知らせしといたほうが良いですよ。ロギル先生に相談に行こうかなって子たち多いみたいなんで」

「なるほど。分かりました、校長に話を通して検討しておきます」

「お願いします」


 そう言うとロギルは、相談室に戻っていった。


(ロギル先生がいなくなるとか、一部の生徒が荒れるんじゃないか?)

 

 ノーマンは、そんな気がかりを立ち去るロギルを見ながら考えてため息を吐いた。


「……まだ決まったわけでもないからな。ふむ。お知らせのポスターでも作って貼るか」

「はいはい!!ポスター私が作る!!」

「おっ、ソフィー頼めるか」

「任せといて!!」


 相談室に戻るとソフィーが出てくる。そして書類棚から色紙を取り出すとそれを切って貼ってポスターを作り始めた。


「出来た!!」

「放課後直前までかかったか」

「失礼します。あっ、ポスター出来ました?」

「うん、セシルちゃん。見る?」

「これは、なんというかコミカルですね」

「お知らせが暗くならないようにしたの。良いでしょ」


 デカデカとポスターには、色紙で相談室休止のお知らせと書かれている。内容には、具体的な期間とまだ予定であるという説明が書かれている。そして、デフォルメされたソフィーの似顔絵が切り絵で貼られていた。


「完璧!!」

「ちわ~~っす。うん、なにそれ?って、相談室休止!!!!」


 セシルの後に続いて入ってきたリータが、ポスターを見るなり声を張り上げる。


「嘘でしょ!!!!ロギル先生いなくなるの!!!!」

「リータ、声が大きいよ」

「だって!!これ、嘘でしょ……」

「一ヶ月だけだって。それにまだ予定だよ。予定」

「ほ、本当なんですかロギル先生?」

「ああ、校長に言われてね。他校で活動してみないかって言われたんだ」

「ダメ!!ダメです!!!!先生は、ここに居てください!!!!」

「いや、一ヶ月だけだからすぐに戻って来るよ」

「そうですけど。……嫌です」

「リータ、先生を困らせないの」

「むぅ」


 不満そうな顔をするリータの後ろで、誰かが尻餅をついた。それは、パセラ・デボリアであった。


「嘘。ロギル先生が、いなくなる……」


 パセラは、まるでこの世に終わりでも来たかのように顔を青くしていた。


「いや、予定だから。しかも一ヶ月で出張したとしても帰ってくるから」

「な、なんだ。そうでしたの。……取り乱しましたわ。ごめんなさい。あっ、でも足に力が」


 パセラは、腰が抜けたのか立ちづらそうにしている。それを見てロギルは、パセラに近づいてお姫様抱っこをした。


「あっ、先生!!」

「椅子に座らせるよ。大丈夫かな?」

「は、はい!!」


 頬を赤らめてパセラは喜びの声をあげる。


「チッ」


 それを見てリータは、聞こえないように舌打ちした。


「お知らせのポスター今のうちから作っといて正解だったね」

「そうだね」


 その光景を見てソフィーとセシルは、笑い合いながらそう言った。



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