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第1話

 人魚姫は、6人姉妹の末妹です。

 彼女は、人魚の王国の国王陛下と王妃様の間に産まれました。

 両親と5人の姉に可愛がられ、王国の中で、彼女は幸せに美しく成長しました。


 15歳の誕生日に、父である国王から、人魚姫は告げられました。

「15歳になったのだから、王国の外に遊びに行ってもいい。だが、王国の外で出会った人間を好きになってはいけない。所詮、人魚と人間は基本的には結ばれない運命なのだから」

「分かりました。お父様」

 人魚姫は、父にそう答えながら、初めて王国の外に出られることに、胸をときめかせました。


 幾ら大嵐が海上で荒れ狂っていても、海の中では静かなものです。

 人魚姫は、海上では大嵐が起こっていましたが、それを気にせず、王国の外に出かけることにしました。

 気ままに海中を泳いでいて、ふと海の上を仰ぎ見ると、大嵐のために人間の作った立派な帆船の帆柱が折れるのが目に入りました。

 優しい人魚姫は、思わず海上に向かいましたが、その間にも帆船は徐々に壊れていき、終にはバラバラになってしまいました。

 乗組員の多くは、壊れた帆船の板切れ等に捕まり、何とか助かろうとしています。

 人魚姫が、海上にたどりついたのは、その頃でした。

 とても、一人では全ての人は助けられません。


「せめて一人だけでも」

 そう思いながら、人魚姫が周囲を見回すと、意識を半ば失っている一人の品の良い自分と同年代の若い男性が目に入りました。

 幸いなことに、陸地が近くにあり、彼女の力で、その人を陸地まで運ぶことは可能なようです。


「この人を陸地まで運びましょう」

 人魚姫は、そう決意して、その若者を陸地まで運びました。

 ですが、若者を陸地まで運ぶのは、彼女の体にとっては思ったより重労働で、若者を陸地まで送り届けるだけで、彼女は疲労しきってしまいました。

 更に若者の体は濡れたことで冷え切っていました。

 人魚姫は、他の人を助けることを断念し、自分の手を尽くして、若者の体を温めることにしました。


 そうこうしている内に、帆船が難破したことに陸地にいた誰かが気が付いたのでしょう。

 多くの人が、こちらに駆けつけようとしている気配を人魚姫は感じました。

 後ろ髪を引かれる想いがしてなりませんでしたが、人魚姫は、若者の傍を離れて海に戻り、両親のいる王国に還りました。


 王国に帰った後、人魚姫は溜息を吐くことが増えました。

 なぜだろう、と姉達に人魚姫が聞くとその若者に恋をしたのでは、と姉達は言いました。

「でも、諦めなさい。人魚と人間は結ばれない宿命なのだから」

 姉達は人魚姫に忠告しました。


 しかし、そう言われると却って恋しさが募るものです。

 人魚姫が、周囲の人魚に何か方法は無いか、と尋ねていると、魔女が人魚を人間に変える魔法を知っている、と一人の人魚が口を滑らせてしまい、人魚姫は魔女に会いに行くことにしました。


「確かにその魔法は知っている。でも、不完全なものだ」

 魔女は気の毒そうに人魚姫に言いました。

「姿形は人間になるが、声が出なくなる。それでもいいのかい」

 人魚姫は恋に恋する有様でしたので、深く考えずにその魔法を受けてしまいました。


 人間の姿になった人魚姫は、その若者に会いに行こうとしました。

 人間の姿になって、その若者の噂に耳を傾けてみると、王太子とのことです。

 それなら、王宮に行けば会える、人魚姫は王宮に向かいました。


「身元の明らかでない者を、王宮に入れる訳にはいかん」

 王宮の門番は、人魚姫を王宮に入れませんでした。

 事情を説明しようにも、声が出ない人魚姫は困ってしまいました。

 その時、通りかかった宰相が声を掛けました。

「私のところに来なさい」

 人魚姫は、宰相の家に住むことになりました。

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