その名はライトニングガン
どうすればいいんだ。下手な答え方したら殺される、確実に。
「おい! 何してんだよてめえ!」
桜井が大和に向かって怒鳴った。やめろ、わざわざ喧嘩売るような真似をするな。
「俺はこいつが奪った銃を返してくれと頼んでるだけだぞ」
「奪った? 銃を? 何を言ってるんだ」
そう言ってから桜井は俺のほうを見たが、俺は何も言えなかった。
「九六式を返してくれりゃ何も手荒なことはしねえよ」
それが本当だとはとても思えない。しかし返さなかったらこいつは俺を殺すと言った。
……もう、こうするしかない。俺は九六式を取り出した。
「こいつを返せば、見逃してくれるっていうんですか」
「ああ、九六式を奪ったことと、うちのもん……金田と米沢を撃ったことは特別にチャラにしてやるよ」
そう言って大和はタバコを吸う。米沢ってのはあのゲイボルグのデブのことか?
チャラにするも何も、そもそも金田の野郎が父さんを撃ったんじゃないか。何様のつもりだよ。
「さあ、早くその銃を返せ」
「……わかりました」
九六式を大和に渡す。そう見せかけて、すばやく大和に銃口を向けて引き金を引いた。
だが銃弾は当たらなかった。大和は銃口の前から消え、右に動いていた。こいつ、いつの間に。
「桜井、こいつを倒すぞ!」
「わかった。その銃のこと、あとで聞かせてもらうぞ、纏!」
桜井は自分の目の前に来た大和に殴りかかった。だが大和はそれもかわす。そして桜井の体に銀色の銃を突き付けて引き金を引いた。
「ぐああっ!!」
大和の攻撃を受けた桜井は悲鳴を上げ動きを止めた。
「スタンガンか!?」
少しよろめいた桜井は後ずさりしつつ体勢を立て直した。
「まさかこの電圧でまだ立ってるとはな。褒めてやるよ」
「この野郎……!」
大和は新しいタバコに火をつけた。
なめやがって。タバコの煙を吐き出す大和に銃口を向け引き金を引いた。
「だから、当たんねえよ」
その言葉の通り九六式から放たれた銃弾は大和に当たらなかった。なんで避けられるんだ。金田にも米沢にも当てられたのに。
桜井はまた顔面に突きを繰り出す。だが大和はそれも易々とかわした。
「こんなガキに九六式を奪われるとは、金田もヤキが回ったか」
「金田、金田はどこにいる!?」
「なんでそれを答える必要がある。しかし神崎様の直々の命だから来たってのに、所詮この程度かよ」
誰だよ神崎って。そりゃ組織の人間だろうが、『様』なんて普通つけるか?
「纏、こいつは無理だ、倒せる相手じゃねえ。逃げるしか……」
桜井は後ろを向きふらつきながら走り出した。
嫌な予感がした。
「背中を向けるな! 桜井!!」
俺のほうに顔を向けた桜井に、大和はスタンガンの引き金を引いた。
何でそんな場所から引き金を引くんだよ。スタンガンは体にくっつけないと意味ないだろ。
だがその瞬間、大和のスタンガンから光が走り桜井に直撃した。
「があっ!?」
その光を受けた桜井はその場に崩れ落ちた。
今、何が起こった? スタンガンから電撃を飛ばすだと?
「これはスタンガンじゃない。ライトニングガンだ」
大和がライトニングガンと呼んだ銃。そこから放たれた閃光は、その名の通りまさに雷だった。なんだよそれ、いくらなんでもありえないだろ。
俺はまた引き金を引いたが、プシュンという音、九六式の発砲音はしなかった。弾切れ? こんなときに、冗談じゃない。
「もう少し楽しませてくれると思ってたんだがな。これで終わりだ」
大和はタバコの煙を吐き出して、右手に持った銃、ライトニングガンを俺に向けた。
殺される。
いやだ、死にたくない。
そう思った瞬間、周りに白い煙が舞い、何も見えなくなった。
「黒木!」
それは島本さんの声だった。俺は手を引っ張られそのまま走った。
煙から出ると、島本さんが俺の手を引き、右肩に桜井の体を担いでいた。182cmの男をそんな扱いにできるとは。
あたりを見回したが、大和の姿は見えなかった。
「さっきの煙は?」
「ああ、煙幕を使った。非常事態だったんでな」
グロックもそうだが、なんでそんなものを持ってるんだ、この人は。
島本さんのランエボが見えた。乗り込んでから島本さんはすぐにエンジンをかけ、シフトレバーを1速に入れて走り出した。
よかった、なんとか逃げ切れた。いや、桜井は無事なのか? 俺は後部座席に乗せられた桜井に顔を向けた。
「今からちょっと知り合いのとこに行く。そいつに桜井を診てもらう」
「知り合い?」
「ああ、昔医者だったやつがいてな」