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プロローグ
ゆらり、ゆらりと流れ行く。
いつか、こうなる日が来ると分かっていた。
覚悟はできていた筈だったのに、押し寄せる不安は消え去らない。
これから自分はどうなってしまうのだろうと、幾ら考えても答えは見つからなかった。
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目が覚めると、そこは小さな砂浜だった。
重い身体をゆっくりと起こすと、体中に着いた砂を払っていく。口の中にも砂が紛れていたのか、ペッと吐きだした。濡れた服はべったりと肌に張り付き、体温を奪っていく。
闇夜の中、さざ波の音だけが彼女の耳を掠めた。上を見上げれば一面の星空で、周囲に明かりらしきものはない。
「ここはどこ?」
ぼそりと呟く声は誰の耳にも届かない。辺りを見回すも、見えるのは暗闇ばかり。
疲れ切った身体を動かす気になれず、再び砂浜にぱたりと倒れ込む。ただ自分は助かったのだという事実が、眠りの底に導いていく。
彼女が深い眠りに落ちるとき、誰かの足音を聞いた気がした。