#.7
僕はずんずん歩いた。
ここは駅が近いため、祭りに行くらしい人がちらほら見えたりした。
無性にイライラする。こんなに怒りに似た感情を覚えたのは・・・
そういえば、今までにも何度もあった。菜月が誰かに頭を撫でられたりして、笑っているとき。僕以外の誰かと喋って、楽しそうにしているとき。
僕の中に安心して見守る気持ちと隣りあわせで、もやもやとしたものがあった。
それは僕をイライラさせるもので、嫉妬なのだと今ようやく思い立つ。
菜月の家に着くと、僕が鍵を持っていたので開けて、中に入った。
菜月の部屋に上がる。
そこでようやく、僕は菜月がヒトコトも喋っていないことに気がついた。
「菜つ・・・き・・・」
振り返るが、そこに菜月はいない。
台所にアイスを置きに行ったのだろうか・・・?
菜月が、1人で?
僕は階段を下り、台所に入る。
「・・・菜月?」
菜月は台所にいて、暗い中でアイスを冷凍庫に入れていた。
「電気つけないのか?」
僕は訊きながらスイッチを押す。
菜月は泣いていた。
「どうしたんだ菜月?!」
僕は慌てて駆け寄った。
菜月は肩を揺らしながら冷凍庫の扉を閉め、チョコなどを流し台の下に入れだした。
僕は恐怖と同種の不安にかられた。
「・・・菜月・・・?どう―――」
「あず・・・は・・・・・」
嗚咽を漏らし、菜月が口を開く。
「ん?」
「僕・・・が・・・・・面ど・・・なの?」
「・・・え?」
とんでもない言葉が飛び出す。
「ど、どうしたんだよいきなり?」
「だ・・て・・・・・さっき、コンビニ・・・で・・・言ってた・・・・・」
僕はコンビニでのことを思い返してみる。
「・・・菜月・・・分からないよ・・・教えて?」
「っ?!」
菜月が目を見開いて、真っ赤な顔を僕に向けた。
そしてキッと僕を睨み付けて、台所を走り去った。
「菜月!」
僕は慌てて追いかける。2階の方で乱暴にドアが閉められる音がする。
駆け上がって、ドアを開けようとする。
「だめ!!」
中から涙声で、菜月が叫んだ。僕の手が止まる。
「・・・明純・・・入っちゃダメ・・・」
すぐドア越しに聞こえる言葉に、僕は大人しく従った。
中から聞こえる嗚咽に、ギリギリと胸が締め付けられる。
僕は少しドアの前に座って、待つことにした。




