#.4
「お風呂楽しかったね〜♪」
「そうだね。」
なんとか上せずには済んだものの、泡を楽しむ菜月が暴れて大変だった。
まぁでも、慣れたものだ。
「あら、やっと上がったのねー。お風呂どうだったナツ?」
「気持ちよかったよ〜♪明純といっぱい泡で遊んだの!」
「そう、良かったわね。あっちゃん、ありがとね。」
「あ、いえ・・・」
まだ若い菜月の母親が微笑む。
リビングを見渡すと、母と姉の姿が無かった。
「あ、あの・・・」
「あぁ、2人ならこれから映画見に行って、明日から三連休だから旅行に行くって言ってたわよ?」
「え、あ・・・そうなんですか・・・。」
母と姉が突然出かけることは、もう昔からのことである。
「それでね、おばちゃんもお誘いしてもらっちゃったの〜。だからあっちゃん、家に泊まってくれないかな?」
「えっ・・・?」
これは予想外。
「で、でもそんな―――」
「あら、遠慮なんていらないわよ〜。昔から毎日のようにお互いの家に泊まってたじゃない。それに、あっちゃんがいてくれたらおばちゃん安心だわ〜。」
「明純、泊まるの〜?」
なんだこのダブル攻撃。
僕は一応微笑んでみるものの、内心困り果てた。
確かに前まではお風呂も泊まりも普通だった。
だけど菜月を好きになってから変に恥ずかしくて、なかなかできない。
「あ、お風呂上がってた?」
背後から突然母の声が聞こえて、俺はビックリして振り返った。
「か、母さん。なんで急に旅行なんて・・・」
「あら、前から言ってたじゃない。行くかも〜って。」
「不確かじゃないか。」
「何よアズ、あんた女3人のんびり楽しんできちゃダメだって言うの?」
姉まで参加してきた。
もうどうしようもない。
「・・・楽しんできてね。」
やった〜♪と、姉と両家の母が手を取り合って喜ぶ。
「じゃ、よろしくね♪」
そう言って3人はリビングを出て行った。
僕の家も菜月の家も片親だし、好きなことくらいしても良いと思っている。
だけど・・・なぜ・・・
「一緒に寝ようね?」
「う、うん・・・。」
なぜこの可愛い生き物を置いていく?
昔から菜月と僕はセットで、菜月の世話は僕がしていた。
だけど今は状況が違う。
・・・・・・でも・・・
「ま、いっか。」
いつも通りにすれば良い・・・か。
寿命が縮むかもしれないが。