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止まない雨

作者: 糸川草一郎

この社会で働く人へ。

生きていると

つめたい雨に濡れなければならないこともある

火の粉の降る道を

駈けてゆかなくてはならない時もある

よく晴れた日の午後

木枯らしの街の一角に

君は厳しい眼をして立ちつくしている

今や君は大人になった

自分らしい生き方とは身勝手に生きることではなく

この窮屈な世界のなかで

いかに自分らしく仕事をこなしてゆくかにある

空はもはや昔のように蒼くはないし

風は冷たいかも知れない

けれど君は役立たずなんかじゃないし

間違ったこともしていない

いま上司から無能呼ばわりされた君は

現実に絶望しているかも知れない

けれどもそれはこの世界のシステムに

大きく歪みが生じているからで、君が悪いんじゃない

君は一つ一つの事柄に真摯に取り組んだ

限界まで力を出しきった君が

さらにその五倍十倍もの力を出さねば

クリアできない仕事を要求されるなんて

どう考えてもこの世界の仕組みがおかしいんだよ

いま君は心を病んで生きている

生きていることに望みを見いだせずに生きている

ぼくはもうことさら君に頑張れとは言わない

君は十分すぎるほど頑張ってきたんだ

おのれを恥じる必要なんかない

この狂った世界の真ん中へ放り出されて

孤独な闘いを続けてきた君よ

いつか君が君らしく生きられる時代がやってくることを

ぼくは心から願っている

つめたい雨は降りつづいているけれど

止まない雨はないんだよ

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