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運命祭  作者: AAA
三回戦
22/22

マイリトルクィーン、これからも仕えさせて頂きます

 ルマガズン青のエリア本店の休憩室にて、カラが一人、椅子に座って眼を閉じていた。ドアの隙間から聞こえる喧騒に耳を傾けていた。店長がシュラを迎えに行ったので、休憩室にはカラしかいない。

 休憩室のドアが開いた。カラが顔を向けると、シュラが立っていた。


「カラ!」


 シュラが目じりに涙を溜めて、カラに抱きついた。カラは力強く受け止める。


「シュラさん、二回戦勝利、おめでとうございます。まさか、最後に相手を説得するとは思っていませんでした。びっくり仰天しましたよー」


「うん、だって説得がわたしの仕事でしょ」


 シュラが笑顔をカラに向けて凍りつく。カラの顔は所々腫れており、目元には紫色の痣が見えた。顔色は土色で、唇は紫色になってる。


「店長さんを説得した時の事、覚えていたんですねー」


 カラがシュラに笑いかけると、シュラの瞳から涙が零れた。止め処なく溢れる涙をぬぐわず、シュラは唇を噛む。


「こんなにぼろぼろになって。酷い目に合わされてたんだ」


「あ、殴り痕は全部、うち達がやったの」


 入り口で様子を見ていた店長が、シュラに告白する。シュラが頭を抱えて、驚愕する。


「ええっ! 何で、何で、ありえないんですけど」


 店長が人の悪い笑みをカラに向ける。カラの頬を汗が伝った。


「カラ君が、行きたくないです、行きたくないです、て駄々を捏ねて逃げ出したのよ。それはもう、凄い逃げっぷりでね。三時間近く探したよ」


 ね、と店長はカラに同意を求める。


「カラ?」


 シュラの目が細くなる。涙は消えていた


「そんなこともありましたねー。アハハハハハハーーーーーーーーー」


「それで見つけてみたら、休憩室でジュースを飲みながら、高みの見物をしてたんだから、それ位、当然じゃない。シュラちゃんもそう思うでしょ?」


 シュラはカラから離れた。ゆっくり地面を踏みしめ、腰を落とし、拳を握る。


「私はそんな事してません。決してシュラさんの無茶振りを笑いながら、優雅にお菓子を食べたり、ジュースを飲んだりしていたわけではありません。本当ですよー」


 シュラの堪忍袋の緒が切れた。


「死ね、この大馬鹿野郎」


 底冷えのする声と共にシュラの拳がカラの腹部に突き刺さった。腹を押さえて倒れるカラにシュラが命令する。


「心配して損した、馬鹿っ」


 シュラは頬を膨らませて、そっぽ向く。その足元でカラは、うーうー、と唸っていた。


「カラ、さっさとそこに座れ」


 腹を押さえたカラが、弱々しい声で抗議する。


「お腹が痛くて、立てません。もうちょっと待ってくださいよー」


「いいからさっさと座りなさいよ。手加減したんだから、そんなに痛いわけないでしょ」


 シュラが心外そうに言った。カラは詰まらなそうに舌打ちを打つと、軽快に立ち上がる。


「はいはい、これで良いですか?」


 カラが椅子に座った。シュラを正面から相対している。


「うん」


 シュラは覚悟を決めた目で、カラを観察する。カラは酷い様相だった。肌はかさつき、皮膚の下から骨が浮き出ている。末期の病人の様相である。


「わたし、謝らないから」


 シュラは震える声で、突き放すように言った。体中を震わせて、目は潤み、少し鼻声気味だったが、毅然とした威厳があった。


「カラが誘拐されたのは、わたしの所為だけど、謝らないから」


 カラは笑ったまま頷いた。そんな事は先刻承知だ、とその笑みが語っていた。


「前に、カラ、言ったよね。カラを殺す覚悟が必要だって」


「懐かしい話ですねー」


 カラがどこか遠くを見つめる。


「わたしにその覚悟があるか、今も分からない。けど、もうわたし止めないよ。止められないよ。カラがどんなに酷い目にあっても、わたしは全力で運命祭と戦う。

 沢山の派閥の人達と戦う。子供だって、頑張れば何とかなる事を見せてやるの。皆が諦めなければ、皆の運命祭になると思うから。

 だから、止めない」


「それは痛くて、つらくて、苦しいです」


 シュラの歩もうとしている道は、心が痛くて、生きる事が辛くて、想いが苦しくなる。カラはシュラと同じ道を歩いた者達を知っている。


「それでもやりますか?」


「脅すの止めてよ。怖くなっちゃうじゃない。

 でも、やるよ。

 カラの言うとおり、痛くて、辛くて、苦しくても、絶対やる。だって、これはわたしの我侭だから。皆を巻き込んで、わたしがやめるなんてできない。

 だから、お願い。これからもわたしと一緒に戦って、カラ」


 シュラがカラに懇願する。カラは席を立って、シュラの足元に跪く。


「承りました。マイリトルクィーン、これからも仕えさせて頂きます」


「ありがとう、カラ」


 頭を下げるカラに、シュラが囁くように礼を述べる。カラは顔を上げてにやけた笑みを作った。シュラもそれに笑顔で応えた。

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