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非人少年、轗軻流転。  作者: 孤愁 哀
序、日記、もしくは自伝、もしくはノートブック
1/6

その一。

 人生二作目です。とはいっても所詮は高校生の文章ですのでわかりにくいところも多々あると思います。そんな時は温かい気持ちで読んでいただけると嬉しいです。

 きっとあの瞬間から僕の人生は狂ってしまったんだ、僕は今更ながらそう思うので僕はここから書き残そうと思う。特に目的はないけれど、もしかしたら誰にも見られないかもしれないけど、それでも何か形として残しておきたいんだ。人間ではない僕が人間として生きようとしたその軌跡を。


 二〇一二年四月一四日、よく晴れた土曜日だった。僕は高校生になったばかりで少しばかり浮かれていた。それも県内トップ高校に入学したとなれば尚更だ。そんな訳で鼻歌なんて歌いながらご機嫌で服を着替えていた朝、まだピッカピカな僕の携帯が鳴った。まだ受験勉強の教材が山ほど積んである机の、そのてっぺんから流行のスマートフォンを取った僕はその画面を見た。

坂庭(さかにわ)匡行(まさゆき)

 中学の時の友達だ、僕は画面の下の矢印を横にスライドした。

「あー、もしもし?優衣か?」                       

 僕がもしもし、と電話に出ると匡行は滑舌よくそう言った。続いて、僕に返事をする暇も与えずに、

「今日いっつーと一緒にカラオケ行くんだけどさ、2人だけじゃ寂しいから、お前も来ない?」

「行く!」 

 思わぬ誘いに僕は反射的に叫んでしまった。そう、何を隠そうこの僕、海原(うなばら)優衣(ゆい)はカラオケが何よりも好きなのだ。一年前初めて後輩と一緒に言ってから病み付きになってしまった。

 匡行には僕が誘いに乗ることはわかっていた様で楽しそうに笑いながら、   

「お前、ほんと好きだよなぁ。じゃあ9時にいつもの店の駐輪場な。遅れるなよ!」

 それだけ言うと匡行は電話を切ってしまった。              

「九時か・・・」                             

 何気なく眺めた時計は八時三七分を指していた。いや、たった今秒針が数字の一二を通り過ぎていったからもう三八分か。約束した時間まであと二二分。僕の家からカラオケ店まで決して近くはないが、自転車でとばせば余裕だ、と考えた僕はとりあえず朝食をとるために一階へと階段を下りていった。        

 僕の家は狭いのでリビングとキッチンが一緒になったようなつくりで、テレビとダイニングテーブルと四脚の椅子でいっぱいになった部屋の隅にキッチンがある。四人家族なのだが僕のほかにこの部屋にいる者はなかった。父親は仕事の関係で東京のマンションで暮らしているので平日はいつもいない。だが今日は土曜日だ、家にいないのは仕事が忙しいからだろうか。母親は隣の部屋で新聞を読んでいる。これは毎朝同じことだからすぐわかる。弟は部活に言ったのだろう、もしくは友達と遊びに行ったのだろうか。理由がどちらでも僕にはあまり関係ないのだが。                                 

 そんなわけで誰もいないこの部屋で僕は冷蔵庫の中のパンを食し始めた。早く食べなくてはいけない。時計はもう八時四一分。                

 五分で食べ終わると携帯と財布を左右のポケットに突っ込むと乱暴に自転車に跨った。休んでいる時間はもう無い。僕は脚を全力で動かした。        


 僕の家は田舎にある。だから自転車に乗っても近くに見える景色は田んぼがほとんどだった。ところどころに民家。遠くに目を向ければ高い建物が見えるが、東京のような高層ビルなどはなかった。あるとすれば県庁くらいだ。      

 でも田舎の空気は都会の空気のように濁ってはいないのでサーッと顔をなでる風がとても心地よかった。なんだか自然と同化したみたいだ、と僕は感じた。  

 そんなことを考えつつ自転車を全速力で漕いでいると左のももあたりがブルブルと振動した。どうやらスマートフォンがメールがを着信したようだ。右手で自転車のハンドルを握りつつ左手で画面をみる。                       


“あなたに百万円相当のアクセサリーが当選いたしました!詳しくはこちらを・・・云々”      


「まったく、こんな急いでる時に迷惑メールかよ」              

 僕は思わずイラッとしてそう小声で愚痴ると携帯をポケットにしまった。


 そして、キーッ!というブレーキの甲高い音とキャーッ!という女性の叫びを聞いた。

 

 驚いた僕はバランスを崩して自転車ごと転んでしまった。         

「・・・一体、なんなんだ?」                       

 呟き、それから僕は気付いた。視界の隅、真っ赤な女の子に。

「・・・死んでる?」                           

 よくみるとやはりそこに転がっているのは同い年くらいの女の子だった。しかし姿は悲惨だった。何故だかは混乱していてわからなかったが、首から上が脳みそを撒き散らし散乱していた。真っ赤。赤赤赤。 

 

 とても、とても・・・。とても。僕は生臭い風景を見て思った。      

「とても、綺麗だ、」                           

 そのとき、突然僕を激痛が襲った。頭が、胸が、心臓が、全身が燃えるように痛い。そしてその痛みの情報量は脳の処理速度を超え、僕の意識は遠のいた。  

 でも僕は覚えている。あのわずかな時間、僕は思ったんだ。         

 ――とても、綺麗、そして美味しそうだと。    


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