01 : ゆるせない。
*別物語っぽくなってしまいましたが、本編の最終話よりずっと前の、空白十年の間に起きた物語になっています。
視点はイザヤだったりヒョウジュだったり、あともうひとりだったりと、ころころ変わりながら物語は進みます。
吃驚した、というのが、本当のところ。
次に思ったのは、なんでこいつは泣かないんだ、ということ。
子どもに恐怖心を抱いたのはそれが初めてだった。まったく泣かない子どもに、自分のほうが泣きたくなった。実際、涙がこぼれた。
子どもがこんなふうでいいわけがない。
「おい、おまえ……っ」
手を延ばせば届くところにいた子どもを、無我夢中で引き寄せて腕の中に閉じ込めた。
「泣けよ! 頼むから…っ…泣いてくれよ!」
ぎゅうぎゅうに抱きしめても、泣けと言っても、子どもは泣かない。動こうともしない。
悲しくてならなかった。
子どもをこんなふうにした事態が、光景が、すべてが、許せなかった。
「泣けよ、なあ! 泣いてくれよ……っ」
泣かない子どもの代わりに、自分が泣いた。涙がこぼれて止まらなかったのだ。子どもが可哀想なのではない。泣かない子どもが、怖かったのだ。
子どもから涙を奪った、その感情を奪った、その光景を、涙を流しながら睨む。
「おれはぜってぇおまえらを許さねえ!」
赤く燃え上がる一面の炎に向かって、叫んだ。あらん限りの力で、吼えた。
許せない。
許せない、ゆるせない、赦せない、ユルセナイ。
「ゆるさねえっ!」
抱きしめても拒絶すらしない子どもを、強く腕の中に閉じ込めて抱き上げ、劫火を背にして駆けだした。
亀更新になると思いますが、おつき合いのほどよろしくお願いいたします。




