表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宴の夜に舞い降りる。  作者: 津森太壱。
【腕に抱いた確かな温度。】
26/29

01 : ゆるせない。

*別物語っぽくなってしまいましたが、本編の最終話よりずっと前の、空白十年の間に起きた物語になっています。

 視点はイザヤだったりヒョウジュだったり、あともうひとりだったりと、ころころ変わりながら物語は進みます。




 吃驚した、というのが、本当のところ。

 次に思ったのは、なんでこいつは泣かないんだ、ということ。

 子どもに恐怖心を抱いたのはそれが初めてだった。まったく泣かない子どもに、自分のほうが泣きたくなった。実際、涙がこぼれた。

 子どもがこんなふうでいいわけがない。


「おい、おまえ……っ」


 手を延ばせば届くところにいた子どもを、無我夢中で引き寄せて腕の中に閉じ込めた。


「泣けよ! 頼むから…っ…泣いてくれよ!」


 ぎゅうぎゅうに抱きしめても、泣けと言っても、子どもは泣かない。動こうともしない。

 悲しくてならなかった。

 子どもをこんなふうにした事態が、光景が、すべてが、許せなかった。


「泣けよ、なあ! 泣いてくれよ……っ」


 泣かない子どもの代わりに、自分が泣いた。涙がこぼれて止まらなかったのだ。子どもが可哀想なのではない。泣かない子どもが、怖かったのだ。

 子どもから涙を奪った、その感情を奪った、その光景を、涙を流しながら睨む。


「おれはぜってぇおまえらを許さねえ!」


 赤く燃え上がる一面の炎に向かって、叫んだ。あらん限りの力で、吼えた。

 許せない。

 許せない、ゆるせない、赦せない、ユルセナイ。


「ゆるさねえっ!」


 抱きしめても拒絶すらしない子どもを、強く腕の中に閉じ込めて抱き上げ、劫火を背にして駆けだした。







亀更新になると思いますが、おつき合いのほどよろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ