冒険者
一日の高校カリキュラムが終わり、放課後。
「今日もやっていきますか」
僕は一人で高校近くのダンジョンへとやってきていた。
ダンジョン。
それは突如として世界に出現した謎の地下空間だった。
ちゃんと地下に埋まって存在しているらしいそこには魔物と呼ばれる人を襲い、殺す存在が闊歩している恐ろしい場所であった。
だが、それと同時に人類にとってあまりに貴重な、多くの資源になり得る物質を回収出来る夢のような場所でもあるのだ。
ダンジョンが出来てから、日本は、世界は大きく変わったらしい。
この、らしいというのはダンジョンが出来たのが僕の生まれる前であるからだ。あくまで、僕の知る知識は学校で習ったものだった。
ダンジョンへの対応は国それぞれで結構違う。
完全な自由とし、民間企業に独占されている国。国が完全に管理している国。それぞれの特色がある。
そんな中で、我が国日本はというと、冒険者制度によって管理されていた。政府の発行する冒険資格を入手している冒険者たちに探索を任せ、その冒険者たちが得てきた資源は国や企業が管理するといった形だった。
自由と管理の中間、と言ったところだ。
「入場っと」
僕もそんな冒険者の一人だった。
腰には刀を、体の至るところに短剣を隠し持ち、魔物が吐き出した硬い糸によって編まれた服をまとった完全武装状態の僕は国の作ったゲートを通ってダンジョンへと入っていく。
ソロ冒険者なので、仲間はゼロ人の一人旅だ。
「……行きますか」
冒険者たちは生身に武器を持った蛮族スタイルで魔物と戦っているわけではない。
生まれながらに持っている『能力』と後天的に学習することの出来る『魔法』を使い、ダンジョンへと潜って魔物と戦うのだ。
「『時ノ◆』」
僕は自身に宿る能力を起動する。
『時ノ◆』
それは、時間操作を可能にする僕の能力である。
時間操作と言えばかなりのチート能力に思われるが、出来ることも限られているし、どうしようもない欠陥まであるような能力である。
時間操作で出来るのは二つだけである。
一つ目ははごく短い時間の『時止め』。
二つ目は自分自身に流れる時間の経過速度を自由自在に操作することが出来る『自己加速』。
二つとも強力な能力であることに間違いない。
だが、問題もあってこの二つとも攻撃性能がないのだ。
時止めと自己加速を活用すれば、どんな強敵の攻撃を回避することが出来る。
しかし、相手の防御を貫通する攻撃力がないという悲しい状況になってしまっているのだ。
わざわざ時を止めて自分だけ動いたり、自分の流れる時間を早くして自分だけが早く動けるようにする必要があるような強敵を倒すほどの火力は僕にない。
ぶっちゃけ死に能力である。逃げるための能力としては最適なので、あったら安心は出来るが。
ちなみにだが、僕の能力はあくまで自分の流れる時間を早くするだけなので、どれだけの速度で僕が動いても運動エネルギーが増えたりはしないので、攻撃力が高くなることはない。
「ふんふんふーん」
そんな能力を使って僕が何をするのか?
自己加速を活用しての高速移動だ。周りに流れている時よりも、自分の時だけを早くして動けば、それはただ歩くだけでも相対的に高速移動していることになるのだ。
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