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屋上

「ふー」

 

 天鳳さんが涙を流し、教室を飛び出していった朝のHR後……僕は教室中に漂う僕を非難する空気感に耐えかね、教室から逃げ出して屋上へとやってきていた。

 クラスの日陰者として生きてきた身からしてみれば、注目されるだけで嫌なのに……更にプラスして非難まで入っているのだ。

 僕に耐えられるような雰囲気ではない。


「やっぱりここにいたか」

 

「おっ。明渡。やっほー」


 そんな僕の逃げ場へと明渡がやってくる。


「……毎回思っているんだけど、なんで入っちゃいけない屋上に入って来られているんだ?」


「校長に頼んだら鍵くれる」


「……何故?」


「……さぁ?」

 

 僕と明渡は互いに首を傾げ……屋上に備え付けられている申し訳ない程度のフェンスへと二人して寄りかかる。


「それで?記憶喪失ってのはマジなのか?」


「マジだね」


「……お前とは長い付き合いなのに知らなかったぞ」


「まぁ、それもそうかな。自分の周りも記憶喪失前の僕を知っているのは妹だけだからね。別に語る必要も特になかったんだよ。その妹も僕に昔の記憶を思い出させようとしなかったし。僕も普通に気にしていなかった」


「そんなもんか。いやぁ、それにしてもそんな状態の記憶喪失を何とかするの大変そうだな」


「ん?いや、僕は別に自分の記憶を取り戻すつもりはないよ。その必要性もないしね」


「……ほーん」


「なんでそんな意外そうなの?」


「ほら。だって、前の記憶を思い出せれば、あの可愛い転校生ちゃんと付き合えるかもしれないだろ?お前の夢に一歩前進じゃないか」


「いや、僕はあくまでハーレムを作りたいのであって、彼女を作りたいわけじゃないから。いきなり好感度MAXで地雷臭のする女の子とか怖いでしょ。あの子、割とヤバめの殺気を放っていたよ……?」


「いや、まぁ……そうだが」


「それに、だ。どうせ天鳳さんの知っている僕はいないんだよ。僕が煮えきれない態度を取り、希望をもたせる方が彼女にとって酷でしょ?期待して……そして、裏切られるのはひどく辛いことなんだよ……多分?」


「そこは言い切っておけよ」


「いや、別に僕は裏切られたことないし」


「お、おう……そうか……」


 僕が、記憶を失う前はわからないけどねぇ。

 覚えている限りの僕はそんな他人の裏切りを受けた記憶はない。


「にしても、お前は本当にハーレムを作るつもりがあるのか?」


「あるに決まっているじゃんか」


「そうか……?お前はからは一切女の子からモテようとしないじゃないか」


「僕がモテようと努力したところで、他人から好かれるわけないだろう……?」


「前から思っていたけど、お前の自己評価低いなッ!?」


「妥当な判断じゃない?公共の場でハーレムを作りたいなどど宣うような輩がモテると思うか?」


「……いや、思わん」


「でしょ?」


「やべぇ。めっちゃ妥当だった」


「ふふふ。だからこそ、僕は金と名声……それでも無理なら国を脅してハーレムを作り上げるのだッ!」


「え?く、国を脅す……?」


「範馬勇◯郎になればハーレム余裕だと思う」


「仮想の最強を持ち出すなよ!?」


「でも、僕が目指すべき場所はあそこだと思うんだよッ!僕も地震を止めるほどの腕力が欲しいッ!」


「……それをお前が持っちゃ世界のおしまいだ」


「えー。なんでよぉ」


 屋上で僕と明渡はダラダラと会話を続ける。

 そして────。

 

 キーンコーンカーンコーンキーンコーンカーンコーン


 授業の開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。


「「あっ……」」

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