潜入
滅能教会。
その存在を知らないという日本人の方が珍しいだろう。彼らはそれくらいの規模で大暴れしていた。度重なるデモ活動に数多の迷惑行為。SNSの活動も活発でありとあらゆる媒体で見る。
それに対抗する形で存在する能力者至上主義との対決も活発───辛うじて大犯罪は犯していないだけの組織。それが滅能教会であり、軽犯罪で捕まったりする人も普通にいるような組織だった。
「おぉ……まさか、このミサの日に新しい同胞を迎えられるとは」
そんな組織が行うミサに対し、僕は今日、潜入してきていた。能力者の身で。
バレたら普通に殺されそう。マジで怖いんだが。
「それも、これまで……あまり熱心ではなかった我らが本来の冒険者。神桜のご令嬢の紹介で。今日は、何と幸運なことだろうか」
「……別に」
僕と神桜さんの前に立っている神父さんの言葉に対し、隣の彼女はそっぽ向いて答える。
「私がお願いさせていただいたのですよ。神父様。良く目にする貴方がたの思想に。由依と同じ冒険者の身として、是非とも参加させていただきたいと……」
それに反応し、僕はあらかじめ神桜さんとの間で決めていたここに来た理由を語る。
「おぉ!それは何と素晴らしきことか……ですが、我々に近づく為、同胞たる神桜のご令嬢のお近づきになってはいませんよね?悪意を持って他人を利用する行為は厳禁ですよ?」
「ちょっと!変なことを言うのはやめて!」
少し、疑うような視線を僕に向けてきた神父さんに対し、神桜さんが僕の腕を自身の腕を絡めながら抗議の声を上げる。
「ラブラブなんだから、余計な茶々は入れないでよね!」
「ゆ、由依……!神父様に対し、そんな態度っ」
その熱烈な抗議に僕たちの後ろにいた神桜さんのお母さんが窘めるような言葉を口にする。
「良いのです。これは間違いなく私の失礼でしたから。当然の抗議というものです。失礼いたしました」
神父さんは柔和な笑みを浮かべると共に神桜さんへと頭を下げる。
「今日は良い日です。素晴らしいミサとなるでしょう。改めて。碧衣くんをここに招き入れることの出来た運命を神に感謝し、ミサを始めさせていただきましょう。諸君。席に」
「……はい。よろしくお願いします。神父様」
何で……何でこんなことになっている。
何で、能力者の僕が滅能教会の教義を聞こうとしているのか。そんなことを思いながらも僕は大人しく神父さんの言葉に従い、この場にある長い椅子へと神桜さんと共に腰を下ろすのだった。
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