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化け物

「ラァァアアアアアアアア!」


 燃え盛る業火。

 僕が放った魔法の炎は今、既に自分の手から制御が離れてしまっていた。


「面倒な……!」

 

 薬でもって化け物となった二人。

 そのうちの一人が業火をその身にまとったまま、僕の方へと一息で一気に距離を詰めてくる。


「ちっ」


 僕に向かって振るわれる化け物の剛腕を身をかがめて回避し、その腹に蹴りを差し込む。


「ごぉっ!」


「呻き声の割に感触悪いんだよなっ」


 その蹴りを受け、僅かに体が浮き上がる化け物だが、そのぎらつく眼光はまったくもって衰えていない。

 すぐさま地面に足をつけ、僕に向かって再び剛腕を振るう。

 

「ちっ」


 それをバックステップで回避したところを別のもう一人の化け物が僕へと蹴りを放ってくる。


「せいやっ!」


 その蹴りに対し、僕も同じように蹴りを放ってぶつかり合う。


「ぐぅ……っ!」


 衝撃は重い。

 全身につんざく衝撃に顔を顰めながら、それでもこちらと同じように蹴りの衝撃で動きを止めた化け物に魔法を打ち込んで追い打ちを仕掛ける。


「ガァっ」


 魔法を真正面から受けてたたら足を踏んでいる間に僕は二人の化け物から距離を取っていく。


「ヒットアンドアウェイってやつだね」


 力強く、巨大な化け物二人。

 それと相対する僕はヒットアンドアウェイに徹し、相手と長く戦う態度を取っていた。


「きっついな」

 

 そんな現状としては、僕の不利と言えるだろう。

 二人の化け物はどれだけ攻撃を与えてもダメージが入っているようには見えない。

 それに対し、僕は二人の化け物の攻撃を真正面から食らえば、それだけでひとたまりもないだろう。


「ご、ごめんね。私、全然役に立たなくて……」


 表情を歪ませている僕に対し、少し離れたところにいる神桜さんが謝罪の言葉を口にする。


「こればっかりは仕方ないよっ!」


 今の彼女は二人の化け物にかかりきりとなっている僕の代わりに、こちらへと近づいてくるダンジョンの魔物を一体一体叩き潰してくれていた。


「そっちも、必要なこと、さっ!」


 魔物も入り混じれる混戦模様になるより、現状の方がいい。

 神桜さんが化け物と戦うのは厳しいしね。魔物と戦ってくれた方がいい。


 神桜さんは大剣による高火力を売りとするアタッカーであるが、化け物には通じなかった。その上、僕のように速度があるわけでもないので、化け物から逃げることもできない。

 まともに立ち向かえば、ひとたまりもないだろう。


「……マジでどうしよ」

 

 神桜さんから意識を外し、化け物に再び意識を戻した僕は苦難の言葉を漏らす。

 僕も、一生懸命化け物に対して魔法やら短剣をぶつけているけど、本当に火力が足りない。

 魔法を覚えてこれで僕も火力不足解消だぁー!って喜んでいたのが馬鹿みたいに思えてくる残酷さだ。


「……ちょっと本気でどうしようかなぁ」

 

 このままじゃジリ貧だ。

 神桜さんもずっと魔物を叩き潰し続けられないだろう。何故か、魔物も常に僕たちの方へと集まり続けている。

 本当に、厳しい状況だった。


「『喰らえ、双頭炎獅子』」

 

「「ガァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」

 

 僕がどうしようかと考えていた時、どこからともなく双頭の炎の獅子が疾走し、化け物を喰らい、地面へと叩きつける。

 僕の使う魔法とは威力の桁が違う魔法だ。


「天鳳さんッ!」

 

 僕は魔法が放たれた方に視線を向け、声を張り上げる。

 

「手助けに来たわよ」

 

 そこにはペアを片手に引きずり回し、僕たちの援護に駆けつけてきてくれた天鳳さんが居た。

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