不審者
授業の時間は丸半日。
特にすることも、苦戦することもない長いダンジョン探索。
「……ん?」
呑気にダンジョン15階層を歩く僕たち───そんな、自分たちを待ち構える人の気配を感じて僕は足を止める。
「どうしたの?」
「いや、何でもない」
急に立ち止まった僕に対して疑問符を口にする神桜さんの言葉を僕は肩をすくめながら否定し、歩き出す。
僕たちが歩いているのは通路の狭い迷路。天井もそこまで高くない。
少し先にある曲がり角───そこから感じる人の気配。
うん……多分、行けるな。
「『ジ・アクセル』」
僕は能力を発動し、加速。
地面を跳躍して天井へと足をつけ、更に跳躍。
僕は曲がり角のところで待ち伏せしていた二人組の背後へと降り立つ。僕の前に立つ二人は未だに背後の僕に気づいていなかった。
「さて、何者かな?あなたたち」
何も気づかず、僕たちを待っていた二人組。
そのうちの一人の意識を手刀ひとつで刈り取ってその頭を足で踏み抜き、もう一人には隠し持っていた短剣を突き付ける。
「……は?」
「ちょっ!?何しているの!?」
いきなりの蛮行に悲鳴を上げる神桜さん。
「僕、さ……他人の殺気に敏感なんだよねぇ。そんな殺気でぎらつかせて、何の用かな?生憎と僕は君たちに覚えはないんだけど」
「……ガキがッ!死ねッ!」
首に短剣を突き付けられた男はそんな状況をも意に介さず動き出す。
腰にぶら下がっている剣へと手を伸ばし、くるりと振り返って僕の方に視線を向けようとする。
「死ね!」
だが、それを僕は許さない。
行動の途中で迷うことなく僕は彼の首に短剣を突き刺し、その動きを強引に止めさせる。
「……はい?」
確実に、斬り裂いた。
短剣で首を大きく斬り裂かれた男は血を吹き出し、地面に倒れる───はずだった。
首から血を吹き出させながら、それでも、その男は刺機敏な動きで地面を転がり、僕の足元で気絶している男へと注射を突き刺す。
「攻撃じゃ……?!」
剣で自分へと攻撃を加えてくると思っていた僕はその対応に遅れ、相手の行動を許してしまった。
「うわっと!?」
注射を刺された男の体が急激に盛り上がり、危険を感じた僕は急いでその場から離れる。
「……およ?」
「殺してやるぞぉ……ガキィ!!!」
僕によって頭を踏まれていた男……そして、首に短剣が刺さっている男も。
注射によって体が大きく変化していく。
「「オァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」」
そして、完全に理性をなくしたと思われる二体の化け物が咆哮を上げた。
「ちょっと待ってッ!?何あいつッ!?」
いきなりの化け物の誕生に悲鳴を上げる神桜さん。
「いや、なんだろうねぇ」
僕は首筋にピリピリとしたものを感じながら笑みを浮かべた。
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