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転校生

 多くの若者が通っているであろう高校。

 ここ数年の間にどんどんと変化し、今なお変化し続ける高校へと通っている僕、竜崎碧衣。

 

「毎日、色々な種類の女の子とグチョグチョしたい」


「キモすぎる。何もかもがキモすぎる」


「泣いた」


 そんな僕は朝のHRが始まるより前の時間に友人である春野明渡と雑談していた。


「でもさ、最強の冒険者になったらそれくらい簡単に出来るようになるんじゃない?全部力で脅せば良いんだから」


「……お前のような奴を見ていると、冒険者制度を作った政府は糞だと思うわ。それにお前の能力、チートだからワンチャンありそうで怖い」


「確かに僕の能力はパッと見チート能力だけど、どうしようもない欠陥を抱えたクソ能力だよ?」


「でも、ワンチャンその諸問題を解決するエグい能力の派生ができそうで怖い」


「それが出来たら僕は世界を支配して、毎日色々な種類の女の子とグチョグチョする」


「……この世界のために今ここで、俺がお前を殺すのが最善策なんじゃないか?」


「辞めてよ」

 

 割とマジの声色で明渡が放った言葉に僕が拒絶の言葉を口にした瞬間、学校中にキンコンカンコンとチャイムの音が鳴り響く。

 

「あっ、チャイムが鳴った。席、戻るわ」


「うん」

 

 その音に従い、クラスの生徒たちが各々の席についたところで朝のHRが始まる。


「ほらー、席につけ。今日はちょっとしたイベントがあるんだから、早くなー」


 教室の前にある教卓へと立つ30手前独身、結婚願望ありの担任の先生、池田春香先生が声を張り上げる。

 ちなみに余談だが、池田先生が結婚できないことはこの学校の七不思議のひとつとされている。美人でまだ若いし、結婚できそうなんけどね?

 そんな池田先生の話すイベントが何か、教室中がざわめき出す。


「あー。静かにさせるのも面倒だ。さっさと本題に入るぞ。うちのクラスに転校生が来る。男子ども、喜べ。美少女だ。ほれ、入れ」

 

 随分と適当な池田先生の言葉の後、教室の扉が開かれて転校生と思われる一人の少女が教室へと入ってくる。

 そして、転校生が入ってくると教室は沈黙に包まれた。


「「「……」」」


 入ってきたのは一人の美少女……その美しさに男だけでなく女子まで魅了され、全員が一切声を上げずに見惚れる。

 

 肩まで伸びた短めの黒髪に、整った顔に、抜群のスタイル。

 道行く人が十人いれば、その十人全員が振り返って見惚れるほどの圧倒的な美少女。

 そんな彼女の美貌……それよりも目につくのがその瞳だろう。

 何もかもを飲み込みそうな漆黒の右目……そして、そんな右目とは対象的な明るい純白の左目。

 転校生は現実世界で見ることはまずないオッドアイを持った少女であった。


「ほら。自己紹介だ」


「……」

 

 池田先生に自己紹介を促される転校生。

 だが、彼女は自己紹介をすることなく……口を閉じたまま勝手に歩き始める。


「久しぶりッ!碧衣……ッ!」


 そして、転校生は口を開き、僕の方へと走って突撃してくる。

 

「はい……?」

 

 その少女の態勢は明らかに僕へと抱き着きにこようとしているものだった。

 何故、初対面の女に僕は抱き着かれようとしているのか───そんなことを疑問に思いながらほぼ反射的に、こちらへと伸びてくる転校生の手を華麗に回避し、距離を取る。


「えっ……?」


 僕に回避された転校生は驚愕と共に声を漏らし、誰もいなくなった机と椅子にダイブして大きな音を鳴らす。


「は……?」

 

 地面に倒れた転校生は信じられないと言いたげな表情を僕へと向けてくる。


「いや、誰だよ」

 

 そんな表情に対し、僕が返せるのは初対面の女の人に向けられるごく自然な言葉くらいだった。

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