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幼馴染

「……嘘、だよね?」

 

 『誰だよ』という僕の言葉に対し、、転校生はショックを受けたような表情を浮かべ、口を開く。


「いや、嘘じゃないよ。そもそも君は自己紹介をしていないじゃないか。名前だってわからないよ」

 

 僕はハーレム願望を持ったごく一般的な男の子である。

 転校生の美少女からいきなり話しかけられた……普通であれば大喜び案件なのだが、ちょっと過去を捏造して『久しぶり』とか言っちゃう地雷っぽそうな女の子はちょっと勘弁したい。


「……」

 

 机と椅子を倒し、地面へと体を倒していた転校生はゆっくりと体を起こし、僕のことをジッと見つめる。


「……嘘は、駄目なんだよ?」


「────ッ」

 

 僕の前に立つ転校生。

 彼女から殺気を感じた僕は警戒心を上げ、身構える。


「おい!勝手なことをするなッ!痴情のもつれをクラスに持ち込むなッ!」

 

 一瞬にして一触即発の状況になった僕と転校生。

 その、どちらかが動き出すよりも前に池田先生が声を張り上げる。


「まずは自己紹介からだ。クラスの全員が困惑している。二人だけの空間を作るな」


「池田先生。誤解です。僕だって置いていかれてます」

 

 なんで僕はいきなり知らない女子から幼馴染判定を受け、殺意を向けられなくてはならないのか。


「ふざけるな!そこら辺の話はHR後にしろッ!まずは転校生の自己紹介からだ!」


「……後で、お話だから」


「あぁ、うん。良いよ」

 

 色々と不穏な子ではあるが、彼女は美少女である。

 快くその提案を受け入れようじゃないか……美少女だし。あの眼福な面を見ながら会話をするのはそう悪いものではない。

 でも、バイオレンスなことになるのだけは辞めてほしい。切実に。


「私の名前は天鳳雲母。趣味は特になし……そして!碧衣ととってもとっても仲の良い幼馴染ッ!これからよろしくお願いします」

 

 教卓の前へと戻り、元気よく自己紹介をする転校生、天鳳さん。

 彼女の自己紹介を聞き、名前を頭の中で咀嚼し───そして、僕は一言。


「知らんがな」

 

 やっぱり知らなかった。

 名前に一切の覚えはなかった。


「良し!転校生の自己紹介は終わり!そして、今日は特に連絡もないので、これで朝のHRは終わり!さっさと二人のち上のもつれを解消してくれ。あっ。頼むから流血沙汰にはなるなよ?それは普通に問題となって私も怒られるから」


 そんな僕の前で池田先生はサラッと目の前で起きそうになっている問題を放棄し、朝のHRをさっさと終わらせようとする。

 おい。そういう無責任なところがあなたの独身である理由なんじゃないですか?


「ありがとうございます。池田先生」

 

 天鳳さんは笑顔を池田先生へと向け……そして、僕の方には無表情を向けてこっちへと近づいてくる。


「……痴情のもつれにはしないで欲しいなぁ。覚えないし」

 

 天鳳さんが盛大に倒した机と椅子を直し、座り直していた僕はこっちへと向かってくる天鳳さんを見ながら、池田先生の言葉に対しての不満を漏らした。

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