第4章:改善と未来への道
比喩的な意味で、ゆっくりと俺の目が開く。
周りを見渡すと、少しずつ記憶が押し寄せてくる。数瞬だけ「ここはどこだ?」と考えるが、すぐに意識が完全に戻り、何が起きたのかを思い出した。
俺、生き残った!?
俺は勢いよく地面から跳ね起き、辺りを見回す。視界の端には、まだ血を噴き出しているチョウル・モグラの死骸が見えた。
俺……勝ったのか? 【レベル:4/4 Max】。そうだ、経験値をもらったんだ。ってことは、俺が勝ったってことだ!
うおおおおっ!
しばらく座ったまま喜びをかみしめてから、血塗れの死骸を見つめる。こいつ、本当に気持ち悪い。どうか、いきなり蘇って暴れ出したりしませんように。
まだ血が流れているってことは、そんなに長時間は気絶していなかったはずだ。……ていうか、スケルトンって気絶するのか? まぁいい。今はそれより他のやつらだ。
あいつらは【掘削者:Nv3】を持ってるんだから、今頃ここへ向かって地下から道を掘ってきていてもおかしくない。
さっさとここから出たほうがいいな。死骸はこのまま放置でいいか。どうせ俺には使い道ないし。
立ち上がろうとするが、今の俺には腕が一本もないので、少し苦労する。もし腕が完全に粉々になっていなければ、【再生:Nv2】でつなぎ直せたかもしれないのに。
このスキルの説明では「失った部分は戻らない」と書いてあったが、今の再生の挙動を見る限り、失った部位を傷口に押し当てれば再接続できる可能性は高い。
とはいえ、今さらこぼしたミルクを嘆いても仕方ない。腕を犠牲にしなければ俺は生き残れなかった。左腕に関しては、完全に俺のミスだ。距離を読み違えた結果、モグラに破壊された。
いや、さっきも言ったけど、今それをいつまでも引きずっても意味がない。
腕を取り戻す方法を見つけないと。じゃないと、俺は完全に無防備なままだ。
そういえば、レベルアップでステータスも上がっているはずだよな?
よし、確認だ。【鑑定】!
スキルのことを強く思い浮かべると発動し、脳内にステータス画面が浮かび上がる。
――――――――
名前:
状態:通常
種族:スケルトン
Nv:4/4 Max
HP:2/7
MP:1/4
攻撃:5
防御:3
速度:9
魔力:2
ランク:F
スキル:
【骨の身体:Lv-】【回避:Nv1】【再生:Nv2】【鑑定:Nv1】【ソウル・ヴェイン:Nv-】【死者の拳:Nv1】
耐性:
【毒無効:Nv-】【孤独耐性:Nv4】【衝撃耐性:Nv1】【日光耐性:Nv1】【落下耐性:Nv1】
称号:
【プレイヤー:Nv-】【死体泥棒:Nv-】【召喚従属:Lv-】【アンデッド:Nv2】【卑劣な戦法:Nv1】
――――――――
??? ステータスめっちゃ上がってる! ……けど、死ぬ一歩手前だな。
誰かに少しでも触れられたら死んでもおかしくない。【再生:Nv2】をラストパンチの前に発動して、落下ダメージを軽減してなかったら、多分俺は死んでいた。
ダメージを受けると同じ速度でHPが回復していき、そのおかげで死なずに済んだ。
RPGの理屈で言うなら、MPが尽きて疲労で気絶し、MPが少し戻ったから意識が戻ったってところだろう。
とにかく、ステータスはかなり上がった。ほかにも増えているものがある。
このステータスなら、モグラ一匹くらいなら余裕で倒せるはずだ。……いや、もう二度とあいつらの顔は見たくないけど。
そういえば、レベルが最大になったから進化できるんだよな?
確か、そんなメッセージも出ていたはずだ。
もし進化したら、腕って戻るのか?
【【スケルトン】のレベルが最大に達しました。】
【進化条件を満たしました。】
【進化候補を表示しますか?】
おお、また出た。ってことは、次の姿を選べるってことか? 今の姿についてもまだろくに理解してないのに、もう次の段階?
【スケルトン:ランクFのモンスター】
【アンデッド系の中でもごく一般的な種であり、すべてのアンデッドは、この種を経て上位の進化段階へと進んでいく。遺体に対して祈りや火葬などの弔いをしない場合、別の魂が入り込みスケルトン化する危険性があるため、親族や友人の亡骸には必ず弔いを行うよう推奨されている。】
頼んでないけど、ありがたいな。重要な情報が手に入った。
よし、それじゃあ進化候補を見せてくれ!
俺がそう承認すると、頭の中に大量の情報が一気に流れ込んできて、少しクラクラする。
【スキル【鑑定】のレベルがNv1→Nv2に上昇しました。】
【進化候補を表示します。】
【次の進化候補】
【スカル・オナー:ランクE】
【スカル・ソードマン:ランクE】
【スカル・ランサー:ランクE】
【スカル・タンク:ランクE】
【スカル・ウィッチ:ランクE】
【スカル・ケース:ランクE】
【スカル・ネクロ:ランクE】
【レッサー・リッチ:ランクE+】
【遺伝ステータス――】
おお、結構あるな。選択肢が多いのはいいことだ。
ん? 遺伝ステータスってなんだ?
【遺伝ステータス:前の進化段階で得られた中で、もっとも高いステータスの一部を新しい進化形態へ引き継ぐことができる機能。ただし、最初の種族で得たステータスは引き継げない。】
なるほど、かなり便利なシステムだな。
仕様次第では、進化の選び方によって相当強くなれそうだし、もしこれが累積するタイプなら、進化を重ねるほど遺伝ステータスを積み上げられるってことだ。
さて、どれを選べばいいんだ? 一つだけ他よりランクが高くて、かなり強そうなのがあるけど……。
【レッサー・リッチ:ランクE+】
【リッチ系統の中でも最下層に位置する形態。魔法の才能は高いが、肉体は脆く、日光に対して非常に弱い。高ランクのリッチは非常に危険な存在となるため、冒険者たちは遭遇した際、必ず討伐するよう推奨されている。】
うわ、なんか気持ち悪いな。
将来的な伸びはかなりありそうだけど、今の状況で肉体が弱いのは致命的だ。
俺は今、自分がどこにいるのかも分からないし、周りが敵だらけでもおかしくない。
そんな中で、唯一の防御手段である高い速度を捨てる余裕なんてない。
それに、多分だけど、いきなり高ランクを選ぶより、進化回数を増やして遺伝ステータスを積んでいったほうが結果的に強くなれる気がする。
まずは【スカル・ウィッチ:ランクE】と【スカル・ネクロ:ランクE】は除外だな。名前からして、魔法に全振りして他のステータスを犠牲にしているタイプだろうし。
じゃあ、他の選択肢を詳しく見せてくれ。
【スカル・オナー:ランクEのモンスター】
【筋力の道を選んだスケルトン。戦闘力の向上を常に追い求め、ほぼ完全に肉体能力に特化している。斧やハンマーの扱いに優れている。】
おお、面白いな。でも速度が低そうなのが少し不安だ。
【スカル・ソードマン:ランクEのモンスター】
【剣の道を選んだスケルトン。誇り高く、尊敬すべき騎士道を持ち、公正な戦いを重んじる。相手の能力を考慮しながら戦う。剣の扱いに優れている。】
何でもできるオールラウンダーって感じか? 特化してはいないけど、バランスの取れたタイプ。嫌いじゃないな。
【スカル・ランサー:ランクEのモンスター】
【徳の道を選び、より強大な敵と戦うために鍛え続けるスケルトン。速度と攻撃力のスペシャリストであり、その戦闘技術は戦いを美しい舞のように変える。槍の扱いに優れている。】
攻撃と速度の両方に特化してるタイプか。かなり興味はあるけど、俺自身に格闘スキルがないと使いこなせなさそうだな。
【スカル・タンク:ランクEのモンスター】
【痛みと限界突破の道を選んだスケルトン。誇り高く、自らの頑丈な身体を誇示しながら、逃げることなく正面から敵の攻撃を受け止める。盾や重装備の扱いに優れている。】
タンクか。チョウル・モグラのアンデッド版みたいな感じだな。
俺は超頑丈になれるだろうけど、代わりに速度と機動力を失う。
戦い方も、正面から殴り合いながらダメージを受けつつ叩き返すスタイルになる。……却下!
【スカル・ケース:ランクEのモンスター】
【影の道を選んだスケルトン。敵の弱点を悪用し、汚い手を使って戦う。なるべく安全な位置から攻撃するか、影に潜んでやり過ごすことを好む。弓と短剣の扱いに優れている。】
完全に忍者タイプだな。却下!
さっきの戦いで、低防御の恐ろしさは身に染みた。防御が低くて戦闘能力も低いとか、ただの地雷だ。
それに、多分この進化を選んだら、俺のイメージを汚すようなスキルや称号ばかり手に入りそうだし。
よし、残りは3つか。
脆すぎるのもダメだし、遅すぎるのもダメ。だから候補はソードマン、オナー、ランサーの三つってわけだ。
オナーは攻撃力がかなり高そうだけど、他のステータスも極端に低くはならない、攻撃寄りのバランス型って感じ。
ソードマンは全体的にバランス型で、スキルもそれなりに面白いものが手に入りそう。
ランサーは攻撃と速度の二重特化で、他のステータスも極端に低いわけではなさそうだし、説明から察するに強敵相手の戦いで真価を発揮するタイプだ。
……
……
……
……本当に決められない。
個人的な好みだけで言えばソードマン。効率と火力だけ見るならオナー。
戦闘能力やスキルの面白さを重視するならランサー。
……
……
……
マジで分からん。
……こういう時は、これまでのRPG経験と、この世界での体験をもとに直感で決めるしかないな。
俺の選択は――速度特化だ。
理由は簡単だ。俺には何よりも速度が必要だからだ。
おまけに、攻撃力も高くてステータスもバランスよく整いそうだし、説明を見る限り、強敵と戦うのが得意な種でもある。
オナーも悪くはない。けど、俺のRPG経験上、世の中には“代償なしの強さ”なんてほとんど存在しない。
多分だけど、馬鹿みたいなステータスの代わりに、スキルは微妙なものばかりになる可能性が高い。
ソードマンも悪くない。かなりバランスがよくて、スキルも期待できそうだ。
でも、何も突出していないってことは、どのステータスも控えめってことでもある。
この先、今より強い敵と戦うのが当たり前になるのに、ステータスが中途半端だと、あっさりやられる未来しか見えない。
ランサーなら、相手がヤバすぎる格上でも、最悪逃げられる。
チョウルとの戦いを思い返しても、相手が速度特化じゃない限り、速度に特化した俺のほうが上を取れる可能性は高い。
しかも、相手より圧倒的に速く動けるなら、ヒット&アウェイを繰り返して、安全圏を保ちながら一方的にダメージを与える戦い方もできる。
……そうだ。今みたいに言語化してみると、余計に自信が持ててきた。
よし、決まりだ。
俺は――【スカル・ランサー】を選ぶ!




