第3章:死の逃走とレベリング
【振動伝達:Nv4】:【振動を使って情報を他の【振動伝達】保持者へ送ることができるスキル。盲目のモンスターが周囲を把握したり、遠距離で仲間と通信するために使用することが多い。】
あの野郎め!
最初に遭遇した時、あいつが叫んで地面を踏み鳴らした瞬間──すでに仲間を呼んでいたのか。
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種族:トウペイラ・チョウル
状態:
Nv:7/10
HP:13/13
MP:5/5
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種族:トウペイラ・チョウル
状態:
Nv:5/10
HP:10/10
MP:4/4
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種族:トウペイラ・チョウル
状態:
Nv:6/10
HP:11/11
MP:4/4
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どいつも同じようなステータスで、なおかつ数値が高い。クソッ、俺よりランクが上のモンスター6体なんて、勝てるわけがない!
【トウペイラ・チョウル:モンスターランクE-】:【生涯で一度も太陽の光を知らない掘削型モンスター。極めて攻撃的で縄張り意識が強く、とくに群れのメスが妊娠している時期は顕著。常に繁殖を求めるため、メスが妊娠すると群れのオスたちは不満を抱え、ストレス解消として周囲のあらゆる存在を殺すようになる。仲間すら平然と殺すことがある。骨をかじると歯が整うため、スケルトンを好んで食べる。】
最悪だ!戦えるわけがない。唯一の選択肢は……逃げるしかない!
俺は体を反転させ、全力で反対方向へ走り出した。
すると背後から洞窟全体を震わせるような轟音が響いた。まるで“群れの突進”だ。
この狭い洞窟で6体もの巨体が一斉に走れば、そりゃ地鳴りみたいな音にもなる。
スキル【骨の身体】のおかげで俺の速度は7。
トウペイラ・チョウルは速度6。
たった1の差でも、この場では命綱になる。
だが──
全力で走れば走るほど、骨にかかる負荷で足が砕ける可能性がある。
それが怖い。
あんな性欲モンスターのストレス発散にされるのも嫌だし、骨の砥石扱いされるのはもっと嫌だ。
最初に見たときはただ気持ち悪いだけの生物だった。
だが今は違う。
存在が気持ち悪い。性質も見た目も行動も、全てが不快だ。
……なんでこんな生き物が存在するんだよ。
どれだけ距離を離しても追ってくる。
視界は10メートル程度のはずなのに、完全に見失っている距離でも追跡を止めない。
執念深さが怖すぎる。
「CRACK!」
クソッ!足のヒビが悪化してる!
このままじゃ折れる!
折れた瞬間、追いつかれて終わりだ。
戦っても10秒と持たない。
どうする?どうすればいい!?
……
走りながら必死に考える。
ステータスを見ると、【HP:4/5】が【3/5】へと下がっている。
自壊ダメージだ。
焦りが増す──そのとき気づく。
そうだ。俺にはまだアレがある。
【再生:Nv1】
【再生:Nv1】:【使用者の自然治癒を加速させるパッシブスキル。発動時にMPを消費し、自然治癒範囲内での回復のみ可能。失われた部位の再生は不可。】
いける……!
強く念じた瞬間、スキルが勝手に発動した。
俺の【MP:1/2】が消費され──
同時にHPが【5/5】まで一気に回復した。
砕けかけていた足も完全修復。
細いヒビが線のように残るだけで、走りには問題ない。
勢いを取り戻しながら、つい笑いそうになる。
【スキル【再生】がNv1 → Nv2に上昇しました】
よしッ!
振り返れば、群れの姿は薄くぼやけるほど遠くなっていた。
まだ追ってくる音は聞こえるが、距離は確実に開いている。
あと数分走れば──助かる!
……と思った矢先。
前方に巨大な穴が現れた。
洞窟を完全に塞ぐ幅。
中を覗いても底が見えない。
まるで洞窟を両断する巨大な断層のようだ。
急停止し、土を蹴り上げて踏みとどまる。
危ねえ……もう少しで落ちてた……
いや、考えてる暇はない!
トウペイラが迫ってる!
まさか、この穴の存在を知っていて俺を追い込んだ……?
クソッ、あの狡猾なモンスター共が!
俺は断崖を背にして構えた。
ここでやるしかない。
だが逆に、この穴を利用できる──!
来いよ、クソ共!!
暗闇の奥から6体が突進してくる。
そのうち5体は速度を落として様子見。
1体だけが突撃を止めず一直線に向かってきた。
最初に戦った個体だ。執念がすごい。
– guriiiii!
待ってたぞ……!
一直線に突っ込んでくるなら、対処は単純。
ギリギリまで引き付け──横へ飛ぶ。
だが少し遅れ、頭突きが左腕に直撃し──
左腕が粉砕。
骨片が飛び散る。
だがその代わり、奴は勢い余って断崖の縁へ滑った。
– gurii!?
「今だ……!」
腕を失っても痛みはない。
即座に体当たりし、押し込む!
– guriii?
奴は必死に踏ん張り、逆に押し返してくる。
力では完全に負けてる──が、俺には知恵がある。
右手の折れた剣を、奴の膝へ突き刺す。
– guriii!??
体勢を崩した瞬間を狙い、奴の腹の下へ潜り込んで全力で押す。
– gurii!?
– gurrii!?
他の5体が大慌てで走ってくるが──遅い!
もう勝ちは決まった!!
だが。
落ちる瞬間、トウペイラは四本の脚で俺を抱きしめるように締めつけた。
くっ……!
踏ん張りがズレ、
奴と一緒に奈落へ落下した。
AAAAAHHHHHH!!!!
恐怖で頭が真っ白になるが──
死にたくない。
ここで終わりたくない!
必死にもがき、奴の体を蹴り、
“踏み台”にして反動で減速する。
奴はさらに加速して落ちていく。
– Gurii!???
これは無茶な賭けだ。
だが勝つしかない。
レベルアップでステータスを上げて……
落下の衝撃はこいつの体で受ける……
全部計算通りにいけば、助かるはず。
だが1秒でもズレれば即死。
底が見えた。
トウペイラが暴れ狂っている。
頼む……!
ドォォォォン!!
大地が割れ、爆音が洞窟に響き渡る。
【36ポイントのExpを獲得しました】
【スケルトンのNvが1 → 4に上昇しました】
【スケルトンが最大Nvに到達しました】
【進化条件を満たしました】
【進化先を表示しますか?】
今考えてる場合じゃない──
衝撃がまだ残っている。
俺は【再生:Nv2】を発動し、残ったMPを使い切る。
そして落下衝撃を殺すため、トウペイラの死体に拳を叩き込む。
右腕が粉々に砕け、骨片が飛び散る。
だが衝撃が横へ逸れ、
俺の体は地面を転がりながら速度を失っていく。
生きた……!
その瞬間、視界が白くなり大量のメッセージが流れ込む。
【スキル【死者の拳:Nv1】を獲得しました】
【耐性【落下耐性:Nv1】を獲得しました】
【耐性【衝撃耐性:Nv1】を獲得しました】
【称号【卑劣:Nv1】を獲得しました】
【称号【アンデッド】がNv1 → Nv2に上昇しました】
【耐性【日光耐性:Nv1】を獲得しました】
メッセージが止まらない。
頭が……意識が……持たない……
俺は……俺は助かったのか……?
視界が揺れ、意識が沈んでいく。
……クソ……。




