第11話:狡猾なる強毒ムカデ
【ヴェノノーズ:ランクDのモンスター】
【毒と卑劣な手段を得意とする巨大ムカデ。巨大な体躯と鋭い脚を使って獲物に絡みつき、蛇のように締め上げて圧殺する。そのため、地域によっては「血絞めムカデ」と呼ばれている。】
毒!?
ってことは、こいつは毒持ちなのか!?
俺、毒で死ぬんじゃないのか!!?
一瞬パニックになるが、すぐに思い出す。
……俺はスケルトンだ。
スキル[ボーン・ボディ]のおかげで、毒は無効だ。
くそ、無駄に焦らされた。
……しかし、どんな毒なんだ?
【タートイス・ポイズン:ランクD-】
【亀殻蛇[タートイス]から抽出された毒。全身の筋肉を硬直させ、獲物を麻痺させる強力な毒で、使用者はその間に獲物の命を弄ぶことができる。】
うげぇ……なんてグロい。
さすが種族説明どおりだ。麻痺させてから、ゆっくり締め殺すつもりだったわけか。
それにしても[アプレイザル]は本当に便利だな。
ステータスや生物以外の情報まで解析できる。将来的にもかなり使えそうだ。
とはいえ、毒で攻めてくるという判断は完全に失敗だ。
ただし、あの毒水の球は相当な威力だった。毒抜きにしても、直撃していればダメージは大きい。
もっとも、すでに[リジェネレーション]で回復済みだが。
……さて、改めて相手を見極めよう。
[アプレイザル]!!
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種族:ヴェノノーズ
状態:正常
Nv:14/30
HP:86/93
MP:82/90
攻撃力:67
防御力:70
速度:56
魔力:60
ランク:D
スキル:
[アーマー:Nv1][ヴェノマス・ファング:Nv4][ヴェノマス・クロー:Nv4][ポイズン:Nv5][パワフル・ポイズン:Nv2][バイト:Nv2][ポイズン・シンセシス:Nv4][ポイズン・エンラージ:Nv2][マスキュラー・ハグ:Nv5][プレゼンス・センス:Nv2][ボディ・ポイズン:Nv2][ブラッド・ポイズン:Nv2][ポイズン・アプリケーション:Nv3][ポイズン・コピー:Nv2][テンタクル・ウィップ:Nv3]
魔法:
[ポイズン:Nv4][スピード:Nv1][ディフェンス:Nv1][アンチ・スピード:Nv2][アンチ・ディフェンス:Nv2][ポイズン・フォーマット:Nv4][アクア・ブラスト:Nv4]
耐性:
[ポイズン・レジスタンス:Nv9][インパクト・レジスタンス:Nv4][ブリーディング・レジスタンス:Nv2]
称号:
[ポイズン・ベアラー:Nv3][アサシン:Nv4][ストラングラー:Nv4][ダーティ・プレイ:Nv7][チーター:Nv3]
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一番驚かされたのは、能力値じゃない。
スキル構成だ。
こいつ、歩く毒の塊じゃねぇか……。
毒と無関係なスキルが、たった四つしかない。どれだけ卑怯なんだ。
能力値は俺の倍以上だが、毒特化型という点では問題はそこじゃない。
毒を除けば、攻撃手段は噛みつき、締め付け、鞭打ち――その三つだけ。
そこを警戒すれば、数値差そのものは致命傷にならない。
問題は……この異常な速度だ。
ステータスをよく見ると、血液すら毒。
しかも[ポイズン・イミュニティ]は持っていない。
つまり出血すれば、自分自身も毒に侵される可能性がある。
だからこその[ブリーディング・レジスタンス]か。
そしてあの魔法。
[アクア・ブラスト]――さっき使ったのは間違いなくこれだ。
水弾を作り、そこに毒を混ぜて射出。
遅い毒技を魔法で補う……実に賢い。
……だが、相手が悪かったな。
ムカデは地面から俺を睨み、毒が効くのを待っているようだった。
俺は体を振って、付着した毒を振り落とす。
効いてはいない。ただ気持ち悪いだけだ。
ムカデは目を細める。表情は分からないが、苛立っているのは伝わってくる。
脚を地面に叩きつけ、癇癪を起こす子供のようだ。
姿勢を整え、モノリスから飛び降りようとした、その瞬間。
また同じ動作――触手を振り、水球を生成し、毒を注入。
何度やれば分かるんだ?
……いや、待て。
色が違う。
どす黒い紫、しかも蒸気が立っている。
[パワフル・ポイズン]か。
……関係ない。どうせ効かない。
ムカデは[アクア・ブラスト]に[パワフル・ポイズン]を纏わせて発射。
砲弾のような速度。
受け止めるつもりだったが、背筋が凍る。
俺は直感を信じ、蝙蝠の翼で作ったバッグを投げつけた。
――直撃。
紫の毒が炸裂し、バッグは消し飛ぶ。
中から舞ったモグラの骨が毒に触れた瞬間、異変が起きた。
骨が空中で溶け、黒煙となって消える。
……なんだ、これ?
【カースド・ポイズン:ランクC】
【細胞を破壊し、カルシウムを急速に分解する強力な毒。体内に侵入すると、骨は即座に融解する。】
……!!!!?
毒じゃない。
ほぼ酸だ。スケルトン殺しだ。
……やりやがった。
俺に対応する毒を作り替えやがった。
知能が高いのは分かってたが、ここまで来ると悪意の塊だ。
ムカデがさらに毒球を放つ。
だが俺はすでにモノリスから飛び降りていた。
落下中、溶けていないモグラの骨を掴み、棍棒代わりにする。
迎え撃つムカデ。
骨棍を叩きつけ、頭部に直撃。
「ギィィィィ!」
反動で距離を取り、[ダーク・ヒール]と[ライトニング]を同時に放つ。
「ギギギィィィ!」
[ダーク・ヒール]が呪いと病を与え、
[ライトニング]が感電させ、一瞬動きを止める。
その隙に接近し、背中の外骨格に拳を叩き込む。
「ギィィ!?」
外殻に亀裂が走り、緑の血が噴き出した。
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種族:Venonose
状態:軽度呪い/軽度麻痺
Nv:14/30
HP:72/93
MP:70/90
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いける。倒せる。
速度は落ち、ダメージも通っている。
[ダーク・スカル・メイジ]の俺は近接特化じゃない。
それでも通るなら、魔法を叩き込めば決定打になる。
白兎と比べれば、こいつはまだマシだ。
ムカデは周囲を回りながら毒球を連射。
減速しているおかげで、回避は容易。
どうやら[スピード]は、移動だけでなく魔法速度にも影響するらしい。
ムカデが跳躍し、[マスキュラー・ハグ]を狙う。
だが俺は動かない。
――次の瞬間。
直径10cmの穴が胴体を貫き、雷が走る。
「ギジャァァァ!!」
【魔法[インビジブル・ランス]のレベルが4から5に上昇】
【魔法[ライトニング・アキュムレーション]のレベルが2から3に上昇】
仕込んでおいた[インビジブル・ランス]だ。
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種族:Venonose
状態:軽度呪い/軽度麻痺
Nv:14/30
HP:54/93
MP:61/90
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もう少し――。
だが油断した瞬間、側面に衝撃。
……やられた。
触手の一撃。
攻撃67、防御17。
左腕と肋骨が粉砕される。
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種族:Dark Skull Mage
HP:3/30
MP:18/35
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即座に[リジェネレーション]、続いて[ダーク・ヒール]。
……残りMPは11。
もう二回しか使えない。
なら、切り札だ。
[アタック]と[マジック]を融合させた、一撃必殺。
[ダークネス]で視界を遮り――
二指を立てる。
紫の光が刃となる。
[フォトン・ソード]。
一振り。
触手も、頭も――まとめて断ち切る。
【250 EXPを獲得しました】
【[ダーク・スカル・メイジ]のレベルが1から20に上昇】
緑の血が噴き、ムカデは崩れ落ちる。
……そして俺も。
意識は、闇へ落ちた。




