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パソッカの着ぐるみのあの子

作者: 緋色刹那

 今日から夏休み。

 学校から帰ると、知らない女の子が縁側で昼寝していた。母さんはいない。父さんは海外出張中だ。


 目鼻立ちがしっかりした、褐色の肌の子だ。僕と同い年くらいだと思う。

 顔と手足が出た、ピーナッツ色の筒みたいな着ぐるみを着ている。とてもヘンテコな格好だ。普通の服を着ていれば、かなり可愛い子だと思うんだけど。


「ねぇ、起きて」

「うー……」

「起きてったら。ここ、僕んちなんだけど」

「むにゃむにゃ……」

「起きるまで、かき氷食べようかな」

「カキゴオリ!」


 あ、起きた。

 女の子はぱっちりと、大きな目を見開く。思ったとおり、可愛い。変な着ぐるみ着てるけど。


「タベタイ! ジャポンの、カキゴオリ!」

「分かった、分かった」


 かき氷を使い、二人分のかき氷を作る。イチゴのシロップと練乳をたっぷりかけ、二人で食べた。


「で、君だれ? 日本語分かるの?」

「ワタシ、ヴァレンチーナ。ジャポンのコトバ、スコシわかる」


 どうやって家に入ったのかとか、どうしてうちにいるのかとか、聞きたいことは山ほどあったけど、


「その着ぐるみ、なに?」

「パソッカ! パパイがクレタんだヨ!」

「パパイ?」

「ジャポン語デ、オトーサンのコトダヨ」


 パソッカとは、挽いたピーナッツのキャンディーだ。ブラジルで働いている父さんから何度かお土産でもらったことがある。


「へぇ。パソッカの着ぐるみなんてあるんだ」

「ヴァレンチーナのパパイがツクッタ。ヤマトのブンもアル! コレ着て、イッショにオヒルネ、シヨ!」

「僕の分も? って、何で僕の名前知っているの?」

「ヤマトのパパイがオシエタ。ワタシのパパイとヤマトのパパイ、パソッカアミーゴス!」

「パソッカアミーゴス?」


 僕はパソッカの着ぐるみを着て、ヴァレンチーナとお昼寝した。フカフカで、ほんのりピーナッツの香りがした。


 目が覚めると、夕方だった。ヴァレンチーナはまだ寝ていた。

 台所へ行くと、ブラジルにいるはずの父さんがパソッカの着ぐるみを着て、夕飯のしたくをしていた。


大和(やまと)、おはよう。よく寝ていたね」

「父さん! いつ日本に帰ってきたの?!」

「昼頃だったかな。仕事の都合で、急に日本に戻ることになってね。一週間くらいしたらまたブラジルに戻るけど、それまではいっしょにいられるよ」


 嬉しい。父さんと一週間もいられるなんて! 母さんもきっと喜ぶぞ。


「そういや、父さん。ヴァレンチーナって女の子が来てるんだけど、何か知らない?」

「あぁ、今日からうちで預かることになったんだよ。父さんの会社の社長の娘さんで、お前の婚約者なんだ」

「へー……」


「えっ?!」

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