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アザリスタ‐婚約破棄された姫様の処世術-  作者: さいとう みさき
プロローグ
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プロローグ:婚約破棄

婚約破棄されたお姫様が国を守るために奮闘するお話です。

異界からアザリスタの中に入ってしまった雷天馬いかずちてんまと何やら悪だくみをしているようですが……



 ここは異世界。

 お約束のファンタジーな世界で剣と魔法が有り、魔物が跋扈する所。


 そんな世界のとある国のとある貴族たちが通う魔法学園の卒業式の式典でそれは起こってしまった。

 卒業を祝うために貴族王族が集まる式典の中で。 



「アザリスタ、君の非道な振る舞いにはうんざりだ! 今ここで宣言する、僕たちの婚約は破棄すると!」



 ざわざわっ



 卒業式の式典では卒業生で成績筆頭による演説をするのがならわし。

 アルニヤ王国第一王子であるロディマス=リオネル・アルニヤはそれに呼び出された銀髪の深い藍色の瞳の美女に「びしっ!」と指を突き付けドヤ顔でにそう言いはなつ。

  その言葉に眉間にしわを寄せてアザリスタと呼ばれた女性は何なんだこいつとか思いながら聞く。


「どう言うことですの、ロディマス様? この私が一体何をしたと言うのですの?」


「とぼけるのはやめたまえ、君はレベリオ王国の第一王女と言う立場を利用して僕に近づく見目麗しき女性たちに意地悪をしているではないか!」



 どよっ!?



 思わず軽いめまいを覚えながらもアザリスタは言う。

      

「それは誤解ですわ、私はただ婚約者であるロディマス様にふさわしくない者たちにお話をさせていただいただけですわ」


 自慢げにそう言うこの王子のどうしようもない女好きは知ってはいた。

 だからアザリスタはこれ以上面倒な噂が立たぬよう虫よけをしていた。

 しかしうざいドヤ顔のロディマスは違った。



「彼女たちにあんなひどい事をしてか!? 中には命を落としかけた者までいるんだぞ!!」



 ざわざわっ!



「それも誤解ですわ、あれは魔術対決を挑まれ、返り討ちにしたまでですわ!」


「だまれ! とにかく僕は君のような粗忽者と一緒にはなれない、婚約は破棄だ!!」



「そんな、酷いですわ、あんまりですわっ!!」



 式典の公の場で一方的にそう言われレベリオ王国第一王女であるアザリスタ=ピネリス・ラザ・フォンフォードは涙を流しながらこの場を立ち去る。

 王族の者として国の為に隣国であるアルニヤ王国と友好関係を築くために好きでもないロディマスと婚約をしたと言うのにこの仕打ち。

 感情が彼女の理性を越え、おつきの者の制止を振り切って馬に乗りこの学園から飛び出してしまった。


 冷静に考えればおかしな事もあったのだが、それでも感受性の強い彼女は理性的になる事が出来なかった。

 馬にまたがりイラつきと屈辱と公の場での恥をかかされたことに目的もなく馬を走らせる。


 それがいけなかった。

 闇雲に走ったおかげで彼女は落馬と言う事故にあってしまうのだった。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



「はぁ~、やっと給料日だと言うのにこれじゃなぁ~」


 雷天馬いかづちてんま二十七歳、独身。

 食品会社に勤めるリーマン。


 給与明細の封筒を渡されその中身を見てため息をつく。

 まあこんな時代、給与は低いがまっとうな仕事にありつけるだけましかと思い久しぶりに飲み屋に行こうと思う。

 が、財布の中を確認すると現金が心もとない。

 なので道路の向こうの銀行へ金をおろしに行こうとしたその時だった。


 こちらは青信号の横断歩道。

 ちゃんと確認して歩き出すと信号無視のトラックが突っ込んでくる!



「うぉっ! あぶねぇっ!!」



 しかしそれにいち早く気付き寸での所で避ける天馬。

 だがしか~し、そんな事でフラグ回避は出来ない。

 次いでバイクが、よそ見をしていた乗用車が次々と襲いかかって来る。



「何なんだ、何なんだぁーっ!?」



 それでもそれらをギリギリでかわし続ける天馬、おのれしぶとい!

 だがしかし、見えざる運命の手は貴様を抹殺する為になんでもするのだ!!


 もう少しで反対側の歩道に辿り着く天馬に女子高生が立ち塞がりそこへ突風が吹く。

 今どきの女子高生で清楚系のかわいこちゃん、そこへ突風がいきなり吹けば勿論そのスカートが持ち上がる。



「おっ!?」



 悲しいかな、男の性はそれに反応してしまう。

 そして止まる足。


 チャーンス!

 

 運命の見えざる手は信号左折をするトラックに伸びる。 

 やはり異世界に行くためにはトラックにひかれるのは美学!

 

 雷天馬が横断歩道を渡り切るだろうと見込んだトラックは左折を始めたが、トラックのタイヤが脱輪する。

 そして本来ならそちらに行かない方向へとトラックが曲がり、足を止めた天馬に襲いかかる。



 どんっ!



 「がはっ!!」


 よっしーっ!

 こうして哀れ雷天馬はトラックにはねられるのだった。



 ちなみに彼の最後の言葉は「スカート下に短パンは反則だ……」だったようだ。 

 

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