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転生先は人だけじゃない
「で、その巻物を咥えて離さない猫ちゃんというのが、腕にいるその子ね?」
どうやらトーイは慌てるあまり、猫ちゃんを抱いているのをすっかり忘れてしまっていたようだった。
その猫は、ニャンとひと鳴きし、咥えていた巻物を私の手にポトリと落とした。賢い子である。
「いい子ね、巻物をありがとう。まさか、あなた、隣国の王の策略を知ってトーイにそれを知らせようとしてくれたのかしら?
なんて、ね」
冗談めいて猫ちゃんに話しかけると
その子はニャン!と元気よく鳴き
トーイの腕からするりと抜けて私に飛び移り顔に頬擦りしてきた。
…あれ、まさか?
「まさか、ねぇ、猫ちゃん、あなた、人の言葉を理解できるの?」
その問いかけに、猫ちゃんは目を輝かせて
ニャーオ!と頷く。
そこで私は理解する。
この子もイセカイからの転生者だ。
おそらくイセカイでは人間だったのだろう。
転生者は人だけではない。
イセカイ者を受け入れるのに慣れてきた私もさすがにこれにはしこたま驚いた。