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ちょっとずつ外へ
「あんたもう、どうするつもりなの?
家にいるまま、おじさんになって。」
8月で止まったままのカレンダー、学生だった頃の教科書が床に積まれている。床にはそれ以外にも、さっき食べたカップラーメンや、いつのかわからない飲み掛けのペットボトルが散乱している。ボクはこの部屋で、学生の頃から変わらず横になって、もう10年。ずっとネットで10分後には忘れているような情報を読みながら過ごした。
「俺なりに考えてるんだよ。急かされると、気持ちが辛くなる。一番怖いのは俺なんだって。わからないよなぁ、専業主婦の母さんには。」
――これは、ボクが世界と戦ったり和解したりする、スケールの小さい物語。物語というよりも、数ある事例の内の一つだ。