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ぼくの桜桃を受け取って   作者: 七乃はふと
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翁草.4

 結妃の作り出した恋愛研究部によって、無理矢理鈴と恋人同士にされてしまってから一週間が経った。

 結妃から指示があるのかと思ったのだが、これといって何の連絡もない。

 あまりにも平凡な一週間が過ぎた事で、空き教室での出来事は夢かと思ってしまう。

 けれども偶然廊下で会った皇太によって、それは現実だと突きつけられる。

「やあ。鈴とは上手くやっているかい。結妃が報告を待ちわびているよ」

「報告も何も、特に何も起きてませんよ。それにあれから天使さんと会えてませんし」

「無理矢理付き合わされても、ちゃんと会いに行ってくれてるんだね」

 皇太は驚きの中にも、どこか納得したような表情を浮かべる。

 剛気は空き教室で鈴と分かれた翌日、とりあえず彼女のクラスに向かってみた。

 結妃に言われた事をどう思っているか聞いてみようと思ったからだ。

 しかし、話す事は出来なかった。

 休みだったとか用事でいなかったわけではない。

 教室には、友人と思われる三人の女子と談笑する鈴がいた。

 剛気には、座っている鈴の周りに友人達が集まる様子は、まるで鈴という花に惹き寄せられた虫のように見えていた。

 それだけ彼女の雰囲気は明るく、天空の照明を浴びているかのように輝いていた。

 皇太の背中に隠れてオドオドしていた時と違う姿に見惚れていると、男子生徒に声をかけられる。

 女子を見つめる不審人物にされては敵わない。

 鈴に用がある事を伝えると、男子生徒は一瞬眉を潜めた。

 用があるというのを信じてくれないのかと思ったが、どうやら違うようだ。

 鈴に声を掛けると、そのまま逃げるように自分の席に戻っていく。

 どことなく申し訳なさそうな顔で鈴がこちらを見る。

 気づいた彼女が動く前に、周りにいた女子三人が睨んで歩み寄ってきた。

 並んで立ち塞がる姿は、まるで階段状のアンテナマークのようだ。

 剛気が口を開く前に、先制攻撃が開始される。

「鈴に何の用?」

 左側に立った一番背の低い女子が口火を切ると、次に真ん前に立った女子が口を開く。

「あなたと話したくないって」

 最後に右側の背が高い女子にトドメを刺される。

「さっさと向こうに行ってよ」

 一方的に捲し立てられて、何も言えずに追い返されてしまった。

 皇太と話した日以降も鈴がいる教室に向かうのだが、必ずといっていいほど、あの三人がいる。

 まるでVIPを警護するSPの様な隙のなさで、教室にさえ近づけなくなってしまった。

「内気君。部活動の方はどうなっているのかしら?」

 結妃から送られてきたメールに正直に返信する。

「すいません。特に活動らしい活動はできてないです」

「焦らせるつもりはないけれど、二人か恋人になってから一カ月近くは経つわよね」

 文面から早く恋人としての活動を報告しろと催促しているのは明白だ。

 言い訳を考えていると、結妃が釘を刺してくる。

「言い訳はいいから早く活動して報告を……どうしても駄目な時は相談しなさい」

 やはり催促されている。その事で頭が一杯で最後の言葉は頭に入っていなかった。

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