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クロワッサン

赤い糸が見えない

作者: 名も無き囚人

『無自覚だけど恋してる』に少しでてきた菅谷くん目線です。会話文多めかもです。

 



「今日からこの学校に転校してきました、桜木桃香です。こっちにきてまだ日が浅く、わからないことが多いので色々教えてください。よろしくお願いします」


 転校初日、緊張しながらもふんわり笑顔を浮かべてぺこりと頭を下げた彼女を見て俺は驚いた。


 可愛い声に常にふんわり優しげな笑顔。

 いつのまにか、女子が人気の高いって言われている奴らを筆頭に男子を次々と落としていった魔性の女。

 周りにいる女子の敵意に怯えたような顔をして周囲の男子に目を潤ませているこいつに、俺は唖然とした。


 ――お前、何匹の猫を被ってんだよ。


 本当、呆れた顔しかできなかった。



 §




 昔、桜木桃香は超絶生意気なやつだった。

 小学校の長期休みに祖父母のもとへ遊びにいくと近所にやつがいて、遊びに強制参加させられた。


「俺、美波ちゃん気になってるんだよな。美波ちゃんに俺のことどう思ってるか聞いてきてくんない?」


 一緒に遊んでいた美波ちゃんという三つ編みの女の子のことが好きだと打ち明けた時、桜木桃香は冷めた目で「は?無理」と言った。


「なんでだよ!」

「決まってんでしょ?美波の運命の相手は栄だし、俊には赤い糸がない。つまり、運命の相手はいない」

「はあ?またその話かよ!」


 運命の相手。

 桜木桃香はよくそんな話をした。桜木桃香いわく、運命の赤い糸が見えるらしい。

 美波ちゃんは同じくよく一緒に遊ぶ栄くんと赤い糸で繋がっていて、しかも、その誰にでもあるはずの赤い糸が俺にはないのだと。

 別に信じる理由もなかったから話半分できいていた。

 だってもしその話が本当だったとしたは俺はどうなる?孤独死間違いなしじゃん。辛い。



「なら、お前はどうなんだよ!」


 俺がそう叫ぶと、桜木桃香は平然とした顔をして鼻で笑う。


「自分のは見えないに決まってるじゃん?そんな簡単に自分の運命の相手が見つかったら面白くないし」

「いや違うね!お前も俺と同じく孤独死の運命なんだろ!やーい、バーカバーカ!ブス!」

「は?この可愛い私に向かってブス?あんたの方がブスでしょ。捻り潰すわよ、その腐った根性と顔面」

「怖えよ!」


 ふわふわの茶髪の整った可愛い顔立ちに似合わない辛辣で苛烈な性格。

 そんな性格だったやつが高校生になってあんなザ・女の子な感じに変化するとは思えない。

 きっと何かある。


 俺は遠くから桜木桃香を観察することにした。


 桜木桃香は学校内でかなり有名だ。そりゃあ、見た目のいい人気な男子たちを側に置きながら誰も選ばないとことか、女子に対しては過敏に怯えたフリをして男子に擦り寄ってたらそりゃ悪名が立つのも当然の話だ。


 あいつなんのためにそんなことやってんの?

 隣のクラスの男子と話す桜木桃香をじーっと眺めていたら、クラスの友達に話しかけられた。


「菅谷ん、ずっと桜木さんを見てるよな!もしかして〜?」

「おお!!?桜木さーん!こいつが桜木さんのこと好ふぶッ!?」


 冗談じゃない。

 慌てて叫ぶ友人の口を塞ぎ、素早く友人の胸ぐらを掴んで低い声で言った。


「誰が桜木さんのことが好きだって?冗談じゃないね!あんなふんわりにこにこーっとしてるあいつの本性知らないからそんなこと言えるんだ!あいつは――」

「菅谷くん」


 周りの空気が五度くらい下がったのを感じた。名前を呼ばれた方へぎこちなく首を動かすと、ふんわり笑顔の桜木桃香が立っていた。


 見た目が可愛い美少女だからその笑みはたしかに可愛いかもしれない。友人たちがポーッと見惚れているのがわかった。

 だが、俺にはその笑顔の後ろに般若が見えた。

 思わず息を飲む。


「ちょっと、話、いいかなぁ?」


 区切られた言葉が恐ろしい。ふるふると首を横に振って断ったのに、友人に押されて桜木桃香に近づいてしまった。


「ありがとう!」


 嬉しそうにしながら俺の手を両手でぎゅっと握りしめた桜木桃香だが、力が予想以上に強い。

 逃がさない意志を感じる。勘弁してほしい。


 この姿を桜木桃香の取り巻きに見られたら俺の人生が終わりそうだ。

 振り払おうとするが手は離れることなく、俺はぐいぐいと人気のない屋上への階段へと押しやられ、連れてこられた。

 屋上は鍵がかかっていて開いていない。

 階段を降りて逃げようとするも、目の前には仁王立ちする桜木桃香。


「あれ、もうぶりっ子止めたのか?」


 目を瞬かせて問うと、桜木桃香は「小声で喋って。誰かに聞かれたくないのよ」と嫌そうな顔をして言った。その口調と表情はまさしく昔の桜木桃香だった。


「俊にあのキャラは逆に話しにくいからよ」

「お前、いつからあんな猫被ってんの?」

「この高校に来てからよ?」

「何で?」


 当然の疑問に苦虫を噛み潰したような表情で桜木桃香は絞り出すように口を開いた。


「この世のすべての男女の仲を引き裂くためよ」

「恐ろしいな!?何があったんだよ」


 一体何の恨みが?


「だって……!」


 桜木桃香は俺に掴みかかってきた。そして大きく揺さぶられる。


「だって、私の運命の人がいないんだもんーー!!!!」

「はああ??」


 思わず素っ頓狂な声を上げる。桜木桃香が珍しく泣きそうな顔をしている。ぐらぐらと視界が悪い中、俺は吐きそうだった。








「自分の赤い糸が見えない?そんなん昔からだっただろ?」


 乱されてしまった制服を整え、ぽつりぼつりと話し出した桜木桃香の話を聞いて俺は意味がわからなかった。


「そうだけど!そうだけど!」


 小声で叫ぶという器用なことをしながら、訴えてきた。

 大きくなれば自分の赤い糸が見えるだろうと思っていた桜木桃香は愕然としたらしい。周りが男女で仲が良くなる中、自分には相手ができる気がしない。

 他人の赤い糸ではなく、自分の赤い糸が見たいのに見えないし、このままでは孤独死コースに突き進んでしまうかもしれないと不安になったそうだ。

 でも糸を無視して、擦り寄ってくる男子と仲良くなっても、後からなんか違うとか、そんな性格だとは思わなかったなんて言って勝手に幻滅され逃げられたらしい。

 ああ、それすげえわかる。えげつないギャップだよな。そこに納得していると怒られた。


「そういうのもう散々学習したし、人の目だって肥えてきた。だけど、目が肥えてきたって結局どいつもこいつも人を見た目でしか判断しないようなやつらばっかりよ!」


 そこで転校を機に決意したらしい。

 それならお望み通り、見た目も中身も可愛らしい私になってやる、と。

 ついでに幸せそうな男女を崩壊させ、孤独死する未来を辿らせてやると。

 やっぱりこいつ最悪だ。


「んで、出来上がったのがあの胡散臭いあれか」

「そうよ。あのかわいこぶりっ子の気色悪いあれよ」

「お前、自分で演じといてその言い草……」

「だって気持ち悪くない?」


 桜木桃香が演じてると知ってるから俺は違和感がすごいが、知らない奴から見れば理想の女の子だと思う。知らんけど。


「じゃあ演技の成果として運命の人と出会えたか?というか周りの、特に例の四人、天沢とか瀬戸、あとは御子柴先輩に後輩の結城はどうだったんだ?」

「ああ、あの四天王ね」

「四天王!?お前、あいつらをそう呼んでんのか?じゃあ中心のお前は魔王か。…………似合うな」

「ぶん殴るわよ」


 拳を握りしめたのにびびって反射的に距離をとってしまったが、桜木桃香はそのまま話を続けた。


「まず、瀬戸と御子柴先輩はダメね」

「なんで?」

「相手が校内にいるし、仲良く話しているところみたもの」

「は!?誰!?」


 運命の相手がそんな近くにいるなんて羨ましい。俺は前のめりになって話を聞く体勢になる。そんな俺を冷ややかに見る。

 野次馬精神丸出しで悪かったな。仕方ないだろそんな近くであるならちょっと気になるし。


「瀬戸は二年の女子生徒で御子柴先輩は一年にいるわ。名前まではわからないけど、色を見るに結ばれるのにはもうちょいって感じかしら」

「へぇー!これはしっかり観察しとこう。じゃあ天沢と結城は?特に天沢はお前にべったりじゃん。お前が他のやつと話してるだけで相手を睨んでるぞ」

「鬱陶しいのよね、あれ」

「お前、最低だな」

「あら、どーも」

「そういうとこがダメなんだろ」

「うるさいわね!」


 むすっとしながら、桜木桃香は話を続けた。


「天沢は多分まだ出会ってないわね。色が透明。だけど太いのよ」

「太い?」

「運命の力が強いの。相手に出会った瞬間、私への執着なんて消えるレベルね」

「それやばいな」

「でしょ。だから天沢も将来的にダメ。結城は赤い糸が極細でかつ色が薄い。あれは浮気性ね。私には無理」

「うわ、可愛い癒し系男子の本性とか知りたくなかったんだが」

「私も知りたくなかったわよ!」


 八つ当たりでギロリと睨まれる。俺のせいじゃないのに。


「てか、思ったんだけど」

「何?」

「俺の赤い糸は今、どうなってる?」


 そういえば昔、ないって言われたような記憶がある。嫌な予感がして尋ねると、桜木桃香はにちゃあと悪い笑顔で俺を見ていた。まるで極悪魔女のようだった。


「残念ながら、今も俊の赤い糸は微塵も見えないわ。あーあ、本当に残念ね」


 全く残念そうに見えない、なんなら嬉しそうなこの極悪魔女に俺は引きつった顔しかできない。


「嘘ついてないだろうな?ふざけんなよ」

「やだ、こんなつまらない嘘なんかつかないわよ。私、それだけが唯一の救いなの。俊みたいに赤い糸がない人ならうまくいくんじゃないかって!」

「待て、俺のほかに赤い糸がないやついるのか?」

「……まだ見たことないけど、きっといるはずよ!」

「それ、俺がお前の運命の相手ってオチじゃないだろうな?」

「はあ?何?もしかして私のことが好きなの?冗談も大概にしてよね」

「好きなわけないだろ、こんな性悪女!お前なんかごめんだね!」

「性悪!?失礼ね、私だってあんたなんか嫌よ!」


 ギリギリと互いに睨み合っていると、授業のチャイムが鳴り響いた。




 §




「聞いたぜ!お前、教室で瀬戸に盛大に振られたんだってな!!」


 あれから日が経った頃、屋上への階段にて桜木桃香に向かって爆笑していると不機嫌そうな顔で睨まれた。


「私だって聞いたわよ。瀬戸に恋の自覚をさせたのあんただってね!私の邪魔をしないでよ!」

「いずれそうなるってわかってたろ?無駄な足掻きはやめろよ」

「ぐっ……!まあ、せいぜい油断してなさい!私だってすぐに運命の相手を見つけてやるんだから!」


 憤慨する桜木桃香に向かって俺は傷口に塩を塗る。


「今度は御子柴先輩あたりがお前の元から去っていきそうだよな」

「うるさいわね!」

「というかお前、なんで好きだって言うだけで誰も選ばないんだ?そしたら付き合ってハッピーエンドだろ」

「はあ?私じゃない相手と赤い糸が繋がっている相手と付き合っても時間の無駄じゃない!」

「そうとも限らないだろ?」

「運命は絶対なのよ!?私にはわかるもん!」

「俺は見えないからわからない。……ところで俺の赤い糸、もうそろそろ見えたり――」

「しないわ!」

「否定が早すぎる。ふざけんなよ!」


 桜木桃香にもそして俺にも、まだ運命の相手が現れていなかった。







 また数日経って、再び俺たちは屋上へ上がる階段で駄弁っていた。


「ほら、やっぱり御子柴先輩が去っていったな」

「これは私のミスよ」

「何やらかしたんだよ」

「俺の好きなところはどこって聞かれてうまく答えられなかったのよ」

「へぇ、ちなみになんて答えたんだ?」

「顔」

「お前、それはダメだろ」


 呆れた視線を向けると、桜木桃香は唇を尖らせた。


「だって何も思いつかなかったんだもん。たしかに御子柴先輩は優しくていい人なんだなって思うわよ?だけどそれだけしか思いつかなかったんだもん」

「ならそれを言えばよかったじゃねーか。なんでよりにもよって顔なんだ」

「あのイケメンフェイスかつ真剣な表情で見つめられてみなさいよ!ドキドキして頭が真っ白になるわよ!」

「俺、イケメンに真剣な表情で見つめられてもドキドキしないからわかんねーわ」

「じゃあ、とびきり可愛い女の子がじっとあんたを見つめてきたらどうよ?ドキドキするでしょ?」

「あ、それはたしかに」

「最低!バーカ!」

「なんでだよ!?」


 理不尽な罵声に反論して見ると、桜木桃香はちょっとすっきりした顔をしていた。こいつ、さては言いたかっただけだな!?

 俺はお前のサンドバッグじゃないんだぞ。


 そう言いかけたけど、満足気な桜木桃香を見ているとどうでもよくなってきた。

 もう好きなようにしたらいいさ。

 あ、これだけは聞いとかないといけない。そう思い、俺は尋ねた。


「なあ、俺の赤い糸って――」

「ないわ!」

「くそッ!まだないのかよ!」







 また日が経ち、再びの屋上への階段。

 この頃、御子柴先輩に続いて桜木桃香から去っていった人物がいた。


「今度は天沢だったな……」

「そうね。天沢は相手と出会ったみたいよ。でも赤い糸が黒々としてたわ……あれは絶対病んでる。絶対やばいやつ。天沢の相手のご冥福を祈るわ」

「そんなにか?」

「ドロッドロよ。関わりたくないわね、恐ろしい」

「なんかやばそうだな」


 青ざめた顔をする桜木桃香を見て引いた。この極悪性悪女にやばいといわれるって相当だ。俺も近寄らないでおこう。怖いし。


「それより、相手見つかったか?」

「は?見つかったら呑気にあんたとお喋りしてないわよ!」

「あと、俺の赤い糸は――」

「だからないわよ!!もう最近の楽しみはあんたの赤い糸がないことを確認することだけよ!嫌ー!早く運命の相手現れてほしい!!」


 頭を抱えて嘆く姿からは、猫被りバージョンのふんわり可愛い桜木桃香の姿はない。この変貌ぶりは相変わらずすごいと感心するレベルだ。


「お前、それが楽しみって根性捻くれ曲がってるな」

「うるっさい!」


 怒られた。





 §



「ねぇ桃香先輩、ダメですか?」


 帰ろうとした放課後、下駄箱の前で密着し合う男女。一人は女子に人気のワンコ系男子、結城誠。そしてもう一方は俺もよく知る人物。桜木桃香だった。


 うげえー

 なんでこんなとこにいんだよ。


 俺は顔を顰めた。よりにもよってやつらがいるのはちょうど俺の下履が置いてある場所だった。

 取れねーじゃねえか。

 結城は下駄箱とで桜木桃香を挟むように手をついていた。逃がさないようにするためだろうか。さすが浮気野郎、慣れてるな。謎に感心した。


「うーん、ごめんね。ちょっとその日は用事があって」

「先輩、最近そんなのばっかりじゃないですか。もしかして僕のこと嫌いになっちゃいました……?」


 困ったような表情の桜木桃香に、結城は甘えるような声で言ってさらに近づいた。そっと桜木桃香の頬に手を当てる。

 桜木桃香の眉がピクリと動いた。


 ん?俺は気づいた。

 いつもならここで「馴れ馴れしく触らないでよ、クソ野郎」とでも思うだろうにどうやら本気で怯えている。珍しい。

 でも結城は気づいていないようだった。


「ねぇ、先輩……」


 仕方がないな。

 俺はため息をつき、珍しく弱気なやつの為に一歩踏み出した。







「で?先生が呼んでるって何?」

「お前、ありがとうも言えねーのかよ」


 いつもの階段。別に今の時間帯、人が少ない校内でわざわざここに来る必要はなかったのだがついつい桜木桃香といたせいか足が勝手にここへ向かっていた。


「別に助けてなんて言ってないもん」


 弱々しく眉を下げている珍しい姿を見て、俺はドキッとした。常々忘れるが、こいつの見た目は美少女だ。だが、騙されてはならない。

 俺は露骨にため息をついた。


「本当、可愛くねーやつ」

「うるさいわよ!」


 俺に背を向け、袖で目元を拭った桜木桃香は振り返って俺を見ると強気に宣言した。


「もう猫被るのはやめるわ」

「はっ?なんだ突然」

「もううんざりだわ!」


 先程までの儚さはなかった、あったのは燃え盛る怒りだった。


「なんなのあの勘違い野郎は!こっちが大人しくしてるからって馴れ馴れしいのよ!!」


 ぐわっと物凄い剣幕で叫ぶ様子に俺は笑った。

 やっぱり弱気な感じよりもこっちの方が桜木桃香らしい。


「何笑ってんのよ!!」

「いや、いつものお前だなーって」

「はあ?」


 怪訝な顔をする桜木桃香がなんだか可愛く見えてつい頭にポンっと触れた。

 そのまま笑いながらふわふわの茶髪を撫でていると、ふと桜木桃香が静かなことに気づいた。

 しまった。


「あー、悪い」


 ぎこちなく手を戻すと、固まっていた桜木桃香が再起動したようだ。

 見る見るうちにその表情が驚愕の色に染まっていく。視線は俺の手に向いていた。


「は?頭を撫でただけでそんなに驚くか?」

「はあ?違うわよ!あんた、その糸!!!」

「糸?」


 ビシッと俺の手に指を向けた桜木桃香はなぜか再び固まった。


 ん?糸……赤い糸か!!!


 首を傾げていた俺だが、すぐに嬉々として詰め寄った。


「俺の赤い糸が見えたのか!?色は?太さは?相手は誰だ!?」


 わくわくしながら続けざまに質問して尋ねる俺に、桜木桃香は自身の小指を握りしめてぷるぷる震えていた。

 先に俺に運命の相手ができたことによる怒りからか顔が真っ赤である。


 俺はドヤ顔で、赤い糸があるだろう手をひらひらと振ってみせる。


「俺の相手はどんな子なんだろーな」


 可愛い系だろうか、それとも美人系?

 価値観が同じで、一緒にいて気楽な相手ならなお嬉しいんだけど、どうだろうか。

 ニヤニヤとしていると、桜木桃香は顔を赤く染めたまま力強く叫んだ。


「絶対に認めないわよッ!!!」

「はあ?」


 なんでお前の許可がいるんだよ、そう口にしたら桜木桃香はおろおろと目を泳がせて言った。


「だって、あんたの相手は超絶可愛い子だもん」







読んでいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 邪悪可愛い女の子、いいですね。
[一言] 悪い子ではないんです。えぇ、赤い糸が見えるって不可思議現象のせいで拗らせてしまっただけで…… と印象がガラッと変わりましたねぇw
[良い点] 自分で気持ち悪いと思ってたのね、と笑ってしまいました 可憐な乙女が実は野獣だったカミングアウトは学校中激震でしょうねw [気になる点] ヤンデレに見つかってしまった子羊は誰なんでしょうねw…
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