異世界への移動
でもなぁ、突然なりたい私って言われても人生それほど長く生きた訳じゃないしなぁ。
取り敢えず性格とどんな両親に生まれたかだけ決めておこうかな。知人についても決めたいけど、生きていく上で変な気持ちになりそうだから自重しないと....
両親の生まれた日から私が転生したい時間(私が異世界で生まれる時間)を決めたほうがいいのかなぁ、多分私が望めば容姿は今のまま移動することもできるんだろうけど。折角作れるなら美少女に生まれ変わりたい。今の容姿が嫌いな訳ではないが、別に愛着はない。
強いていうならば、脳みそが突然の体格の違いや筋肉の量の変化についていけるのかが不安ではあるが赤ちゃんからやり直せば問題なさそうだ、しかも周囲からは天童や天才って呼ばれてチヤホヤされる未来がみえる。それは私にとって幸せな未来な気がする。ただ、前世の記憶をもってしまった上で俺TUEEしてしまうと、ラノベの主人公のようなとてつもなく歪な精神性の人間になってしまいそうなのが怖い。ついでに価値観も歪んだ上で局所的難聴に悩まされるのは絶対に避けたい。ハーレムもいやだ。この場合は逆ハーレムってやつなのか?
ハッ!?もしかしたら、私が恋心を抱けなくて恋愛とかができなかったりするのかな!?あれ!?むこうで生まれたとして、精神年齢ってどうなるんだろう!?前世の記憶を引き継ぐ設定の上で、22歳プラスむこうで生きた年齢なのかむこうで22歳になってから加算されるのか.....
『あのさぁ、変なことで悩んでるようだけどそれってそんなに悩む事じゃないんじゃない?考えても答えの出ないことってあるんじゃない?』
うわっ、私の心の声漏れすぎ!?
確かに私の頭じゃ答えは出なそうだけど!自分で自分を創れるなんて私の一生に一度しかないかもしれないチャンスなんだよ!一生っていつからいつまでなのかわからないけど一度しかないんだよ!
そりゃあ悩むよね??変な失敗したらそれは死ぬまで尾を引くんだよ、慎重にもなるよ。それに考えるのは楽しいから幾らでも時間はかけられる。
ここに時間があるのかは不明だが
ともあれ、飽きるか止められるまで私はここにいるつもりだ
『僕には他にもやることややりたいことがあるんだけどなぁ、君変な性格してるねぇ』
仕方ない。早めに切り上げよう、それじゃあ自分の性格の根本と容姿だけ完璧オブ完璧に仕上げて、それと目がいいとか耳もいいとか。あ、あと口が臭くないとか体からいい匂いするとか髪は艶々とかもいいな。それと肌はきめ細かくて潤ってるとか!メイクなくても美少女って現実に作れるのかな?小顔で眉毛は細くて整ってて柔らかい印象を与えるように少し弧を描いて.....
『君、途中から脱線してるよね。確実に。』
やばっ、早めに切り上げてあげようと思ってたのにダムが決壊しかけてた!っていうかだいぶ水漏れしてた!
気をしっかり持たないと....ええと、なんだっけ?あぁ、そうだ。私の性格のことだったね。
[他人に優しく自分にはより優しいが、決して甘やかす事はしない]
とかいい感じだなぁ、他には...
[悪魔のように悪知恵が働き、悪戯が大好き]
うわ、これ絶対よくないな。
[情に厚く、義理を重んじる。一夜の恩を一生忘れない]
うーん、THE武士みたいな性格は人生損してそうで嫌だなぁ。最初の設定だけつけといて、それ以外には何もつけないようにして今の自分を残しておくのが1番安心かなぁ...?素材の味的な?
ちょっと良さそうだから採用しとこ。
えっと、次は見た目かぁ。髪の毛の色って正直1番大事だと思うんだよなぁ、目に入りやすいし第一印象が髪の色でだいぶ変わると思うし。黒,茶,白,赤,緑,青....紫とか面白いかな?
いやいや、面白さで決めちゃダメだ。
白い髪のアルビノ美少女...?確かに可愛いだろうけど、絶対日焼けが辛い。メラニンだかなんだか忘れたが確か肌を守る成分が少ないんでしょ?アルビノの人はきっと代われるなら代わりたいって思う人いそうだし、やめたほうがよさそうかなぁ。イラストで描かれてる白髪美少女ってアルビノレベルに白い肌以外にいたっけ...?白髪色黒?やばい、大量に見てきたはずなのに思い出せない。怖いから選択肢から外しておこう。
赤は...どうなんだろ、すれ違う人が全員ガン見する程主張が強そうだからできる限り大衆に埋没していたい私には合わなそう。異世界での主流の髪の色があるのかはわからないから基本は黒髪が主流だと考えた方がいいだろう。候補としよう。
緑は....緑って綺麗なイメージはあるけどなんか地味だし埋没してそうかなぁ、薄い緑なら。薄いなら...候補としておこう。
青...青?どちらかといえば水色か。主人公がめっちゃ死ぬラノベのヒロインに水色の髪のメイドがいたような....あれは大人気だったな。でも水色って案外明るい色だし現実で見たら目立ちそうだなぁ。
んーー、考えてみると髪を黒とか茶以外にすると自分的に見慣れてないし、安心できなそう。朝起きて枕を見たら自分の髪の毛が!ってなっても黒以外だと自分の髪の毛だって気が付けなさそうだなぁ。
うん。私黒髪好きだし安牌をとっておこう。
みた目は...あれ?さっきまで成人くらいの女性のクリエイト画面だったと思うんだけど...設定できなくなってる...?
え!何で!?もしかして私が生まれ変わるって決めたから?もしそうならちょっと残念すぎる!!いい感じの頬骨の高さとか目尻を下げまくった時の印象とか色々調べてみたかったのに。最強に可愛いヒロイン作った上で私用のそこそこ美少女も合わせて作る予定が狂ってしまった。まぁ、設定を街1番の美女にしておけば私の欲望は全て解決されるんじゃないか。ラノベのキャラみたいに可愛くなれるし、別に国レベルの美少女じゃないからある程度は埋没できるだろう。世界中に街がどれだけあると思ってるんだ。いい具合だろう。きっと、うん。
あとはなんだっけ?あ、口が臭くないとか体臭はいい匂いだっけ?すっぴん美人って設定入れておけばもしかしたら楽に可愛くなれるのだろうか。もしかしたらお腹が空かなくなる設定も作れるのかな...?でもお腹が空いたり痛みを感じたり老いたりするのって人間が人間であるためには必要なことだと思うんだよなぁ....消してもいいものなのかなぁ.....
まぁ、迷うんだからつけない方がいいでしょ!
そうなると.....これくらいで全部かな...?
あぁ、私の愛しのクリエイト画面ちゃん...もうお別れしなければいけないみたいだよ...
あぁ、離れがたい。後1時間は頬擦りしておきたいくらいに惜しいよ...
『満足いくまでやれた?準備ができたならもう送るけど』
えぇーと、もう満足ですよ!
(満足してないけど、自分の生きやすさを考えたら仕方ないしなぁ、周りが私が作った人間しかいないってちょっと怖いな)
まぁ、なのでもう異世界に送っていただいて結構ですよ。
『そう?じゃあ送るから。記録のために長生きしてね』
その声が聞こえたと思うと、これまで見えていた景色が見えなくなっていく。この感覚はなんだか前も感じた気がする。今思えばさっきの景色に光なんて無かった気がする。それでも見えていたものが黒に塗りつぶされていく。
あぁ、思い出した、私が死んだ時の感覚だ。
まさか死の感覚を二度も味わうとは
視界が晴れていく。まるで最初から全てを見ていたように。
最初に見えたのは白の布を身に纏った知らないおばあさんだった。