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「……後継に心当たりがある。探しに行くので暫く留守にする」
初代皇帝は宣言した。額に青筋を浮かべている。
「それは、どのようなお方でしょうか?」
廷臣が問う。どうやら彼の本意気を判っていないようだ。
「兄上だ」
西の方を向いて、皇帝は笑う。やけくそのようであり、会心のようでもある。
「!ッ!ッ」
「――?」
彼を知るものは気絶寸前の泡を吹き、それが誰かを判らぬ者はぽかんとする。前者は帝国の前身である王国の民であり、後者はその国を蚕食せんとして蹂躙された者どもである。
「しか――」
「黙れ。儂はもうこの国をやらぬ」
彼が臣民に求めたのは、二つ。怠けるな。只で働くな。ここにもう、それがない。
「全ては至らぬ儂の不徳。退位はその責を負うものである。儂の選定に不服のある者はそれぞれに候補を立てよ」
唖然とする一同を残し、皇帝は去る。後ろ姿が、中指を立てている。