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獣と魔獣の違いは見れば判る。大きいからだ。
さておき、彼女の造形的な側面は美人としての条件を存分に満たしている。だが不幸にもそれが彼ら――そして彼女らの――認識に至る事が少ない。いや、ほぼ無いと言っていい。
それは彼女が人並み外れて大きいからであり、人の枠を超えて強いからであり、そして何よりも、その眼光に殺人的な威力があるからである。
彼女はそれを、少しばかり不幸に思っている。
二つに別れた魔獣の死骸を前に、少し考える。心臓を避けて割いたので、片方にはそれがあり、珍味である。漲る食欲もそれを肯定している。
だがそれ故に高値になれば、これを捌く者の腕も相応になるだろう。多少なりとも残念な結果になろうとも、経験による成長を齎すべきなのでは無いか?
「ないな」
軽く笑って、左半身を担ぐと組んで置いた竈に向かう。あのガキには勿体ない。