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相談女の婚活事情

いつもお読みいただきありがとうございます!

今回は相談女ことメアリ・ハーパーが出てきます。

「顔合わせしたならもういいだろう」


「そんなことないわ。初対面なんてみんなネコちゃんどころかトラの皮やオオカミの皮を被ってるものよ。人間、勝負は二回目・三回目からなんだからね!」


やる気のないアシュフォード様を前に力説するジゼル様。ジゼル様の斜め後ろには緊張した様子のメアリさんがいる。


「子爵は怖くなかったんですか?」


二人の言い合いが終わらないようなのでメアリさんに声をかける。この前、ジゼル様の親戚の子爵との顔合わせが終わったところなのだ。ジゼル様はその件でアシュフォード様に頼み事をしている最中。


「はい、クマさんみたいで安心できる方でした! すぐ用事があるって辺境に帰っちゃったので今度は私が行くんです」


「絵本じゃないんだ。クマは安心できる要素が一つもないだろう」


「あら、顔が好みかどうかは重要よ。夫婦喧嘩して相手に腹が立ってうっかり殺しそうになった時に踏みとどまれるかは、顔が好みかどうかで決まるわ」


「そうか、ブランドンの顔がそこまで好みだったとは知らなかった。ベビーフェイスがタイプだったのか」


「そ、そ、そんなことは言ってないわ!」


ぎゃー、メアリさんに話を振ったのにアシュフォード様とジゼル様も参戦してきたぁ。


「とにかく! アシュフォードの圧迫面接に耐えられるならどこの家でもやっていけるわよ! 何か気になる点をメアリに聞いてみてよ。向こうが嫌って言ったら婚約はナシになっちゃうんだもの。メアリには協力してもらったでしょう?」


圧迫面接。言いえて妙である。


「はぁ……まぁそうだな……。じゃあ、どこの保護者も気にすることから聞こう。学園の成績がかなり悪いようだが、一体学園で何を学んでいるんだ?」


「うわぁ、いきなり怖いわぁ」


ジゼル様が私の心の声と同じことを口にする。


「下から数えた方が早いのは突っ込まれるぞ」


「えっと、借金返済のためにお金持ちの老人に嫁がされそうだったので、お勉強よりもさらに条件の良い婚約者探しを優先させていました!」


「婚約者がいる令息にも相談があると言い寄っていたようだが」


「悪い噂のあるご老人だったので、なりふり構っていられませんでした! それに令息のお友達には婚約者がいない場合もありましたし!」


こればっかりは引っかかる令息も悪いよね。


「第一王子殿下と一緒にいた時期もあるな」


「ええっとですね、第一王子殿下の前で転んだらそれ以降気にかけて頂けるようになりまして! さすがのアタシでも王子殿下にランチに誘われるなどしたらお断りはできませんでした!」


メアリさん、自分に不利なことでもハキハキ元気に答えるなぁ。


「成績は悪く、マナーもなっていないし、モラルもない。一体何ができるんだ?」


「アシュフォード、怖すぎるわ。私でも震えるんだけど」


ジゼル様、私も同感です。怖すぎます。


「そうですね、お裁縫も得意ではありませんし……ポジティブさと体力は誇れます! 寝て起きたら大抵の嫌なことは忘れています。あと、ニンジンの袋なら一人で運べます!」


「よくこんなアホを釣りあげたな」


「ひどっ!」


「まぁ筋は通っているし、辺境ならこのくらい腹芸ができなくてもそれほど社交はないから問題ないんじゃないか。そうだ、ドレスやアクセサリーなんかも王都の人気店のものや流行のものは手にできないが、辺境に嫁いでもいいのか?」


「はいっ! ドレスやアクセサリーってほんとに重くて! あれ着て優雅な足さばきで歩くなんてアタシには夢のまた夢です! お茶会でキャッキャッウフフしながら足踏まれるのも嫌です!」


「足を踏まれるくらい日常茶飯事だぞ」


「うぅぅ、それならアタシ、牛や羊を追いかけているほうがいいですぅ」


「まぁ……その素直さは美徳なんじゃないか? 平民に限りなく近いが」


ふぅとアシュフォード様は目頭に手を当てながら質問を終える。


「このくらい想定しておけば大丈夫だろう」


「はぁ、聞いてるこっちが怖かったわ」


「あとは辺境に馴染めるかどうかを見られるだろうからその辺りが次の顔合わせでは正念場だろう。一応、相手の領地のことも勉強させておけ。知ったかぶりだけはするな。余計安い女に見られるぞ」


「わかりましたであります!」


メアリさんは張り切っている様子だ。敬語が変だが、アシュフォード様の圧迫面接?にここまで対応できるなら期待できるだろう。



「あのアホなポンコツっぷり、ブランドンに似ている」


ジゼル様とメアリさんが帰った後、私を自分の膝の上に座らせてアシュフォード様は言う。

「ん」と手を伸ばしてきたら膝の上に抱っこ状態である。悲しいかな「ん」で大体予測がついてしまう。アシュフォード様、今日は膝枕の気分じゃないんですねぇ。


「犬っぽいところが似てましたね」


「あいつ、よっぽどブランドンみたいなのが好きなんだな」


「アシュフォード様もブランドン様には少し甘いですよ?」


「ん、そうか? でも、まぁそうか。アホな犬に似ているからな」


圧迫面接のおかげなのか、メアリさんは無事ジゼル様の親戚と婚約した。


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