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フロスト王子のお悩み

いつもお読みいただきありがとうございます!

「頼むよ~。絶対俺、いじめられるよ~」


「自意識過剰じゃないの?」


泣きつくフロスト王子を一蹴するジゼル様。


「そんなくだらない用事で来たなら帰りなさいよ」


フロスト王子たっての願いでダフ侯爵邸に集まったのは、いつものメンバーだ。

エレーナ様とアシュフォード様は不在である。


「俺、あんなに綺麗なエレーナと婚約したんだよ? 社交界でいじめられちゃうじゃん、どうしよう! なんか対策とか方法とか!」


「マリッジブルーみたいにめんどくさいわね」


「いじめられたことないけどなぁ」


エレーナ様と婚約できたことで絶対にいじめられると騒ぐフロスト王子。

ジゼル様の対応は氷よりも冷たく、ブランドン様は「いじめなんてないでしょ」というスタンスだ。

ブランドン様の場合、いじめに気づいてないだけだと思うけどなぁ。

ジゼル様が近づく女性や男性は排除してるって言ってたし。


「この中で相当いじめられてたのなら、間違いなくアシュフォードと婚約したこの子でしょ」


ジゼル様が私の方を向く。


「なんかいじめられなくなるいい方法ない?」


いやフロスト王子、そんなこと言われても。


***


アシュフォード様と婚約してからはもちろん嫉妬はすごかった。

ただ、お茶会の時はアシュフォード様が私にぴったり張り付いていたし……誰かが呼んでいるから一人で来てと呼ばれても「用がある方が来い」とそばを離れなかったし。

さすがにお手洗いの中だけはアシュフォード様は付いてこれなかったけど、ハウザー公爵夫人が「ブロンシェちゃぁん、怖いから一緒にお花摘みにいきましょ~」なんて言っていつも連れ出してくれて一緒に行っていた。さすがに何度もお手洗いに一緒に行っていたら守ってくれていると子供でも気づく。


学園に入るまではそんな感じだったので、学園に入ってからが一番いじめがあったかも。

昼休みと放課後はアシュフォード様と一緒だったが、それ以外を狙われた。教室に移動中に拉致されたりとか、教科書破かれたりとか。


教科書はすぐアシュフォード様に見つかって、アシュフォード様のを借りたので授業に支障はないはずだったが……アシュフォード様に借りた教科書も破かれていた。

授業直前に気付いたので仕方なく破れた教科書で授業を受けていると、気づいた教師がドン引きしていた。


「シ、シャイスさん? 教科書はどうされたの?」


「破かれてしまったので婚約者に借りたのですが、それも破かれてしまったので。さすがにこれ以上他の方に借りるのは迷惑かなと」


また破かれたら困るし。


「え、婚約者さんのクラスも今この教科書を使って授業してるわよね?」


「全部頭に入っているから教科書がなくても全く問題ないそうです」


クラスがざわつく。この教科書、地理と歴史がいっしょくただからかなり内容はあるのよね。


「えっと、じゃあ私の予備の教科書を……」


「あ、先生。俺が教科書を一緒に見せますよ~」


全部頭に入っていると言われしどろもどろの教師の言葉を遮ったのは、隣の席のブランドン様だった。


「あ、じゃあミュラーくん、お願いね。シャイスさん、教科書の件は先生たちに報告しておくから、お昼休みに話を聞かせてね」


いや、多分お昼休みまでにはアシュフォード様が動いてると思うんだけど……。まぁいいか。


ブランドン様の教科書は非常に綺麗だった。みんな線引いたり書き込んだりしてるものなんだけど。


「いやぁ、何書いてあるか分かんなくって~。でも綺麗だから見やすいでしょ?」


「ありがとうございます」


ブランドン様の教科書は授業についていけないから綺麗だった。



「あなたみたいな冴えないのが婚約者だなんておかしいのよ! さっさと辞退しなさいよ!」


「いやぁ私も何度も辞退しているんですけど、公爵家には逆らえないのでハウザー公爵家に言って頂けますか? そっちの方が早いと思うんですけど」


移動教室の途中に拉致されて三人の令嬢に囲まれる。上級生だろうなぁ。そんなん私に言われても困るという内容だ。


「ご自身の方がふさわしいなら売り込んだらいいと思います」


本当のことを言っているだけなのだが、令嬢達はさらに怒る。いや、どうしろと言うのよ、これ。


「あ、いたいた~。アッシュ、こっちこっち~」


緊迫した空気に間延びした声が割って入る。走ってきたのはブランドン様だ。続いてアシュフォード様。授業に遅れちゃうなぁ。


「大丈夫か? 授業に行こう」


アシュフォード様は令嬢達には目もくれず、私の手を取る。ご令嬢達はさすがにアシュフォード様が来るとは予想していなかったのか、青い顔をしている。


「えー、アッシュ~。この人達どうするの~?」


「顔は覚えた。家の名前も知っている」


「ハウザー様は騙されているのです! もっと婚約者にふさわしい方がいらっしゃいますわ!」


リーダー格のご令嬢が食って掛かる。他の二人は取り巻きっぽいもんね。


「なぜ俺より頭の悪いお前に心配されないといけない。一体、何様のつもりだ。定期テストでいつも点が足りないからと教師に賄賂を出して点を上乗せしてもらっているというお前に」


「アッシュに釣り合う他の人ってどんな人??」


おおぅ、この空気の中ツッコミを入れられるブランドン様すごいわ。


「自分が釣り合うとでも言うつもりか。馬鹿馬鹿しい。教科書を破ったり、婚約者を拉致したりする女なんてどこの家も願い下げだろう。それにお前の父親はバスティアン侯爵ではなく、お前の母親の愛人だという話もあるぞ。そんなお前が公爵家の婚約に物を言える立場にあるのか?」


あ、バスティアン侯爵令嬢だったのね。たしか次女さんだったかなぁ、長女さんはもう卒業されてるはずだし。


私達はこの後すぐ授業に戻ったのだが。というか令嬢達よりアシュフォード様の方が怖いわぁ。なんでそんな情報持ってるの?っていう情報がボロボロ出てきて怖い。


バスティアン侯爵令嬢の姿をあれ以来学園では見なくなった。修道院に入れられたとか。もしかしたら本当に侯爵夫人の愛人の娘だったのかもしれない。時を同じくして侯爵夫人は離縁されて実家に戻った。


どうやら学園での一件がハウザー公爵夫人の耳に入ったらしく。お茶会で三人の令嬢の身内を見つけると「うちの婚約に文句があるお家が来てるなんて悲しいわ。悲しすぎて私帰るわね~」と言ってほんとに途中で帰っていたらしい。


最初の内はポカンと見送るだけだった主催者も、さすがに何度もあると問題になっている三人の令嬢の身内の方を帰してハウザー公爵夫人に留まってもらうようになった。そんな風にしていたら三人のご令嬢の身内はお茶会に呼ばれなくなる。


学園の中でのことであるし、あまり庇ってもらうのも私の立場として良くないのではないかと思ってハウザー公爵夫人に聞いたことがある。


「う~ん、私もいっぱいダーリンやダーリンのご両親に庇ってもらったしぃ。それにバスティアン侯爵夫人ってダーリンに色目使うから好きじゃなかったのよぉ。そんなところに文句言われたらうちとしても黙っていられないわぁ」


どうやらハウザー公爵夫人はバスティアン侯爵夫人に個人的な恨みがあるようだった。普通に怖い。

そんな相手をハウザー公爵が許すわけもない。

三人のご令嬢の身内はもちろん貴族で、王宮に勤めている者もいる。その中には文官もいるわけで。


「教科書を破るような身内のいる奴が作った書類は見ないが?」


って書類を破いたらしい。普通に怖い。宰相じゃなかったらできないレベル。


***


「懐かしいねぇ、そんなこともあったね~」


「ぜんっぜん、参考にならない!」


私の話を聞いてフロスト王子は頭を抱え、ブランドン様は懐かしがっている。

バスティアン侯爵令嬢の一件以降、呼び出しや教科書破りはなくなった。毒物を塗られたプレゼントなんかは届いていたけれども。


「あなたはヘタレなんだからエレーナやハベル公爵夫人に庇ってもらいなさいよ。やっぱり、情報が命よね~。あなたの場合はオルグランデ王国の化粧品売らないってやればいいのよ~」


ジゼル様だけがカラカラと笑っている。この人、裏でかなり撃退してるんだろうなぁと思える自信に裏打ちされた笑いだった。

フロスト王子の悩みが解決したのかどうかはよく分からない。


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