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いつもお読みいただきありがとうございます!

「メアリさんはなんだかんだで上手くやっていますね」


「元々相談女だったわけだし、うまくやるでしょ。最初は友達いないアピールやらみんなと仲良くなれないアピールやらしたみたいよ」


「それは事実ですね……」


メアリさん、友達いなさそうでしたからね。


「そうよね。でも結果的にあのアホ殿下の評判が落ちてよかったわ。婚約者以外の一人の女性に目を向けているのは火遊びだとかって許されて、ハーレムもどき作ろうとしたら皆許さないなんて意味分かんないわよね~。私なら婚約者以外と一緒にいる時から許さないわよ、皆遅いのよ」


ハウザー公爵邸のソファで寛ぐジゼル様。

今日はジゼル様とブランドン様がハウザー公爵邸に遊びに来ているのだ。


「それにしても臭うわね」


「え? 私、ガーリックは食べていませんが……」


ジゼル様が顔を顰める様子に私は思わず口を押える。


「違うわよ、香水やガーリックの臭いじゃなくて」


「なくて?」


「ヘタレの臭いがするわ」


ビシッとジゼル様が指さす方にはハウザー公爵夫人にネイルをするフロスト王子がいる。


「ヘタレって臭いがするんですか?」


「するわよ、当たり前でしょ。こんなに臭うのに」


数日放置した生肉が目の前にあるかのようにジゼル様は臭いと言う。


「というかあれ、白豚じゃないじゃないのよ」


「えぇ、それはもう私達もびっくりです」


「ヘタレモヤシじゃないの。いや、ヘタレ白アスパラ?」


言いえて妙である。吹き出さなかった私を褒めて欲しい。


「ヘタレが嫌いなら、ジゼル様はネイルはやめておきますか?」


「嫌よ、するわよ。気になるじゃない。アシュフォードはあなたにしかやらないから、やり方を覚えるまではあのヘタレモヤシにやってもらうしかないわ」


ヘタレは嫌いだけどネイルは気になるんだ。

ちなみにブランドン様は既にフロスト王子と仲良くなっている。今なんてフロスト王子の横で「フーちゃん、すごいね~」なんて無邪気な笑顔を浮かべている。


「それにしてもアシュフォードは手先も器用ね」


ジゼル様は私の手を取ってマジマジと爪を見る。私の爪にはアシュフォード様の髪と瞳を思わせるシルバーとブルーのツートンカラーが施されていた。もちろん、ネイルをしたのはアシュフォード様だ。フロスト王子がやっていたのを見様見真似で覚えたようだ。


「でもそれじゃ独占欲の塊よね。あいつらしいけど。私の色とブランドンの色でゴールドとブラウンにしてもらおうかしら」


「お互いの髪の色ですね。いいですねぇ」


ヘタレモヤシなんて酷いことを言っているが、ブランドン様のことを話すジゼル様は嬉しそうだ。彼女はウキウキ楽しそうにヘタレモヤシ……じゃなかったフロスト王子のところへ歩いていく。いや、ブランドン様のところへ行ったのか。



「ねぇ~、ブロンシェちゃん」


ジゼル様とたくさんお喋りしていたので紅茶を飲んでいると、後ろから急に声をかけられた。振り返らなくても分かる、この甘い花のような香りと可愛らしい声はハウザー公爵夫人しかありえない。この方、気配を感じさせずに背後に立つからそれだけはやめて欲しい。心臓に悪い。


「わ、今日も可愛いですね」


ハウザー公爵夫人の爪は綺麗なピンクのグラデーションになっていた。


「ふふふ、でしょでしょ」


口に手を当てて笑う姿はまるで少女だ。将来、義母になるなんて全く思えない。

ちなみに本日、アシュフォード様とハウザー公爵は不在だ。ハウザー公爵が執務中か不在でない限り、ハウザー公爵夫人が私に構うことはない。ハウザー公爵にべったりだからだ。


「ねぇ、ブロンシェちゃん」


急に夫人は距離を詰めてくる。息を吐くとかかってしまいそうな距離だ。思わず息を止める。


「アッシュちゃんはねぇ、見た目はダーリンに似たんだけど。中身は残念ながら私に似ちゃったのよぉ」


「え、は……い……?」


いきなりどうしたんだろうか。ちょっとだけ身構えながら夫人の言葉を待つ。


「だからダーリンみたいに冷酷になりきれないのよぉ。いろいろ考えちゃって。人が気づかないところまで気づいちゃって。私としてはアッシュちゃんのそこが可愛いんだけど~」


アシュフォード様は十分冷酷だと思うのだが……。アシュフォード様との婚約が決まった後、私をいじめてきたご令嬢達にアシュフォード様、かなり容赦なかったんだけどな。


夫人は急に抱き着いてくる。花の香りが強い。この方の言動はいつも唐突だ。

私の頭の中では、アマリリス・ハウザーによって引き起こされた事件簿がザザーッと流れた。過去でも現在でもこの方は本当に不思議な人だ。


「だからねぇ、ブロンシェちゃん。ブロンシェちゃんはアッシュちゃんを見捨てないでね~」


夫人の掌が私の頬を撫でる。いつも自分の話がメインである夫人の意外な言葉に目を瞬かせながら、私は頷いた。


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