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「きゃあ!! これって可愛いわね!」


「次は違う色でも試しますか?」


「う~ん、でもぉドレスがピンクだし。やっぱりピンク系がいいわ! ピンク大好きなの」


「じゃあピンクを塗って乾いてから白い花も描くのってどうですか? ドレスとも合いそうなんで。それに公爵夫人の可憐な雰囲気にも合いますよ」


「えぇ! フーちゃん、そんなことができるのぉ! 凄いわぁ。やってやって。ダーリン、これ買ってもいい?」


キャッキャ、キャッキャ。

どこの女子会?と思うなかれ。公爵邸のお高いソファでキャッキャしているのはハウザー公爵夫人とフロスト王子だ。


すでにフロスト王子のことを「フーちゃん」と呼んでいる公爵夫人。まぁ、私も最初会った時「ブーちゃん」って呼ばれたしね……あれは「息子の婚約者としては認めない」って意思表示かと思ったけど、まさか公爵夫人の愛情表現とは……。


オルグランデ王国で流行り始めている爪への化粧、ネイルをフロスト王子は持ってきてせっせとハウザー公爵夫人に施している。


「素敵だわぁ! ねぇ、ダーリンもやってみない?」


「男性なら爪を綺麗に見せるのに透明な色を塗ってみるのもいいですね。指が綺麗に見えると印象がアップします」


ハウザー公爵夫人は喜ぶどころかはしゃぎすぎているレベルだ。その横にはそんな妻を見て嬉しそうにしているハウザー公爵。最初こそ妻の手に他の男が触れることに不穏な空気を醸し出していたが、今は喜ぶ妻を見て稀に見るレベルでご満悦だ。


「では、すべて買おう」


「ダーリン、ありがとう!!」


「毎度~。じゃあ商会に連絡しときますね」


フロスト王子、あんた一体何しに来たんだ。商人か。毎度って何だ。


「ダーリン、むしろ商会ごとうちの国に来てもらえない?」


「それはいい考えだ」


盛り上がっている。というか打ち解けるの早っ。話がすぐ大きくなってるし。


あれから数週間後にフロスト王子はやって来た。やってきて早々に公爵夫人の心を掴んでいる。アシュフォード様のお母様である公爵夫人はチョロそうに見えて、結構厄介な人なのだ。しかし、今日はチョロい気がする。


アシュフォード様と私は、やたら盛り上がる公爵夫人とフロスト王子の様子を「ヨカッタデスネ~」とばかりに微笑みながら黙って見ることしかできなかった。

アシュフォード様も珍しくちょっと笑っていたが、その笑みはなんだか寂しそうに見えた。



メアリさんからは報告の手紙が届く。

「殿下に誘ってもらって学園の食堂で一番高いメニュー奢ってもらいましたぁ! 美味しかった!! お肉がすぐ切れるんですけど!!」という喜びと食欲に満ち溢れた報告とか。

「カミラさん、思ってた人と違いました! とってもいい人です! 仲良くしてくれます! 『王子を好きな者同士、仲良くしましょ』だって!」という首をかしげそうになる報告や。

「今日は伯爵令嬢さんに注意されました! 殿下と仲良くしすぎだって。でも、ちゃんと『殿下に誘われたら男爵令嬢の私では断れません』って涙目で言っときました!」という元気の良い報告。

意外とメアリさんはノリノリで元気である。


カミラさんともメアリさんとも親密な様子の殿下の評判は確実に落ちていっていた。カミラさんだけだった時よりも殿下への生徒たちの視線が厳しい。たまに「羨ましい」みたいな視線も一部混じっているが。


アシュフォード様が殿下に苦言を呈すことも効果があるのだろう。


「殿下、さすがに色ボケがすぎるのではないでしょうか」


王子に対して色ボケって言えるの凄いよね、アシュフォード様。


「学園で友人といる自由くらいあるだろう」


「複数の女子生徒といつも一緒にいるのは色ボケではないのですか」


「いつもではない。授業はクラスが別だからちゃんと別々に受けている」


「授業を受けるのは当たり前です。婚約者がいらっしゃるのにそれでは」


なぜか大体私もこの言い合いの現場に巻き込まれるのは勘弁して欲しいんだけど。

エドワード殿下の視線が私の方に向いた。


「お前は家格の釣り合わない令嬢でも無理に婚約者にしたというのに。俺には小言ばかりだな」


エドワード殿下、いやエドエド殿下はフンと少しだけ小馬鹿にしたような笑いまでつけてきた。釣り合わないのは重々承知だから、そんな風に言われても私は特に反論しないんですけどね。


「恋愛結婚できるなどお前が羨ましい。恵まれた立場で自由のない俺に指図をするな」


目撃している他の生徒たちの方が当事者たちよりも緊張している昼休みの中庭。エドエド殿下は腕にカミラさんを引っ付けて私達に背中を向けた。メアリさんはいない。食堂で待ち合わせだろうか。


「では、こちらの手紙だけ渡しておきます。これ以上は殿下の大嫌いな指図はしませんので」


以前、もうだいぶ前だが。その時のようにアシュフォード様は封筒を差し出す。あの時みたいに王妃様からのお手紙でしょうか。

殿下は振り返って汚いものでも触るように封筒を受け取り、すぐその場で封を切った。


「ブロンシェ、行こう。また時間をムダにした」


最後まで毒舌を吐くアシュフォード様に手を引かれてその場を後にする。

何とはなしに振り返るとエドエド殿下は封筒を手にこちらを見て愉快そうに笑っていた。


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