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33(ジゼル視点)

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ジゼル視点です。

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【ジゼル視点】


「第一王子の支持をやめることにした」


侯爵である父は家族揃った晩餐の時に重々しく語った。ちらりと母を見ると微笑みを向けられる。


「なぜ今やめるのですか?」


私は再三、第一王子(あのアホ殿下のことだ)の学園での所業を父に報告していた。しかし、父は無用な争いが起きかねないと長子相続の考えをずっと崩さなかった。このまま第一王子支持を続けるのかと思っていたのだが。


「あーそれは……ブランドンくんが……」


「え? ブランドンが?」


問い返すと父は何やらモニョモニョしていたが、


「オホン。とにかく、ダフ侯爵家は第一王子を今後支持しない」


同じことを繰り返して気まずそうに席を立ってしまった。父は強面の見た目同様わりと怖いのだが妻と娘には弱い。妻と娘に対して都合が悪くなると沈黙してどこかへ行ってしまう。今日もそうなのだろう。仕方なく母に話を振る。


「お母様、一体どういうことですか?」


「うふふ。旦那様とブランドンくんは毎朝一緒に稽古をしているでしょう? その時にブランドンくんからも第一王子殿下の学園でのご様子を聞いたみたい。それで支持をやめることにしたのよ。ハウザー公爵令息の根回しのせいもあるけれど、ね」


母は嬉しそうにワインをかたむけている。

あの腹黒が最近機嫌良さそうなのはこのせいだったのか。アホ殿下の味方を本人が知らないうちに減らしていくのは、あの腹黒にとって楽しくて仕方がないだろう。あのアホ殿下が自分の派閥をどれだけ把握しているかは謎だ。エレーナとの婚約がなくなってもハベル公爵家の後ろ盾はそのまま、なんて思っていそうなお花畑で怖い。


「私が何度も言っておりましたのに……」


「そうね。でも娘可愛さにすぐ第一王子支持を辞めるわけにもいかないもの。そこは分かるでしょう?」


「はい」


納得はできないものの頷く。私がいくら言っても父は意見を変えなかったのに、ブランドンの話を聞いて一週間ほどで意見を変えたのが気に入らないのだ。あと、あの腹黒の策略に乗っているのも。


「ふふっ。不満そうね。分かるわ。旦那様も学園時代に婚約者以外に気になる方がいたのよね。だから大っぴらに第一王子殿下の所業に文句をつけられないのよ。大抵の男性がそうなのではないかしら。若い頃の自分のプライドを守って正当化しているの」


「まぁ、お父様が……」


他の女性に懸想している父を想像して眉をひそめてしまう。


「第一王子殿下のようなことはしていないけれど、心の中で想っていただけなんていう清いものでもないのも分かるかしらね」


父は他の女性と手紙のやり取りや秘密の逢瀬でも楽しんだのだろうか。ますます自分の眉間にシワが寄っていくのが分かる。


「これに関しては女性と男性では受け取り方が違うものね。ジゼルが誇張して報告している部分もあるのかもと旦那様は考えていたのでしょう。学園内でのちょっとした色恋沙汰にそんなに目くじら立てる必要はない、とでもね」


「第一王子殿下の所業は目に余りますわ。現に腹黒……じゃなかったハウザー公爵令息だって第一王子を引きずり下ろす根回しを始めているのでしょう?」


「ハウザー公爵令息には他の思惑もあるのでしょう。でも、今回の旦那様の決定はジゼルから見たら『今更』と思ってしまうわね」


「はい」


「ブランドンくんのお話は私情が一切入っていなかったわ。淡々と第一王子とそのお相手の報告を旦那様にしていたの。ジゼルは少し私情を挟み過ぎなのよ。ジゼルの言っていた通りだったから、現状が予想より酷くて旦那様も驚いたと思うわ。この件でブランドンくんとケンカはしないようにね。あの子、可愛いんだもの。ケンカしてしょんぼりしていても可愛いと思うけど、萎れた姿はなるべく見たくないわ」


ブランドンは父だけでなく母も誑し込んでいた。


ケンカして萎れたブランドンを想像する。頭の中のブランドンは、尻尾を足の間に挟んでクゥーンと鳴いている犬にしか見えなかった。

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