30
いつもお読みいただきありがとうございます!
いいねやブックマーク、評価をいただき嬉しいです。
「婚約者に暴力をふるわれている、他の生徒にいじめられているなどと異性に相談事を持ちかけて二人きりになり親密になろうとする手口だ」
「あ……最近よく悩みを相談されていて……今日はいじめられていると相談されました……」
「さっきのようなマナーでは茶会に出ても恥をかくだけだから、茶会に招かれないのは当然だろう。何の旨味もない家を茶会に招いても意味がない。教科書を2分割するのも何人か見たことがある。重い教科書を持って帰るのが面倒で半分にして必要な方だけ持って帰るようだな」
「そう……だったんですね」
とりあえず、破かれたという教科書くらいは確認しようね。
「アレに引っかかるのもどうかと思うし、肩を抱くのもどうかと思うがな。まぁせいぜい婚約者への弁明を頑張ることだ。私はこれまで浮気を許した女性と会ったことはない。許したフリの女性はたくさんいるがな」
この構図と表情だとアシュフォード様、完全に悪役なのよね。「浮気を許した女性と会ったことはない」という決めゼリフと共に口の端が面白そうに上がっている。言っていることは正論なんだけど。リトルくんは哀れにも震えている。
「でも……王子殿下だって……」
えー、ここでエドエド殿下が出てきますか。
「お前は兄が横領していたら自分も兄がやっているからという理由で横領するのか? お前の学年の侯爵令息が浮気していたら自分も浮気していいと思うのか?」
あー、なるほどねー。エドエド殿下のせいで風紀が乱れてる感じですね、これは。
「そんなことはありません! 兄は横領なんてしません!」
「別にお前の兄がどうしようとどうでもいいが。上や他の人間がやっていて自分もやってもいいと考えるような頭しかないなら学園に来なくていい。家で父親の真似だけしていろ。学園に払う金がもったいない」
魔王様が降臨していて怖いですねぇ。これはリトルくん、トラウマ植え付けられちゃうのではないでしょうか。ブランドン様はスクワットの次はストレッチを始めました。ジゼル様も真似をしてストレッチを始めましたが、やり方が違う気が……。
「子爵家の三男のお前は確か幼馴染の男爵令嬢と婚約していて婿入り予定だったな。お前を落としてもあの女には何の意味もない。ということは恐らくお前を踏み台にして誰かと親密になりたかったのか、愛人になりたかったのか。まぁここに連れてきたことだけは正しかったな。あのままあの女と親密になっていたら、婚約者の男爵令嬢にも疑われて、お前の友人の侯爵令息も狙われて迷惑がかかっただろう。それにお前の素行が悪いとせっかく文官の登用試験に合格したお前のところの長男にも問題が出そうだ」
アシュフォード様、男爵家や子爵家の婚約関係や友人関係、就職先まで把握してるのか……凄い。
それにこの子、侯爵令息とお友達なのかぁ。じゃあさっきのハーパーさんが侯爵令息狙いならヤバかった。侯爵令息が婚約者とダメになったらリトルくんの責任も問われるだろうし。そうなると「どんな教育してるんだ!」と子爵家もタダでは済まない。
教育と言っても子爵家の三男で男爵家に婿入りなら、ハニートラップや毒物にもあんまり縁がないだろうし。
「じゃ、そういうことで~。おうちに帰りなさ~い」
「ふん。あとはその鳥頭で考えろ」
リトルくんが事態をやっと把握して顔を青くした頃合いで、ブランドン様がシッシッと追い払ってドアを閉めた。ついでに私が持ちっぱなしだった歴史の教科書もリトルくんに押し付けてくれている。
「あのアホのせいで学園の風紀が乱れてきたな」
「あら、ちゃんと節度がある方はたくさんいるわよ。アホはアホにしか伝播しないわ」
アシュフォード様はいつもだけどジゼル様も容赦ないわ~。
「ねぇ、オウリョウって何?」
ブランドン様はそこからですか。