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コメディ回に戻ります。
入ってきたのはブランドン様だけではなかった。
照れているのかお顔がちょっとおかしいジゼル様と仏頂面のアシュフォード様も一緒だ。
「あら、その人……まるで白豚ね」
ジゼル様はエレーナ様の前の資料をちらりと見て、あっさり言い放った。
いやいや、もうちょっとオブラートに包みましょうよ。確かに、姿絵の中の王子殿下はぽっちゃり、いやぼっちゃりといってもいいのだが。
「これはけっこうトレーニングしないと痩せないよ」
ブランドン様も続けて言う。ポイントはトレーニング量なのか。
「白豚というか、育ちの良い牛だな」
「なんだか美味しそうですもんね……穏やかで優しそうな方ですし」
白豚って先にジゼル様に言われたから二番煎じの毒舌になるのが嫌で言わなかったのでしょうが、案外アシュフォード様の例えが一番当たっている気がする。
「エレーナ様、この方がどうかしたのですか?」
「……小さい頃にお父様とこの国を訪れた時に会って。そこから文通していて良いなと思っていた相手よ……」
エレーナ様の声はあり得ないほど小さい。でも何とか聞き取れた。ほぅほぅ、有力な婿候補なのですね。
アシュフォード様がイスに座って目頭やこめかみを押さえているので、疲れていると察した私は肩もみに回る。ジゼル様はそんな私を見てなぜか顔を赤くしている。これはまたブランドン様に触る妄想でもしてますね。筋肉見たいんですよね、さすが乙女。
「婿候補としてはいいんじゃないか? あまりこの王子についての情報はないが特殊な趣味はないようだ」
「それは重要ですね!」
「でも、こんなに太っていて大丈夫なの? 持病があるかもよ。早死にするかも」
「そうだよ。太ってたら視界も悪くなるんだよ! この前、すごい太った男爵を見たんだけどさ。足元にいるネコちゃんに気付かずに踏みそうになってたんだよ! 自分のお腹で足元見えないなんて、ネコちゃん踏まれたら可哀そう!」
ブランドン様、なぜ突然のネコちゃん。ネコ踏んじゃったってやつ?
しかも、ジゼル様。なぜあなたは「めっちゃ良い事言うわね!」みたいな顔してブランドン様を見てるんですか。婚約者補正ですか。
「で、どうなんだ? ネコちゃんを踏みそうな奴を婿として愛せるのか? あの阿呆な殿下よりマシなのか?」
アシュフォード様は意地悪そうに質問する。アシュフォード様がネコちゃんって言うと、違う生き物を想像しちゃいそう。黒いトラとか。牙が生えてる何か。
あと、私がたまにいい所を肩もみでもんだら「んぅ」って悩まし気な声をあげるのはやめて欲しい……。無駄に色気があるし、ジゼル様がこっちをチラチラ見ながら真っ赤になっているから。
「うるさいわね! エドエドみたいな男が婚約者で、話も合うし良いなと思ってコツコツ文通していた王子が白豚で! 私はど~せ男運がないわよ!」
エレーナ様、怒る元気は出てきたみたい。
「男を見る目がないだけじゃないのか」
「この方、後ろ盾の弱い側妃のお子様なので嫌がらせで姿絵がこんな風に描かれている可能性はありませんか?」
この王子の国、王妃様の権力が強いのよね。側妃様は子爵家出身って書いてあるし肩身が狭いだろうなぁ。
「普通姿絵は3割増しくらいで描かれるんだが。嫌がらせで逆に醜く描くのはあり得ないことはない。ただし、もしかするとこれが本当の姿かもしれない」
「外見がすべてじゃないって言うけど大丈夫?」
「ネコちゃんは飼ったらだめだよ! あ、ダイエットなら俺がメニュー考えてあげる! ネコちゃんは痩せてからだよ」
ブランドン様、いい加減ネコちゃんから離れて。
「いいじゃないか。太っていてもダイエットしたらいい。問題ないな……んぅ、今日はそこが効くな。じゃあ、早速プロポーズでもしてこい。善は急げだ。こっちのボンクラは後で処理しよう」
肩もみをしているとジゼル様が挙動不審なので、途中から頭のマッサージに切り替えていた。あとから「ジゼル様もマッサージしてあげたらどうですか?」ってからかってみよう。効いているようでアシュフォード様は会話の途中に悩まし気な声を上げている。お疲れですね。
「目の前でイチャつきながら言わないでくれる!?」
「エレーナ様、婚約者不在だった時のジゼル様とキャラ被ってますよ」
「そうだ。そのヒステリーは男の前では隠しておけ」
「飼うなら白いネコちゃんがいいわ」
「白いネコちゃんか~。高貴な感じがするからジゼルの雰囲気にも似合うね。名前はどうする?」
「みんなイチャついててむかつく!」
エレーナ様が元気になって何よりです。