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「不貞腐れてないで。アレの対策は考えてあるのか? 文句を言って喚いているだけならあの尻軽女と一緒だろう。あの女の方がまだ自分の欲しいものを手にしようとする貪欲さはあるな。アレの再教育の成果はなさそうだし、これからどうするんだ?」
アシュフォード様は窓から離れて机に座りながらエレーナ様を煽る。机の上の書類には相変わらずエドエド殿下の仕事が紛れていたようだ。それらを汚いものでも触るようにつまんで隅に避けている。
「くっ。私だっていろいろ考えてるわよ! 無味無臭の毒を探させるとか」
まさかの突然の暗殺案件。
「それは証拠が出なくていいな。アレが国王になったらクーデターでも起こそうかと考えていたところだ。それで、殺そうと何だろうと次の婚約者は見つかりそうか? ブランドンも売れてしまったしな。このままでは売れ残るぞ。ふ、閉店セールの売れ残りだな」
お次はクーデター案件。普通にそれ喋ったらヤバいのでは。アシュフォード様ならできそうだし。
「一応他国の王族や貴族で考えているわよ。外交の場で面識のある方々とは文通もしているもの」
おお、エレーナ様さすが。
「うちの国の利益になりそうなら、婿はこの辺りが候補だな」
アシュフォード様は、今度は引き出しからドサドサ資料を取り出す。
「アッシュ、これ何?」
ブランドン様は興味が湧いたのか資料に近寄ってくる。ここにもジゼル様の調教の成果が現れているのだ。以前までのブランドン様なら書類を見ようものなら眠そうにしていたのに。思わぬところで見えた成果にうっかり涙ぐみそうになる。
「他国の貴族の姿絵と簡易な調査資料だ」
「へぇー、でもこいつ、なんか胡散臭いよ」
「よく分かったな、ブランドン。こいつは極度の馬好きでな。人間に興味はないが馬には興味があるというやつだ。金儲けの才覚があり、牧場を経営していて特に軍馬で有名だ」
「へぇー、スゴイね。じゃあいい馬いっぱい持ってるってことかぁ。こっちもなんか臭いね」
「こっちは変態趣味の公爵令息だ。裸エプロンを好んでいるらしく、自分専用の使用人に強要しているらしい。ただ、意外にも女性問題はない。単純に見て楽しんでいるだけだ。その趣味以外は頭の回転も速く仕事もできる」
「そっかぁ。なんかストレスでもあるのかな? あ、この子は大丈夫そう」
結構衝撃的な内容なのだが、しれっと「ストレス」でかわすブランドン様ってある意味すごいのかも。
「なかなか鼻が利くな。そいつは候補の中でもイチオシの近隣の国の第三王子だ。まだ8歳だけどな。ぬいぐるみが手放せない。ついでにちょっとマザコンの気がある」
「あはは、大丈夫。人間はみんなマザコンだよ~」
「ちょっと! どこが大丈夫なのよ! マトモな男性がいないじゃないのよ!」
「大丈夫だ。アレと比べれば……まぁ多少のことには目を瞑れ。女性問題がないのを集めてみた」
「他の問題が山積みじゃないの!」
「仕方ないだろう。どこに完璧な男がいるっていうんだ。そんなに完璧な男がいいならこの8歳児の王子でもこれから育てろ。あの阿呆な王子を失脚させるならどうにでもなる。私とブロンシェで他国に行ってもいいんだ。ただ、お前の次の婚約についてブロンシェが気にしているから資料まで用意しただけだ。この国の優良物件には婚約者がいて、残っている者は公爵令嬢と縁づくには少し問題がある。それに王子と婚約解消や破棄などしたら国内は混乱に陥るだろ。公爵家と縁づこうとする輩どもによって婚約解消や離婚が起きてもいいのか? ブロンシェが気にしていないなら、お前の次の婚約者など知るか。黙ってアレと結婚しろ。あとは知らん。嫌ならちゃんと行動しろ」
うん、アシュフォード様の正論も分かるんだけどね。なかなかね、難しいんですよ。それに女性って一度は必ず絵本の白馬の王子様に憧れちゃうもんだと思うのです。誰か助けに来てくれないかなって思っちゃうんですよ。はぁ、この白馬の王子様問題よ。