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いつもお読みいただきありがとうございます!
1、2月が早すぎる……いつの間にか以前の更新から1ヵ月経っているし……。
いいねや誤字脱字報告も本当にありがとうございます。
「アレの頭には綿でも詰まっているのか?」
「ええっと、綿だったら取り出したら有効活用できますね!」
「有効活用できるものなど詰まっているわけがない。やはり、蛆でも湧いているのか」
「ええっと……蛆もさすがに殿下の頭には湧かないのではないですかね……」
「前から何となく思っていたけど、あなた結構えげつない発言してるわよ。蛆も湧かないほどヤバイ場所ってことでしょ?」
「蛆だって場所を選びますよ、きっと」
「うん、やっぱりあなたってえげつないわ。婚約者に似たのかしら」
「ジゼル嬢。それは最上級の誉め言葉と受け取っておこう」
私とアシュフォード様、ジゼル様の眼下には二人で手を握り合って語らうエドエド殿下とカミラさんがいる。
エドエド殿下が学園に復帰した初日の放課後までは特に問題はなかった。周囲は何となく「また問題起こされるかも」とピリピリしていたが、お昼休みを過ぎたあたりからそのピリピリ感も緩んでいた。
「それにしても浮気現場がよく見えるな。不快だ」
「校舎裏がこの部屋からは丸見えですね。でも校舎裏って人気の告白スポットなので、殿下が居座るとみなさん困りますね」
「授業中は大人しくしてると思ったのに大間違いだったわね。人目を忍ぶようになっただけ質が悪いわ」
私達三人が窓辺にいる一方で、エレーナ様はゆったり優雅に座って窓の外に一瞥もくれることもなく、お菓子を大量消費している。どうしてあれだけ食べて太らないのだろうか。なんという効率の良いワガママボディだろうか。
そう、エドエド殿下はすべての授業が終わるまでは大人しくしていたのだ。放課後になった途端にイチャコラである。イチャコラといっても健全な部類ではあるが、それは婚約者がいない場合に限る。
「おっまたせー!」
エドエド殿下の変わっていない、むしろ悪化しているような状態に皆でウンザリしているとブランドン様が部屋に元気よく入ってきた。
「見て見て。小テスト、初の90点! 凄くない!?」
「あら、良かったわね。二問のスペルミスはちょっともったいないけど、すごいわ。頑張ったのね」
ブランドン様が無邪気に見せてきた小テストに、エレーナ様はほんわか笑って褒めてあげている。さっきの鬱々としたウンザリとした気持ちが離散した。
「ほら、見て見て!」
「うわぁ、ブランドン様! すごいですね!」
「ブランドンもとうとうバカの地位を返上するか。いや、もうしているか」
アシュフォード様は窓の外にチラと視線を遣り、ブランドン様を珍しく褒めた。
「ほら、ジゼルも見て見て!」
ブランドン様の後ろに勢いよく振られるイヌの尻尾が見えるのは私だけではないはず。しかもさりげなく、ジゼルと呼んでいる、婚約したばっかりなのにやるなぁ。エレーナ様も義務の貼り付けた笑顔ではなく、穏やかな笑みを浮かべてブランドン様を見ているし。
「そ、そ、そ……それは良かったですわ! わ、わ、私の教え方が上手いから当然ですわよ!」
ブランドン様がニコニコしながらジゼル様に小テストを突き出して近づくと、ジゼル様は突然挙動不審になった。
「あ! と、と……図書室に忘れ物をしましたわ! 失礼しますわ!」
顔を真っ赤にして走り去ってしまうジゼル様。
「えへへ」
ブランドン様はジゼル様のそんな態度を気にしていないのか、褒められて照れている。
「ふ。婚約者になったら意識しすぎてブランドンとうまく喋れないんだろう。あいつもまだまだ青いな」
「なるほど! ジゼル様って乙女ですね。顔真っ赤でしたもんね」
「なんだか春が来てるわね。ちっ、羨ましい」
ジゼル様の言動で一部不穏な空気はあるものの、部屋はピンク色の空気に染まっていた。